石川くん。
枡野浩一による啄木の「マスノ短歌」化。

やはらかに積れる雪に
[ほ]てる頬[ほ]を埋[うづ]むるごとき
恋してみたし
 (石川啄木『一握の砂』より)
 ※[ ]の中はふりがなです。



第22回 石川くんのしたい恋



石川くん、暑いねー。そして熱いねー、このモテ男!
   *
あつさを忘れたくて、
雪の出てくる歌を選んでみました。
わあ、
石川くんて、ロマンティストー。
モテモテなのは、そういうところに秘密があるの?
……ここで、
関川夏央×谷口ジローの漫画
『【啄木日録】かの蒼空に』(双葉社)
に引用されてる、
石川くんのローマ字日記の一部を紹介します。
(漫画化の段階で、言葉が少し「編集」されてます)
ちょっと長い引用になるけど、かんべん。
石川くんが夜な夜なプロの女の人と
いちゃいちゃしてた時期の日記ね。
   *
予[よ]の求めたのは 
からだも心もとろける
ような楽しみだ

しかし それらの女は やや年の
いったのも まだ十六くらいの
ほんの子供なのも どれだって
なん百人 なん千人の男と
ねたのばかりだ

男というものにはなれきっている
なんの刺激も感じない

わずかの金をとってその陰部を
ちょっと男に貸すだけだ
それ以外になんの意味もない

何千人にかきまわされたその陰部には もう
筋肉の収縮作用がなくなっている 緩んでいる

十八のマサの肌は 貧乏な年増[としま]女のそれ
かとばかり 荒れてガサガサしていた

たったひと坪[つぼ]の狭い部屋の中に あかりも
なく 異様な肉のにおいがムウッとする
ほどこもっていた

女はまもなく眠った
予の心はたまらなく
イライラして
どうしても眠れない

予は女の股に手を入れて
手荒くその陰部をかき
まわした しまいには五本
の指を入れてできるだけ
強く押した

女はそれでも
目をさまさぬ

予はますますイライラ
してきた そしていっそう
強く手を入れた
ついに手は手首まで入った

女はそのとき
目をさました

そして いきなり予に抱きついた
「あーあーあ うれしい もっと
もっと もっと もっと あーあーあ」

十八にして すでに普通の刺激
では なんの面白みも感じなく
なっている女!

予はその手を女の顔に
ぬったくってやった

そして 両手なり足なりを
入れて その陰部を裂い
てやりたくなった

裂いて そうして女の死骸[しがい]
の血だらけになって 闇の中
に横たわっているところを
幻になりと[←原文のまま]見たいと思った 

ああ…男にはもっと残酷なしかたに
よって女を殺す権利がある!
   *
……ないない。そんな権利ないと思うよ、石川くん!
それにしても、
かまととぶってないで石川くん、
この日記みたいなことも短歌にすればよかったのに。
そうしたらもっと、
男のファンが増えたと思うよ。
女のファンは減ったと思うけど。
奥さんや梅川さんや小奴には幻滅されたと思うけど。
   *
じゃ、また来週ね。
おやすみなさい。
今夜もまた
小奴のひざの上で!

枡野浩一

http://talk.to/mass-no

2000-07-15-SUN

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