- 田中
-
会社を辞めようと思ったのが、11月の末なんですね。
辞めたのが12月31日なんで、1ヶ月しかなくて。
- 糸井
- 素晴らしい。
- ──
- 11月末に何かあったんですか?
- 田中
- 理由になってないような理由なんですけど、やっぱり‥‥。
- 糸井
- ブルーハーツ?
- 田中
-
ブルーハーツですよ。
50手前のオッサンになっても、中身は20代のつもりだから、
ふとブルーハーツを聞いた時のことを思い出して、
「あ、なんかもう、このように生きなくちゃいけないな」って。
かと言って、
「俺の熱いメッセージを聞け」とかはないんですよ。
相変わらず、なんか見て、聞いて、
「これはね」ってしゃべるだけの人なんですけど、
でも、「ここは出なくちゃいけないな」ってなったんです。
- 田中
-
それと、人生をすごく速く感じるようになったなと思って。
みんなそうだと思うんですけど、
20代と40代を比べたら、
日が暮れるのも倍以上早く感じますよ。
80歳くらいで亡くなったうちのばあさんが、
死ぬ前に言った一言、忘れられないんですよ。
「あぁ、この間18やと思ったのに、もう80や」って(笑)。
- 一同
- (笑)
- 糸井
-
素晴らしい。
その感覚、ぼくは泰延さんよりもう少し深くわかります。
中崎タツヤさんの『じみへん』という漫画に、
「ご近所の人気者」っていうフレーズが出てくるんです。
「よっ、○○さん、元気?」と言って回る人がいて、
最後に「あんた、ホントにご近所の人気者どまりだね」、
と言われるだけの漫画。
- 田中
-
中崎タツヤさんは素晴らしいですね。
仙人くらいの、スタンスの崩れなさ。
- 糸井
-
さっきのおばあさんの話も「ご近所の人気者」なんですよ。
一番近いところで、ぼくを人体として把握している人たちが、
「ええな」「今日も機嫌ようやっとるな」って言い合う。
ぼくはここに落ち着きたくなってしまうんです。
- 田中
-
ああ、本当にそこですね。
ネットを介したり、印刷物を介したりするんですけど、
フィジカルなことがすごく大事だと思っていて。
- 糸井
- 大事ですね。
- 田中
-
1週間前、糸井さんが大阪にいらした時に
お会いしたじゃないですか。
たった5分でも、あれがあるのとないのとでは、
今日のこの時間も全然違うんですよね。
ちょっと顔見に行くとか、ちょっと会いに行くとか。
- 糸井
- あの時も手土産をどうもありがとう(笑)。
- 田中
- はい(笑)。
- 糸井
-
アマチュアであることと、「ご近所感」っていうのも
結構、隣り合わせなんですよ。
- 田中
-
うんうんうん。
やっぱり肉体の重要性はすごくあると思います。
ちょっと体を動かそうと思ってきました。
- 糸井
-
もう1つ、
中崎さんの作品で永遠に忘れまいとしたものがあって。
庶民の家に生まれた主人公の男が、
お母さんがやっていることがすごく馬鹿に見えるんです。
「母さんは、何かものを考えたことあるの?」
ってぶつけるんですよ。
自分の血筋に対する怒りですよね。
- 田中
- はい、はい。
- 糸井
-
そうすると、お母さんが、
「あるよ。寝る前にちょっと」
って言うんですよ。
- 田中
- (笑)
- 糸井
-
涙が出るほどうれしかったです。
「寝る前にちょっと」を、漫画にした人がいて。
- 田中
-
それは素晴らしい。
ものすごい凄味ですね、それは。
- 糸井
-
でしょう?
一生忘れられないと思った、それ。
- 田中
- あぁ。
- 糸井
-
ぼくは、「寝る前にちょっと」を探す人なんです。
で、「寝る前にちょっと」の人たちと一緒に遊びたい人(笑)。
- 田中
-
深夜のその時間に、若干活発になってこられますね、
Twitterでウザ絡みを(笑)。
- 糸井
-
「これからどうなる?」なんてこと、
ここじゃ、まったく聞かないですけど。
- 田中
- ええ。
- 糸井
-
聞かないんですけど、
釣りの「当たり」みたいなおもしろさのところへは
たどり着いてみたいですねぇ。
- 田中
-
糸井重里さんにお会いして
身体性の話をするとは思っていなかったので、
今日、それが本当にいいお話でした。
ぼくのこれからが変わってくると思います。
- 糸井
- ここらで終わりにしましょうか。
- 田中
-
‥‥ずっと思っていたんですけど、
そのバッジは何なんですか(笑)?
- ──
-
えっ、これ、自分で?
ヒロノブバッジ、誰か準備したの?
- 糸井
- 服着たら付いてた。
- 田中
-
途中で気づいたんです。
シャツが白で、ジャケット黒だから、
そういう模様かなと思っていたら‥‥(笑)。
- ──
- そんな模様はありません(笑)。
- 糸井
- そう見せかけたんです。
- ──
- 1時間の予定が、2時間になりました。
- 田中
- いつもいつも(笑)。
- 糸井
-
収まらないよ、やっぱり。
お疲れさまでした。
どうもありがとうございます。
- 田中
- ありがとうございました。
(おわります。最後までお読みいただき、ありがとうございました!)