はじめてのJAZZ2ヒストリーもたのしみなりー!ほとんどまるごと再現ツアー

#03 オープニングトーク ようこそ、「はじめてのJAZZ2」へ

糸井 みなさん、こんばんは。

本日は「はじめてのジャズ2」という催しに
お越しくださいまして、ありがとうございます。



前回の1回目では、とにかく
僕らなりに「ジャズ」を楽しんでみたんです。
今日の2回目は、
タモリ教授のご説明にもありましたとおり、
ジャズのDNAを、たどってみようと。

つまり、ジャズがどんなふうに生まれて、
どんなふうに、僕らを楽しませてくれるのか。
その「歴史」と「豊かさ」について、
楽しみながら学んでみよう、ということなんです。

今日は、山下洋輔さんが
「フリージャズ」というご自身のスタイル以外の、
いろんな種類のジャズを演じてくださいます。
こういう、めずらしい場所に立ち会えたことじたいが
僕自身も幸せですし、
みなさんにとっても、なかなかない機会だと思います。

それでは、さっそく
すべてを握っていらっしゃる山下洋輔さんを
お呼びいたしましょう。

山下洋輔さんです、どうぞー!

山下 どうも、こんばんは。
糸井 まず、オープニングの曲として、「GUGAN」。
山下 はい、はい。
糸井 山下さんオリジナルの「大フリージャズ」から
ぶちかましたわけですが
このイベントを、あの曲からはじめたというのは?
山下 こういう場に参加していただくにあたって、
まず最初に「あいつは何だ」ってことを
わかってもらったほうがいいんじゃないかと。

1969年くらいに、ああいう演奏法を開発しまして、
お聴きいただいたとおり、「GUGAN」という曲は、
「グガン、グガン、ダバトトン、
 グガン、ダバトトン」といっておりますから、
そういうようなタイトルがついているんです(笑)。

そして、ああいう音楽が、僕の原点なんですよ。

糸井 自己紹介としての曲。
山下 名刺がわりですかね。
糸井 それじゃあ、さっそく
ジャズの歴史をたどっていきましょうか。

ちなみに、ここに座るはずのタモリさんは
ちょっと都合が悪いみたいで、
今すぐには来られないみたいなんですけど。
山下 あっはは(笑)。
糸井 まずは、ジャズ誕生以前、ですね。
山下 ジャズという言葉さえもない時代。
糸井 そんな時代に、何が醸成されていたから
ジャズという子どもが生まれたんでしょうか?
山下 さっき、タモリ教授もおっしゃったけど、
アフリカ人奴隷が新大陸へ連れて来られるんですが、
最初が1619年なんです。
糸井 日本でいいますと、
徳川幕府が始まって間もないころですね。
山下 西洋音楽史でいえば、
ベートーベンなんかも、まだいません。

新大陸には、その時代以降の西洋音楽文化が、
植民地宗主国である
イギリス人、フランス人、スペイン人なんかによって
もたらされていきます。

当然、アフリカから連れてこられた人たちも
そういう西洋音楽に触れる機会はあったわけです。
100年間くらい、でしょうか。
糸井 ずいぶん、ながーい醸成期間だったんですね。
山下 クラシックを聴いていたかもしれないし、
踊りの音楽を楽しんでいたかもしれない‥‥。
糸井 はい。
山下 そういう音楽を真似しはじめたんじゃないかと、
まずは予想するわけです。ポルカとかね。
糸井 アフリカの人たちが。
山下 ええ、それと、あとひとつ。
新大陸におけるフランス人とアフリカ人の混血の人たちは
いわば「特別あつかい」だったんです。
クレオールと呼ばれている人たちですけれど。
糸井 いわば、エリートですね。
山下 そうです。フランス本国で
高等教育を受けたりもしています。

そういったクレオールたちは、
たぶん、楽器を習得する機会もあったろうし、
西洋の音楽文化に触れる機会が、とくにあった。
糸井 つまり、白人と黒人との出会い、
これがジャズの大もとであると。
山下 アメリカという新大陸で、アフリカとヨーロッパが
まるで衝突するようにして出会った。

その結果、生まれたのがジャズです。

ですから、その生まれかたからして、
ものすごいエネルギーを
内に抱え込んでいる音楽だと思うんです。
糸井 なるほど‥‥。
山下 そして、アメリカという新大陸で
ヨーロッパとアフリカが衝突して生まれた
ジャズという一種の民族学的現象は、
その後、全世界に広がっていったんです。

これには、地政学的、政治的‥‥
いろんな理由があるのかもしれないけれど、
やっぱり、その音楽の持つインパクトそのものが
すごかったんじゃないか、と思うんです。

糸井 ぶつかったもの同士が、デカかった。
山下 ええ、なにしろ奴隷制度というのは、
人類史における、ものすごい悲劇じゃないですか。
その悲劇のおかげで、できてしまった音楽。
それほどまでに大きな代償を払ってできた音楽だからこそ、
強烈なエネルギーを持っているんだと思うんです。
 
<つづきます>

今日のジャズ語

ジャズ
もともとは「ジャス(Jass)」と呼ばれていたらしい。
「Jass」とは、性行為を意味するスラングのこと。
「Jass→Jas→Jasz」という変化を経て、
最終的に、シカゴで「Jazz」に落ち着いたという。
クレオール
白人と黒人の血が混じった人たちのこと。
ジャズ史的にいうと、
とくにニューオリンズのフランス人と
黒人の混血人種をさす。
ヨーロッパの音楽的教養を持っていた
彼らのクレオール・ジャズは、西洋的に洗練されており、
のちに黒人たちのジャズと融合してゆく。
2008-03-05-WED