いろどり 稼ぐおばあちゃんたちの町。
4 都会の知恵を探る潜伏期。

糸井 みんなでミカンを栽培していた町を
「葉っぱを売る」ことに
切り替えるのは、むずかしかったでしょうね。
まずはそんなことだれも思いつかないし。
横石 そうですね。
そういう知恵って、いなかにとって
すごく大事なんです。
僕は、東京と田舎の差は、そこだと思う。
「知恵のあるなし」がちがう。
糸井 そうかなあ。
横石 そうです。田舎には知恵がない。
知恵を、田舎が持つことさえできれば、
ぜったいに田舎のほうがいいんです。
だって、まわりにあるもの全部を
活かすことができるんですから。
ここにあるものも、あそこにあるものも
何でも使うことができる。
東京では、何かを活かそうと思ったら
お金がかかるわけです。
田舎では、それが自然の中にいっぱいありますから。
知恵があればできる。

4 都会の知恵を探る潜伏期。
糸井 結局、価値は
人がつくれないものにありますからね。
横石 それがいちばん大切。
それが田舎にはあるんですね。
糸井 横石さんはこの事業をはじめるにあたって
各地の料亭を巡ったり
とにかく体を張った調査をなさいましたね。
いわゆる「都会の知恵」を探る作業。
横石 ええ。何年間も家にお金を1円も入れずに
すべてを料亭通いに使ってしまいました。
がむしゃら、ひたすらに、
とにかく知りたかったんです。
それを許してくれた、ほんま、
かみさんのおかげです。
食べ過ぎで痛風になって、体が半分痺れて
歩けなくなったときもありました。
車いすに乗って
料亭に行ったこともあります。
山田 それは‥‥命をかけた調査ですね。
横石 料理人の方に、やっと誘ってもらえて
いっしょにお酒を飲みに行ったりして、
あの世界のしくみと厳しさが
身にしみてよくわかりました。
そりゃ、もう、厳しかった。
でも、なんとかして
「いろどり」をやりたい気持ちがあったから、
そこであきらめようとは思わなかったです。
自分が知識を得ていけばいくほど
やっぱり「いろどり」の葉っぱは、
売れるようになりましたから。
ぼく自身が、どんどん
葉っぱの使われる「シーン」が
わかるようになったんです。
どのお皿に
どういう葉っぱが要るのかもわかります。
どういう場面で必要なのかもわかります。

4 都会の知恵を探る潜伏期。

(つづきます!)
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2006-10-16-MON

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