いろどり 稼ぐおばあちゃんたちの町。

9 おばあちゃんがなぜだめか?

横石 菖蒲さんの、20年前の、
60歳だったころの写真を見るとわかりますが、
今のほうが肌に照りがあるんです。
すっごいきれいになったわ。
糸井 活性化してるね。
横石 その人がいちばん大事にしていることで
評価されること。それが効くんです。
糸井 横石さんは、
料亭めぐりをする前は、
農業指導者だったわけでしょ?
栗のイガじゃなくて「実(み)」をいかにして採るか、
のほうをやっていたわけです。
横石 指導しても意味がないと思いはじめて、
もうやめようと思ったんです。
営農指導なんて必要ないって言ったら
周りにはちょっと怒られたけどね。
糸井 自分がずっとやってきたことを
必要ないと言わせたものは、
いったい何だったんでしょうか。
横石 農業指導をやっても
返ってくるものがないからです。
「いろどり」をやっている人たちが強いのは、
やったことが必ず評価されるからです。
人がいちばん大事なのは評価されることです。

山田 人が評価されないことがわかったから
変えようと思われたのですか。
横石 そうです。やったことが、直結しないし、
それどころか無駄になる。
ぼくは、早く気がついたと思うな。
20代で、バブル前のころでした。
糸井 80年代ですね。
横石 農業も盛んなときだったけん、
逆に言うたら
そこで気づいたことがよかった。
糸井 このままいくとだめだと言われていても
そこまで危機感を持った人はいなかったでしょう。
横石 ぜんぜんいなかった。
「場面」という言葉をぼくはよく使うけど、
この菖蒲さんの柿の木にとって、
実(み)は最高の場面じゃない。
この木が最高に輝ける、最高の場面が、
葉っぱの、赤く色づいたところなんです。

緑の葉の状態では最高の場面じゃないし、
実(み)も最高の場面じゃない。
最高の場面、最高の状態って、なんや?
それを、この町の木一本一本、
ここに住む人たちひとりひとり、
町全体に、やっていこうと思たんです。

「おばあちゃんがこの町にようけおるのは
 なんでいかんのかな?」
ということも、そこで考えた。
高齢化比率が47.15あるんよ。
山田 高いですね。
ほぼ半数が高齢者。

横石 こんな町でよう事業をやりますね、
と言われるんですが、
いまや、年収何百万円もある人たちばかりの
47.15ちゅうのは、ものすごいわけです。
そんな、稼ぐ人ばっかりが高比率でいる。
こんなうれしいことはないんですよ。
糸井 そうだね。
この人たちに「受験」してもらっても
絶対落ちますからね。
横石 っはははは、そらそうや。
糸井 でも、社会は「そっち」をがんばれば
何でもできるんだって
みんなが一斉に言うわけですよ。
だけど、イチローに、
いまからいい大学受けろったって、
無理ですし、無駄です。
横石 そうやな、うん。
受験させたら落ちるけど
スペシャリストですからね。
条件不利地域やと言われますけど、
どこがや、と思いますよ。

(つづきます)
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2006-10-21-SAT


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