第9回 ジャズを聞く醍醐味。

糸井 蕎麦屋のオヤジさんのように、
演奏じゃなくても、
場所提供ということで、
「俺の話(ジャズ)を聞け」
というタイプの人が、
やっぱり、混じりますよね。
タモリ (笑)「俺の話を聞け」
というヤツもいるけど、
「こいつの話も聞け」
と連れてくるヤツもいる。
山下 (笑)結局、みんな連れてきちゃう。
糸井 まぁ、かっこよく言えば
「俺の話を聞け」は、
表現欲ということですよね。

それと、オーディオマニアと
ジャズマニアって、重なったりしていませんか?
山下 そうだねぇ……よくわからない分野だけど。
タモリ オーディオファンには、
クラシックだけっていう人もいます。
ただ、よく聞くとおもしろいですよ。

スピーカーから出ている
コードの間隔は何センチがいいかとか、
コードの長さをミリ単位で切っていって
「ここだな」って言ったり……。

こっちには、
わからないぐらいの差なんです。
実際に聞くと、やっぱり、
ものすごく、いい音なんですけど。
糸井 それは……
「俺の話を聞いてくれ」の、
オーディオ版ですよね?
タモリ (笑)そう。
だから、自分がいちばんなんです。
でも一理あるんですよ。
山下 ただ、オーディオを極めた人って、
ライブを聞いていると、
音が悪く思えるんじゃないかなぁ。
そこをどう塩梅しているんだろう。

ジャズ喫茶のオヤジなんて
世界最高のプレーヤーの
最高の録音を最高の音質で
しょっちゅう聞いてるわけじゃない。

だから、ライブに来た
そこらのミュージシャンの音楽を
聞いておもしろいのかなぁ?

いつもカラヤンを聞いている人が
日本の楽団を聞いて
「おまえらは違う」
とか思っているような
ものなんじゃないかって、
ジャズマンの方では想像しちゃうよね。

だから、
ジャズ喫茶のオヤジとジャズマンって、
案外、微妙な関係です。

ライブ感覚とちがうもん。
オーディオで鍛えられているから。
それに、くりかえし同じものを聞くと、
それが完成した作品にも
聞こえるからね、ジャズって。
糸井 ただ、そこには事件性がないですよね。

山下さんとタモリさんが
共通しておもしろがっているのって、
事件性のような気がするから。

次の瞬間に何が起こるか、
誰もわからないという事件性。
タモリ そうです。

だから、音楽ができあがる
現場にいるという興奮があります。

産婦人科医じゃないけど、横で見てましたと。
音楽ができあがる場所にいるというのは、
やっぱりジャズの醍醐味です。

ある意味、演奏者と一緒になれる瞬間は、
そこなんでしょうね。
山下 そうそう。
 
(つづきます)



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2005-01-03-MON


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