もくじ
第1回近すぎる嫁姑関係 2017-05-16-Tue
第2回お母さんを泣かせる 2017-05-16-Tue
第3回お母さんに謝りに行く 2017-05-16-Tue
第4回正直になろう 2017-05-16-Tue

コピーライターです。

中国人のお姑と、日本人の私。

中国人のお姑と、日本人の私。

担当・小森谷 友美

わたしの夫は、中国人。
4歳のときから日本に住んでいるので、
中身は日本人のような中国人だ。

夫のお母さんも、もちろん、中国人。
いまは北京に住んでいるのだが、
前は20年近く日本に住んでいた。

今回はそんな夫のお母さんとの、
一風変わった「嫁姑関係」を書きたいと思う。

じつはこの話は、前回の課題である
「わたしの好きなもの」のエッセイを書くときから、
テーマにしようか悩み、結局あきらめてしまった。
書き出すと「好き」だけじゃない話も
まじってしまいそうだったし、
自分の恥ずかしいことや、いやな部分とも、
向き合う必要があったからだ。

そして今回の自由課題エッセイ。
テーマを考えていて、やはり浮かんだのが、
中国のお母さんのことだ。
どうしよう。書こうか、書くまいか。
でも頭のなかは、お母さんのことでいっぱいだった。
こうなったら、全てをさらけ出して書くしかない。

全4回、わたしの正直な気持ちを、
どうぞお読みください。

第1回 近すぎる嫁姑関係

お母さんは、「ひとのために尽くす」
ことが生きがいのように見えるひとだ。

出会った日は、食卓に並びきらないほどの
たくさんの中華料理をつくってくれた。
お店で食べるより、ずっと味はやさしくて、
知らず知らずのうちにたくさん食べてしまっていた。

中国ではおかずを残すほどにたくさんつくるのが
「おもてなし」なんだそうだ。
わたしはそれを知らなかったから、
せっかくつくってくれた料理を残さないように、
最後のほうは少しだけがんばって食べた。
シメの餃子になるころには、お腹はぱんぱん。
スカートのホックが、あぶないことになっていた。

中国旅行中にお腹をこわしたときも、そうだった。
お母さんは早朝に、車で50分かかる
病院までわたしを連れて行き、
その後3日間の予定をすべてキャンセルして
つきっきりで看病してくれた。

また別の日には、仕事から家に帰ると、
洗濯したおぼえのないパンツが
ベランダでぴらぴらと干されていたこともある。
お母さんが家にものを届けるついでに、
洗濯してくれていたらしかった。

さすがにこれは、戸惑った(笑)

おなじ女性とはいえ、お姑さんである。
パンツを触られてしまったこと、
洗濯物をそのまま放置して
仕事に行ったのがバレてしまったこと、
両方がすごく恥ずかしい。
顔から火が出る思いで、あわてて
お母さんにお礼の電話をしたけど、
お母さんは特に何かを思っている様子はなかった。

わたしはお母さんと接してみて、
こんなに距離の近い「嫁姑関係」が
あるものなんだと、正直驚いた。

距離が近いから、いいところもわるいところも
すべてお見通しになってしまう。
「おせっかいじゃないかな?」とか
「迷惑じゃないかな?」ということを
気にしてしまいがちなわたしにとって、
お母さんの面倒見の良すぎるところは
逆にとても新鮮だった。

これも、中国の文化のひとつなのだろうか。
正直、「ここまでしなくてもいいのに」と
思うこともあった。

でも国際結婚をしたからには、
この距離の近さだって前向きに受け止めよう。

そう思っていた。

(つづきます)

第2回 お母さんを泣かせる