HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その62 海に祈る

朝夕の気温が少し下がり、過ごしやすくなってきました。
秋、ミハチガツの到来です。
旧暦8月にあたるこの季節、
奄美はお祭り気分に染まります。

奄美大島では旧暦8月の最初の丙(ヒノエ)がアラセツ、
7日後の壬(ミズノエ)がシバサシ、後の甲子(キノエネ)がドンガ
と呼ばれる一種の節句にあたっていて、
それらの夜には集落ごとに八月踊りが踊られます。
チヂンという太鼓を打ち鳴らし、輪になって踊る。
男女が交互で掛け合いで歌って、楽しそうに踊る。
最初はゆっくり、次第にテンポをあげながら踊る。
唄も踊りも集落によって少しずつ異なる、
集落単位の伝統芸能なのです。

伝統芸能といえば忘れてならないのが、
国の重要無形文化財に指定されている平瀬マンカイ。
これを見学するため、龍郷町の秋名集落に向かいました。
平瀬マンカイはその51で紹介した
ショチョガマと対の行事で、
ともにアラセツの日に豊作を祈願して行われます。
ショチョガマが早朝の行事なのに対して
こちらは午後の満潮時に合わせて行われるお祭り。
会場の海岸にはすでに集落の人や見学客が集まっています。
その中を白装束をまとった女性が5人進み出て、
注連縄を渡した平たい岩の上にのぼりました。
彼女たちは琉球王朝の女性神官ノロの役なのです。
一方手前の岩にはグジ(宮司)役の男性3人と
チヂンを手にしたシドワキの女性4人がのぼっています。
ざわざわした空気が一瞬ピンと張り詰め、
チヂンの一声とともに厳かな唄と踊りが始まりました。
ゆるゆるとした動きに波音が重なり、眠気が襲います。
目を開いてよく見ると、ノロ役の女性は海に向かって
手招きするような動作を繰り返しています。
海の向こうの神の国ネリヤカナヤから
五穀豊穣を祈って稲魂を招き寄せているのです。
平たい岩(平瀬)の上からのお招き(マンカイ)は
15分ほどで終了しましたが、
このあとしばらくは浜辺で唄と踊りが続き、
日が暮れてからは集落で八月踊りになだれ込みます。


向こうが神平瀬、手前がメラベ平瀬と呼ばれる

八月踊りにしても平瀬マンカイにしても
祭りを行っている主力はお年寄りです。
こういう伝統芸能ももう何年か経つと
自然消滅していってしまうのでしょうか。
集落の人間ではない私はただの傍観者にすぎません。
今年のアラセツはたまたま9月15日に当たっていました。
敬老の日に元気なお年寄りをたくさん見て
ちょっと嬉しくなりました。



ところで少し宣伝をさせてください。
3月に新刊が2冊出ました。

1冊は角川書店から出た『非在』。
思わせぶりなタイトルですが、難しい本ではありません。
生き物がたくさん出てくる孤島物のミステリーです。

出版社名:角川書店
発売日:2002年03月08日
定価:本体1600円(税別)
ISBN:4-04-873367-2-C0093

もう1冊は世界文化社から刊行された『昆虫探偵』。
こちらはタイトルそのまんまの昆虫ミステリー。
昆虫界で起こる事件を昆虫の探偵が昆虫の論理で解決します。


出版社名:世界文化社
発行年月:2002年03月
定価:1,400円 (税抜)
ISBN:4-418-02503-0

   

2002-09-22-SUN

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