『言いまつがい』装丁伝説!
あのへんな本をつくった人たち。
祖父江慎×しりあがり寿×糸井重里

第2回 もうね、浮世絵ですよね。

糸井 この本って、
オブジェですよね、ある意味。
しりあがり そうですよね。うん。
祖父江 んー、オブジェっていうと、
なんか、偉そうな感じがする‥‥。
糸井 オブジェって言わないでほしい?
祖父江 うん‥‥。
糸井 でも、これ、斜めにするのだって、
機械でできないから、
手でやってるんでしょ?
── 職人さんが機械に
1冊ずつ手差ししてました。
祖父江 あっ、そうだったの?
糸井 中表紙のところの穴もね、
真ん丸なら機械でいいんだって。
でも、こんな形してるんで(笑)、
手作業で対応するしかないんだって。
祖父江 そうだったのかー。
しりあがり へえ〜。
糸井 しかもそれが、
夫婦でやってくださってる。
しりあがり 夫婦で(笑)。
祖父江 じゃ、この本はどっちがやったのかな?
ダンナさんかな? 奥さんかな?
── ええと、ダンナさんが、こう、
穴をあける機械を調整して、
中表紙となる紙を1枚ずつ手差しして、
で、ガコン!ガコン!って
型を抜いたヤツを、
奥さんがこう、パコン!パコン!と
抜き落としていくんです。
祖父江 うわっ! すっごーい!
共同作業なんだ。
糸井 もうね、浮世絵ですよね(笑)。
── 思った以上に手作業でしたね、
いろんな工程が。
祖父江 申しわけないねぇ。
‥‥途中でもう、穴、なくても、
よかったかな?
とか、チラッと思ったけど、
できあがってみると、
あけてよかったかもね。
糸井 うん。あの穴はなくてもいいか、
ってところまではいったんだけど、
やっぱりあけたい(笑)。
祖父江 あけちゃったねー。
いくところまでいっちゃったねー。
‥‥じゃあ、この扉の紙は、
1枚1枚、その夫婦が触ってるんだね。
糸井 そうそうそうそう。
だから、サイン入りみたいなもんよね。
しりあがり あ〜、夫婦の(笑)。
どんな人たちなんだろうね。
祖父江 若い夫婦ですか?
── いえ、50代後半ぐらいでしょうか。
で、20代前半の息子さんがいらして、
快活に説明してくださったんですが。
祖父江 あー。息子さんがいるんだ。
しりあがり 20代前半じゃあ、こういう穴は無理かもね。
糸井 まだまだだね。うん。
祖父江 そうだったのかー。
糸井 そうだったのだー。
 
祖父江 やってみると
レイアウト作業もたいへんでね。
いっしょにやったスタッフの柳谷が
「これ、版下どうやって切るんですか?」
とか質問してきたりして。
ゆがんだ版下
つくんなきゃでしたよ(笑)。
しりあがり そっか、そっか(笑)。
糸井 祖父江さんに苦労したって言われると、
なんかすっごく感動するなー。
あと、ここの、本の背のところ、
上下が足りてないのはなんで?
祖父江 あ、これはね、
結果的におもしろかったけど、
あの、最初からの意図じゃないんですよ。
なぜこうなっているかというと、
断裁のときにここに糊があると、
乾いた糊が割れちゃうんですよ。
ナナメ断裁なら、徐々に力が加わるから
こんなにしなくていいんですけど、
この本の場合、型抜きなんで、
真上からまっすぐ
カッターを入れるんです。
一気に力が加わると、
背の部分の紙がシワシワッてなって、
ガチャゴチョガチャッてなるんで、
そこをあらかじめ足りなくしておいて、
シワシワになるのを
避けるっていう技を使ってるわけです。
糸井 こうしないとクシャッてなるわけだ。
しりあがり あ〜。必然的なんですね。
じゃ、これは今後、
一般的になるかもしれないんだ。
あ、なんないか(笑)。
こんな形の本が一般的にならないもん。
祖父江 でも、これ、いいですね。
本体の折が上と下からチラリと見えてて。
しりあがり うん、なんかね(笑)。
糸井 なんかブラシっぽいよね。
祖父江 ね。本棚の掃除とかもできそうで、
いいですよね。
アゴヒゲみたいにも見えるね。
糸井 ヒゲとかブラシ、要するに、
あの、毛のものを感じるよね。
祖父江 でも、せっかく中が見えるんだったら、
ここにちょっとした遊びを
つけ加えておけばよかったな(笑)。
糸井 まだ言うか(笑)!
(続きます!)

2004-02-18-WED

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