もくじ
第1回手土産研究家の田中さん。 2017-03-28-Tue
第2回27歳の「ヒロ君」。 2017-03-28-Tue
第3回読む人として、書いている。 2017-03-28-Tue
第4回ずっとアマチュアでありたい。 2017-03-28-Tue
第5回結論は、「ご近所の人気者」。 2017-03-28-Tue

フリーランスのライターをしています。
旅先で、おいしいお酒とごはんを楽しんでいる時が心底幸せです。
Twitter:@yabu_tw

書き手の前に、</br>読み手なんです。

書き手の前に、
読み手なんです。

第5回 結論は、「ご近所の人気者」。

田中
会社を辞めようと思ったのが、11月の末なんですね。
辞めたのが12月31日なんで、1ヶ月しかなくて。
糸井
素晴らしい。
──
11月末に何かあったんですか?
田中
理由になってないような理由なんですけど、やっぱり‥‥。
糸井
ブルーハーツ?
田中
ブルーハーツですよ。
50手前のオッサンになっても、中身は20代のつもりだから、
ふとブルーハーツを聞いた時のことを思い出して、
「あ、なんかもう、このように生きなくちゃいけないな」って。
 
かと言って、
「俺の熱いメッセージを聞け」とかはないんですよ。
相変わらず、なんか見て、聞いて、
「これはね」ってしゃべるだけの人なんですけど、
でも、「ここは出なくちゃいけないな」ってなったんです。


 

田中
それと、人生をすごく速く感じるようになったなと思って。
みんなそうだと思うんですけど、
20代と40代を比べたら、
日が暮れるのも倍以上早く感じますよ。
 
80歳くらいで亡くなったうちのばあさんが、
死ぬ前に言った一言、忘れられないんですよ。
「あぁ、この間18やと思ったのに、もう80や」って(笑)。
一同
(笑)
糸井
素晴らしい。
その感覚、ぼくは泰延さんよりもう少し深くわかります。
 
中崎タツヤさんの『じみへん』という漫画に、
「ご近所の人気者」っていうフレーズが出てくるんです。
「よっ、○○さん、元気?」と言って回る人がいて、
最後に「あんた、ホントにご近所の人気者どまりだね」、
と言われるだけの漫画。
田中
中崎タツヤさんは素晴らしいですね。
仙人くらいの、スタンスの崩れなさ。
糸井
さっきのおばあさんの話も「ご近所の人気者」なんですよ。
一番近いところで、ぼくを人体として把握している人たちが、
「ええな」「今日も機嫌ようやっとるな」って言い合う。
ぼくはここに落ち着きたくなってしまうんです。
田中
ああ、本当にそこですね。
ネットを介したり、印刷物を介したりするんですけど、
フィジカルなことがすごく大事だと思っていて。
糸井
大事ですね。
田中
1週間前、糸井さんが大阪にいらした時に
お会いしたじゃないですか。
たった5分でも、あれがあるのとないのとでは、
今日のこの時間も全然違うんですよね。
ちょっと顔見に行くとか、ちょっと会いに行くとか。
糸井
あの時も手土産をどうもありがとう(笑)。
田中
はい(笑)。
糸井
アマチュアであることと、「ご近所感」っていうのも
結構、隣り合わせなんですよ。
田中
うんうんうん。
やっぱり肉体の重要性はすごくあると思います。
ちょっと体を動かそうと思ってきました。
糸井
もう1つ、
中崎さんの作品で永遠に忘れまいとしたものがあって。
庶民の家に生まれた主人公の男が、
お母さんがやっていることがすごく馬鹿に見えるんです。
「母さんは、何かものを考えたことあるの?」
ってぶつけるんですよ。
自分の血筋に対する怒りですよね。
田中
はい、はい。
糸井
そうすると、お母さんが、
「あるよ。寝る前にちょっと」
って言うんですよ。
田中
(笑)
糸井
涙が出るほどうれしかったです。
「寝る前にちょっと」を、漫画にした人がいて。
田中
それは素晴らしい。
ものすごい凄味ですね、それは。
糸井
でしょう?
一生忘れられないと思った、それ。
田中
あぁ。
糸井
ぼくは、「寝る前にちょっと」を探す人なんです。
で、「寝る前にちょっと」の人たちと一緒に遊びたい人(笑)。
田中
深夜のその時間に、若干活発になってこられますね、
Twitterでウザ絡みを(笑)。

糸井
「これからどうなる?」なんてこと、
ここじゃ、まったく聞かないですけど。
田中
ええ。
糸井
聞かないんですけど、
釣りの「当たり」みたいなおもしろさのところへは
たどり着いてみたいですねぇ。
田中
糸井重里さんにお会いして
身体性の話をするとは思っていなかったので、
今日、それが本当にいいお話でした。
ぼくのこれからが変わってくると思います。
糸井
ここらで終わりにしましょうか。
田中
‥‥ずっと思っていたんですけど、
そのバッジは何なんですか(笑)?

──
えっ、これ、自分で?
ヒロノブバッジ、誰か準備したの?
糸井
服着たら付いてた。
田中
途中で気づいたんです。
シャツが白で、ジャケット黒だから、
そういう模様かなと思っていたら‥‥(笑)。
──
そんな模様はありません(笑)。
糸井
そう見せかけたんです。
──
1時間の予定が、2時間になりました。
田中
いつもいつも(笑)。
糸井
収まらないよ、やっぱり。
お疲れさまでした。
どうもありがとうございます。
田中
ありがとうございました。

(おわります。最後までお読みいただき、ありがとうございました!)