第12回 ジャズとボサノバの関係。

タモリ 今はジャズだけじゃなくて、
ラテンのおもしろいバンドとかが、
ジャズクラブでも、出ていますよ。

ジャズじゃないけど、
ジャズの周辺の音楽と
ジャズとの関係を話すのも、
おもしろいと思う。

ボサノバであるとか……。
山下 うん。

アストラッド・ジルベルトが
『イパネマの娘』で
あんなにヒットして歌っているでしょう?

だけど、お金は一銭もやっていない。
アストラッドにはやらなくていいと、
スタッフがプロデューサーに電話したって、
ちゃんと資料が残っているんです。

アントニオ・カルロス・ジョビンが、
バーブレコード(ジャズレーベル)の
五十周年のお祭りの記者会見に出た時、
ぼく、ちょうど、隣に座っていたの。

ぼくはバーブのアーティストだったから、
なぜか日本でひとり呼ばれて……。
糸井 そうなんですか。
山下 バネッサ・ウィリアムスと
ハービー・ハンコックの司会で、
ぼく、ソロピアノやってきたんです。

みんなひとりひとり出て、
バド・パウエルの曲を、1分59秒、
タキシード着てやれという縛りなんです。

スタッフもタキシードで
カメラマンもタキシードで、
かっこよかったなぁ。
アカデミー賞と同じ形式でした。

そんなことをやって、
いちおう記者会見があるっていうんで行って、
どうせだから座っちゃえっていって、
ぼくは、ハビー・ハンコックと
カルロス・ジョビンの間に座ったの。

まぁ、そしたら、みんな、ジョビンには
「ジャズの影響」について訊くんだけど、
「私はジャズは知りませんから」
の一点張り。絶対に知っているはずなのに。

ジャズからたくさん持ちだしてきているし、
質問者たちも
「あのコードはジャズのコードでしょう?」
と例を出しているのに
「ドビュッシーだってあれをやってた」
って。
糸井 (笑)
山下 カーネギーホールで
世界中のジャズミュージシャンを
集めておこなわれているお祭りだし、
「ジャズには感謝しています」
ぐらい、言えばいいのにね。
もう70歳を過ぎていたんだから……。

でも、絶対にジャズを褒めない。
ジャズに感謝しない。

それがほんとに不思議で、
なんだこの人は、と思って調べたの。
そしたら、やっぱり積年の恨みがあった。

アメリカのジャズミュージシャンが
ブラジル音楽を
搾取しちゃったところがあって、
聞いておもしろいから
どんどんアメリカで吹きこんだはいいけど、
ロイヤリティーの法律がなかったから、
好き放題、ボサノバのミュージシャンを
使っちゃったんだよね。
タモリ ボサノバの側には、
恨みつらみがあるんだよね。

それでジャズの方では
「ジャズがあったから、
 あんたたちは有名になれたし、
 ジャズからも影響を受けてるんだろ?」
というんだけど……
実際に詳しくボサノバを聞いてみると、
まったくと言っていいほど、
影響を受けていない。

逆に、ジャズが、
ボサノバから影響を受けていた。
 
(つづきます)



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2005-01-06-THU


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