もくじ
第1回糸井さんと田中さんの笑撃の出会い 2017-03-28-Tue
第2回27歳だと思ったら、47歳のオッサンだった 2017-03-28-Tue
第3回主張するよりも、お話がしたい。 2017-03-28-Tue
第4回広告の仕事を辞めた理由。 2017-03-28-Tue

ライター、編集、コピーライターとして人の言葉を代弁してきた30代。そろそろ自分の言葉を持ちたいと思い始めました。

糸井さんがハマってる、元電通の田中さん。

糸井さんがハマってる、元電通の田中さん。

担当・のりこ

糸井さんがほぼ毎日、ツイッターで絡む田中さん。
コピーライターとして勤めた電通を2016年末に辞めて、ただいま無職。
田中さんって何者?
どうしてそんなに糸井さんと仲良しなの?
奇しくも元コピーライターのふたりが語る
くだらなくて、でも真剣な「これまで」と「これから」のお話。

プロフィール
田中泰延(ひろのぶ)さんのプロフィール

第1回 糸井さんと田中さんの笑撃の出会い

BGM
♪ど~ぶね~ずみ~みたいに う~つく~しくなり~たい~」
糸井
‥‥あれ? 来ないね(笑)。

♪しゃ~しん~には~写らない う~つ~くしさ~があるから~

糸井
間が悪いなぁ‥‥

♪リンダリンダ~!

田中
(踊りながら部屋に入ってくる)
一同
(爆笑)
糸井
あぁ、よかった(笑)。

踊りながら登場する田中さん

田中
どうも。
今日は、モンドセレクションで
2年連続受賞した、
この大阪キャラメルプリンケーキをお持ちしました。
糸井
いつもありがとうございます。
ミスター手土産、いらっしゃいました。
田中
よろしくお願いします。
糸井
今日もいくつかの紙袋に手土産が入っています。
僕は「手土産研究家の田中さん」と認識していますが、
どうしてあんなに手土産を? 
営業やってらっしゃったんですか?
田中
まったくやったことないです。
でも貰うとうれしいっていう経験が大きくて。
自分の手土産はつまんないんですけど、
ほぼ日さんからはメッチャいいもの貰えるじゃないですか。
糸井
そんなのあったかなぁ(笑)。
田中
ジャムとかカレーの恩返しとか。
やっぱり貰うとうれしいし、あと家族が喜ぶんでね。
糸井
家族という言葉が田中さんの口から出てきたのは、
ちょっと珍しいですね。
やっぱり無職になってからですね(笑)。
今日はその辺も聞いていきたいと思います。
田中
そうですね。そうなんです(笑)
糸井
僕の手土産の考え方のお手本は土屋耕一さん。
コピーライターで同業の神みたいな人です。
 
土屋さんは若い頃アルバイトで資生堂の宣伝部にいたんですって。
で、取引先からもらったビール券なんかがあって
「一杯やるから、何か買って来いよ」って上司に言われて、
松屋の地下でいろんなものを買うらしいんですよ。
で、買ってくるものが気が利いていたんですって。
「俺はそれで社員になったんだ」と。
そういうの、ありますよね。
田中
なるほど(笑)。
僕はいつも「つまんないものです」って言っちゃうんですが、
これはいいコミュニケーションだと思うんです。
  
昔、田村正和さんに、テレビドラマの中で乗っていた
車のミニカーを出したんですよ。
喜んでもらえると思いつつ、「つまらないものですけど」って。
そしたら「本当につまらないね」ってあの口調で(笑)
糸井
あぁ、あぁ。
田中
でも、「つまらないね」って言いながらね、
鞄にしまっていたんですよ。楽屋に置いていかないで。
それ、すごくいいなぁと思って。

