糸井 もうね、ぼくのネタはどんどん
尽きていくんですけど。
石川 ははははは。
糸井 また困らせちゃうかもしれないけど、
こんな写真を。
石川 ‥‥テニスコート、じゃないな。
糸井 なにかのコートですね。
まぁ、これは、こういうものがあったという
事実を撮っただけなんですけど。
石川 はい。
糸井 いちばんの動機としては、
この遊具がコートに食い込んでることですね。
つまり、遊び場をジャマしてるわけです。
で、「どうして、そこに引く?」と。
石川 ははははは、たしかに。
糸井 ちょっとこっち側にさ、
ずらせばいいだけの話でしょう?
石川 そうですね(笑)。
糸井 ここに線を引けるという、
わからなさ、というよりは、恐ろしさですね。
こういうの、気になる人は、
すごく気になると思うんですよね。
なにかの展覧会の中にこれが混ざってたら、
引っかかる人が意外に多いと思いますよ。
石川 なるほどー。
これもまた、出す写真が難しい‥‥。
糸井 対決じゃないんだけどね(笑)。
石川 じゃあ、これでいくしかないな。
糸井 お。なるほど。
「都市のオブジェ」シリーズだ。
石川 ホームレスの家一式です。
糸井 畳まれた状態なんだね。
石川 そうですね。
開くと、ホームレスの人の家になる。
これがすべて生活道具。
糸井 そうだね。
あ、台車に乗ってるんだ。
石川 いちおう、鍵もかかってますね。
糸井 ああ、ほんとだ。
へー、おもしろいね。
石川 なんか、独特の生活感があって、
惹かれたんですよね。
糸井 取り合わせがおもしろいなあ。
この人たちって、
色を選ぶということをしないじゃないですか。
そこがおもしろいんだと思うんですよね。
石川 自然の、あったものだけですよね。
糸井 うん。
だから、セーターが欲しいなと思ったときさ、
「赤が好きだから、赤いセーターを拾う」
っていうことは、基本的にはないわけですよね。
そこが、ぼくらにはないことなのかもしれない。
石川 ああー。
糸井 そういう要素を、
ぼくらがもっと取り入れたほうが
いいのかもしれないって思いますね。
選べないことを楽しむというか。
石川 そうか、そうか。
もう、ゆだねるというか。
糸井 そうそう。
石川 たしかに。
自分で好きなものを選んじゃうと、
どうしても片寄りますからね。
糸井 うん。
自分をつくっちゃい過ぎるんだと思うんです。
石川 ああー。
人からもらった洋服、
自分じゃ絶対着ないような洋服とかが、
じつは似合ったりして。
糸井 そういうことですね。
選んだ色じゃないから、
この写真はおもしろくなってるわけで。
だって、こんな色の組み合わせの荷物なんて、
みんな持ってないでしょ?
石川 こっちの家の人なんて、
ブルーシートじゃなくて
オレンジシートですしね。
糸井 選んでないよね、このオレンジは。
いや、おもしろいなぁ。
石川 こういう写真が10個くらいあると
作品になるんでしょうけどね。同じのが。
2つだけだと、まだ弱いんだよな。
糸井 でも、シリーズとして
作品になりそうな力は、
伝わってきますね。
  (続きます)
2007-12-05-WED