石川くん。
枡野浩一による啄木の「マスノ短歌」化。

しつとりと
なみだを吸へる砂の玉
なみだは重きものにしあるかな
 (石川啄木『一握の砂』より)


第13回 石川くんのなみだ



石川くん、ごめん。すなおに負けを認めます。
前回の歌の作り方は、君のほうが正しかった。
やっぱ「ピストル」は歌の最初に出てきたほうが、
より効果的なんじゃないかと思いはじめました。
   *
ものすごくサビたピストル
砂山を
指でほじっていたら出てきた

   *
って感じかな、石川くんのセオリーどおりに訳すと。
さすがは石川くん、短歌のプロだねえ。
私なんか、まだまだですよ……。
まあ、
自分が悪いとわかればきちんとあやまる姿勢、
それは君にはない、私ならではの美点だけれどね。
プライドの高い石川くんには真似できないでしょう?
ほんとうに、心から、おわびします。
  *
それはそうと石川くん、
今回の歌はギャグだとしても笑えませんでした。
いくら涙を流すといっても、
砂が重くなるほどは流せないと思うのだが、いかが。
少なくとも、たわむれに背負ったママよりは軽いよ?
それとも、おしっこでも漏らしたのだろうか。
私は幼い息子の紙おむつを取り替えながら、
おしっこは重いものなんだなあと実感する毎日だ。
  *
冗談はさておき石川くん、
2001年6月の今、
テレビでは悲しすぎるニュースを連日放映していて、
私は現実から目をそらして眠っていたいくらいだ。
でも涙は出ない。
いっそ涙が出たほうが気持ちいいのかも、と思うよ。
こんなニュースを見ても、
石川くんなら歌にするのかな。
私にはできないけれど、石川くんならできるのかな。
  *
悪いけど石川くん、
きょうは君をからかう気力もないし、
これで失礼します。
またあした。

枡野浩一

http://talk.to/mass-no

2000-06-16-SAT

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