石川くん。
枡野浩一による啄木の「マスノ短歌」化。

こころよき疲れなるかな
息もつかず
仕事をしたる後[のち]のこの疲れ
 (石川啄木『一握の砂』より)
 ※[ ]の中はふりがなです。


第5回 石川くんの疲れ



息もつかずに石川くんの本ばかり読んでいる、
ちかごろの私です!
   *
盗み読みされたら困るからと、
石川くんが(妻には読めない)ローマ字で綴ってた
『啄木 ローマ字日記』(桑原武夫編訳/岩波文庫)、
読んでみました!
(ローマ字の原文を
漢字とカナに変換した「訳」が添えられてるから、
すらすら読めました!)
なんだか毎日のように会社をサボってる石川くんだ!
貸本屋から借りたえっちな小説を
ノートに書き写すために夜ふかしして、
次の日は会社を休んだりとか!
給料を前借りばかりしてるくせに、
よくもまあそんなにサボれるなあと感心しちゃう!
石川くんはそのころ東京に「単身上京」していて、
函館に妻と子と老いた母を残してきてるわけだけど、
ほとんどまったく仕送りしてないっていうのも豪快!
ふところが少々あったかいと
プロの女の人といちゃいちゃしたり!
ろくに読めもしない洋書をふと買ってみたり!
またまた金がなくなって、
いつものように親友の金田一くんに金を借りたり!
度胸あるよね、石川くんて!
「鬼畜」って言われたことない!?
あと、日記の文章、
びっくりマークをつかいすぎだと思う!!
それと、
こんなに優しい金田一くんのことを、
〈人の性格に二面あるのは 疑うべからざる事実だ.
友は一面に まことにおとなしい,人のよい,
やさしい,思いやりのふかい男だとともに,
一面,シットぶかい,弱い,小さなうぬぼれのある,
めめしい男だ.〉
なんて書くのは、あんまりだと思う!
ほめ言葉より、けなし言葉のほうが、一個多いよ!?
   *
それだけサボってばかりいると、
たまに、ちょこっと仕事したとき
「きょうは仕事したよなあ」
とかいう気分になるよね! わかるわかる!
〈なににかぎらず
1日ひまなく仕事をしたあとの心持は
たとうるものもなく 楽しい.
人生の真の深い意味は 
けだし ここにあるのだろう!〉
とか石川くんも日記に書いてるけど、
それがわかってるなら、なぜ、
楽しさを毎日味わおうとしないの!
ああっ、そのお金で、
また文学仲間に酒とかおごるんでしょう!?
あーあ、
奥さんや娘さんやお母さんや金田一くん、
今夜も君のせいで泣きぬれてるよ!!!

枡野浩一

http://talk.to/mass-no

2000-05-19-SAT

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