第1回 つかみどころのない魅力。

糸井 石坂さんは、
ほとんどテレビの創成期から
関わってきていて、
今も、現役で
なにかをやろうとしていらっしゃいます。

テレビとこんなに
長いことつきあっている人って、
黒柳徹子か石坂浩二か、
というぐらいだと思うんです。

これまで、何年、テレビに出てるんですか?
石坂 四十数年でしょう、もう。
糸井 その事実だけでも、笑っちゃいますよね。

ドラマを生放送でやっちゃうような時から
いろいろなものを見てきた
石坂さんからすると、
このごろのテレビが、
かつてといちばん変わったところって、
どんな点だと思いますか……?
石坂 いちばん変わったのは、
見せるというよりも、
押しつけがましくなってきた、
というところじゃないかしら。

見る方には易しいものばかりですよね。
主旨がはっきりしたものばかり。

主旨がはっきりしすぎて、
あらゆるものが押しつけがましい。
誰にでもすぐわかる、
企画書の作りやすいものばかりで、
ニュースにしてもしかりだと思う。

新幹線が脱線した時には
NHKですら
「……この時、反対側から
 上り線が走ってきたらどうなりますか?」
とアナウンサーが言う時代です。

そうなれば大惨事に決まってるのに、
盛りあげるための言葉を
言いたいだけなんです。

他のさまざまな番組でも、
司会者がゲストを
一度に大勢呼ぶような番組は、
あれはゲストがおもしろい、
というよりは、司会が
「こいつはこういうふうにおもしろいだろ?」
と押しつけてきてるのよ。

逆に言えば、出ている人の方は、
きっとおもしろくもなんともない。

ドラマにしても、そうだと思うんです。
つかみどころのないものは、
もう、なくなっちゃったよね。
みんな、つかめちゃうよね。

一分でも見れば、
この番組はたぶん何時までにこうなって、
だいたい、
こういうことが言いたいんだろうとわかる。
糸井 「作り手が自分の予定したことを
 実現するだけ」だと、
作ること自体がこわくなくなりますよね。
石坂 やっぱり、作り手は
自分で自分を
納得させなきゃいけないようなところに
いすぎるんだと思う。

もう少し無責任に、自分でさえも
納得できなくてもいいというか。

昔のドラマって、
そういうところがあったと思う。

「カメラをひっくりかえしたら、
 みんなどう思うだろう?」
方法論に凝っていたから、
自分でも納得できないようなシーン、
だけど、それが、何かを表しているような
シーンが生まれていた。

それは、でも、おもしろいんです。
  (つづきます)


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2004-12-24-FRI


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