もくじ
第1回嫌いな人を、追いかける 2016-12-06-Tue
第2回つなぎとめられたのは、なぜ? 2016-12-06-Tue
第3回わたしたちは、どこへ行くのか 2016-12-06-Tue

長野県出身東京都在住。1981年生まれ。趣味は食べ放題です。クレープとカニが好き。

Tw:@yunico_jp

わたしの嫌いな人

第2回 つなぎとめられたのは、なぜ?

転機は突然訪れた。彼女が会社を辞めるという。
聞いたときには、最終出社日まで、もうそんなに時間は残っていなかった。

嫌いな人がいなくなる。
二度と会わなくて済むかもしれない。
ライバル心を燃やしていらいらしなくていい。
うれしい知らせのはずなのに、その話を聞いて、わたしはすごく動揺した。
よくわからないもやもやに襲われてそわそわし、仕事が頭に入ってこない。

どうして辞めるの?
家庭の事情?
次はどこへいくの?
どんな仕事をするの?
誰かに誘われたの?
聞きたいことはたくさんあった。本人に話しかけてしまいたい。
でも、もちろん、話しかけることなんてできない。
間を持ってもらうような共通の同僚もいないし、どうすることもできない。
何もできず、なんでこんなに動揺しているのかわからないまま、
着々と彼女の最終出社日が近づいてきた。

同じ時期、ほぼ日の塾、80人クラスの選考が通った。
80人の枠に対して1000人近い応募があったと塾の冒頭で聞いた。
その中に入れたのは、とてもラッキーなことだったと思う。
当日、丸1日に渡る授業を受講し、懇親会ではほぼ日スタッフさんによる、
お手製のカレーをいただいた。おいしいカレーは、おかわりもOKだった。
喜び勇んでおかわりの列に並ぼうとしたとき、心臓が止まるぐらい驚いた。
なんと、あの彼女もカレーのおかわりの列に並んでいたのだ!
彼女もまた、ほぼ日の塾に応募し80人の中のひとりに入っていた。

目が合った瞬間、彼女も驚いた顔をしたが、すぐに
「参加していたんですね!」
と、明るい声で言った。
その声のトーンにつられ、
「そうなの。全然気づかなかった、びっくりしたよ!」
と、わたしも自然にそう受け答えた。

あれ?
その場では、ひとことふたことだけ話して別れたが、
ずっと嫌いで避け続けてきたのに、突然自然に話せて驚いた。
自分の態度も、彼女の態度も、今までの流れからするとおかしい。
なんで今、自然に話すことができたのだろう??
よくわからないのに、わたしはなぜだか、とてもほっとしていた。

80人クラスの中から、さらに実践編へと進む40人の選考があった。
そして、その40人の中にも、わたしと彼女が入っていた。
結構な倍率の中、この二人が一緒に残っている。
これにはなにか、意味があるのだろうか…。

会社では相変わらず話すことのないまま、
彼女は最終出社日を迎えて退職してしまった。
もう会わなくなると思ったのに、
それをつなぎとめるようにほぼ日の塾、実践編が始まった。

第3回 わたしたちは、どこへ行くのか