糸井
田中さんはいつも、「つまんない」のハードルを
下げた状態で選んでこられますよね。
駅で買えそうだけど、そうとも限らないみたいな。
田中
まぁだいたいは新幹線に乗る直前に買うんですけど(笑)
大阪のいいところは、「面白い恋人」とか、
ネーミング自体がくだらないっていうのがありますよね。
だから中身のおいしさとかまったく問われなくて。
糸井
うんうん(笑)。
田中
そこでコミュニケーションツールになるんです。
糸井
なっていますよね。
でもこの前、目黒の揚げ煎餅と揚げ饅頭のセットを
いただいたじゃないですか。
田中
あれは本気です。おいしいから。
糸井
ねぇ。あれが混じったことで、
僕の田中さん像がちょっとずれちゃって。
今までは、「つまんないもの」だったんだけど、
「これ、うまいじゃん」ってなって(笑)。
田中
あれは、塩野さん(塩野米松さん)がいらっしゃるからです。
いきなり大阪のくだらないものをあげても、
東北から来られて「なんじゃ、これは?」となると思ったんです。
糸井
あぁ。微妙に使い分けて。
田中
微妙に、小ずるく生きていますから。
糸井
その辺が土屋耕一になるタイプ。
田中さんへの興味が沸いてくるよね。
田中
いやいやいや(笑)。
糸井
あと、今だから言える秘密が
僕らの間にひとつあるんですよ。
お花見問題。
田中
はい。大問題ですね。
糸井
あれ、言っていいですかね。
田中
ええ。
糸井
この方がおられた電通関西支社の部署は‥‥
なんていうんだろうなぁ、
『水滸伝』の梁山泊(優れた人たちが集まる場所)
みたいなところなんです。
田中
はぐれものの集まりですね(笑)。
東京の人が作るカッコいい広告にカウンターパンチを
食らわせようと、関西のノリでおかしな人が
いっぱい集まったんです。
で、親玉の堀井さんという人と糸井さんとの
久しぶりの再会がそのお花見だったんですよね。

糸井
電通の関西のチームにセットで会うのは
ぼくは生まれて初めてで。
田中
あの30人以上の大集団に。
糸井
お花見だっていうから、酒があるのはもうわかっているわけで。
そこに田中さんの案内で行ったんですよ。
「あ、行く行く」って。
その時が田中さんとの初対面なんですね。
田中
そうですね。
糸井
それまでツイッターだけでおしゃべりしていて、
ようやく「やぁやぁ、初めまして」って会ったわけですね。
そしたら、その時も複数の紙袋を下げてるわけです(笑)。
まず1つは、大きなつづらみたいなやつ。
田中
(笑)
糸井
それは後で僕に渡してくれたんですよね。
「つまらないものですが、糸井さんにお渡しするものです。
でも荷物になりますから僕が帰りまで持っています」って。
ここでまずちょっと知恵を使っているわけです。
田中
いやいやそんな(笑)
糸井
で、もう1つ重い紙袋を持っていて、それは一升瓶なんですね。
「あの梁山泊の方々は酒さえあれば機嫌がいいので、
これは糸井さんからの差し入れだっていうことで
申し訳ないですが勝手に用意させていただきました。
渡す時だけ持っていただけませんか」って(笑)。
何それ!?って(笑)。
田中
大阪のデパートで買ったお酒で、
のしに大きい筆文字で「糸井」って書いてあるんですよ。
糸井
すでにね(笑)。もう、騙されてるような気がして(笑)。
田中
この小賢しさっていうね(笑)。
糸井
その念の入り方がすごいんで、笑うしかなくて(笑)。
ただその梁山泊の方々は人を疑うことも手練れだし。
正直に言ったほうがいいのか、言わないほうがいいのか、
その加減もわかんないんです。
田中
はい。
糸井
で、まぁここは田中泰延に任せておこうと思って。
僕は芝居ができない人間なんで(笑)。
言われた通りに「これ」って渡したら、案の定、湧くんですよ。
田中
まず、僕たちは少し遅れて行ったんですよね。
そしたら「わぁ、糸井さん来た」って。
事前に「糸井さんからって言ってくださいね」って言ったから
糸井さんがすごい小さい声で
「あのぅ、これ、僕から」っておっしゃるんです(笑)。
 
そうしたら、みんなが「ワーッ!」って。
酔っ払いだから包み紙をグシャグシャって取ると
「糸井」って書いてあって、
お酒が出てくるから、さらに「ウワァーッ!」って(笑)。

糸井
すごいんだよ。ガソリンを焚火に投入したみたいに。
これなら、持ってきたほうがいいんだなぁって思いましたよ。
大阪から来た人が東京の集いであれやったら、
「あぁ」って言ってお終いですよね、きっとね。
田中
でもあの人たちは瞬時に開けて、
糸井コールが起きるんじゃないかという盛り上がりで。
「酒あるぞ!」って一斉に注いで一気に飲んでいましたね。
糸井
そう。でも、そのメンバーは馬鹿じゃないんです。
そこがいやらしい(笑)。
馬鹿じゃないっていうのと、
馬鹿らしさが2つ並んでいるんですよ。なんなんでしょうね。
田中
なんでしょうね、あの人たちは。
あの日、堀井さんもひどかったんですよ。
「あれぇ?田中、20何年いて
何もせぇへんやつかと思ったけど、糸井を連れて来たな」って、
ひどいですよね(笑)。
糸井
(笑)

<あと3回、続きます。>

第2回 27歳だと思ったら、47歳のオッサンだった