糸井 飯島さんにしてみれば、
それ(できたての料理を、撮影で出すこと)は
普通、飯島さんがやってることなんだよね。
『かもめ食堂』で
やったことをやってるんですか?
飯島 そうですね。
私、先生がCMや映画をやってたじゃないですか。
CMとかだと、現場では
熱くなく冷めてなく
ちょうどいいのを出すんです。
それも裏でラップを外して
持ってっちゃだめなんですよ。
熱々のものを作ってラップしながら、
目の前で開けてあげて、
ああ、これは今新しいものでっていう、
安心感みたいなものをこめるんです。
サランラップは外してってもいいんですけど、
どういう状態になってたかとかも
心配になられたら悪いなぁと。
CMとかではずっとそういう気を遣うことで、
その延長ですよね。
やっぱり商品が料理だったりするので。
糸井 そうですね。
別の道を歩んでた人が
『深夜食堂』で出会ったわけよね。
小林 うん。
糸井 食べ物っていうのは単に小道具で、
極端に言えば蝋細工でも
できるんだったらいいよっていうような
ところでいたわけですよね、いわば?
小林 日本のドラマ系統の時間軸でいえば、
小津さんは本物を出したっていいますから。
ですから、その当時の、
だから何年前の映画の話ですかね?
今からいったら50年とか。
飯島 そうですよね。
小林 それぐらいまではそういう伝統はあったんですよ。
だけど、どこかで効率とかが大事になった。
制作サイドもたぶん言われると思うんですよ、
「飯島さん、そこまで金かかりすぎるの
 やめてください」って、今は絶対言われるの。
飯島 そうなんですよ。言われたことあって、
すごいそれがストレス溜まったんですよ。
小林 そう。そういうのも絶対出てきますよ。
だって、現場は、
「それは気持ちもわかるけど、
 限られた予算でやってますから」
っていうのが絶対出て、かなり言われるはずなの。
飯島 そうなんですよ。もうカピカピになってるのに
替えさせてくれないんですよ。
湯豆腐だったんですけど、
もう表面とか飛び出して、
乾いてるのに、まだそれを食べるっていうから、
それがすごい自分にとってストレスで。
なんで替えさせてくれないんだろうって。
小林 でもね、そういうふうになってきたんですよ、
この何十年の間に。
飯島 そうですね。
糸井 うん。
小林 だから、それは誰のせいでもなくて、
自分たちでそうしてきて、
片棒担いでると思うんです。
やっぱりどこかで効率って
ものすごく要求されてきたんですよね。
それでないと作っていけないんですよ。
でもこの『深夜食堂』なんて、
もっと金がないのに。
糸井 もっとないのにやった、
っていうことがおもしろいわけよね。
飯島 そうですね。最初、
予算全部でこれだけです、と言われて(笑)。
糸井 足りないぶんは、
飯島さんがカバーしたんですか?
飯島 そう、そうですね、多少です。
糸井 ポケットの財布を出したんですか?
飯島 ポケットを振り分けて。
小林 すごいですよね。
糸井 たぶん、あのぅ、本当はさ、
役者さんにしてもさ、
自分が出るための予算っていうのの
範囲を超えたものを出さないと、
仕事に本当はならないじゃないですか。
で、それと同じことを
料理は料理でしたんでしょうね。
小林 ただね、『深夜食堂』の人は、
飯島さんもそうなんですけど、
みんな、もともとが予算がない。
要するに事情が
まず大きく横たわってたんだけれども、
美術の人も映画畑の人なんですけど、
予算なかったと思うんですよ。
だけどね、作り方がね、
そこで妥協しないんですよ。
糸井 うんうん。うん。
小林 だから、この予算に合わせて
仕事しましたっていうようなことじゃないんです。
もちろん、たくさんあったら
それに合うような、
張り切るというだけじゃなくて
緻密さはあると思うんですけど、
見てると、きちんと作ってるんですよね。
役者さんがスタジオに入ってくるでしょ?
周りのスタッフの仕事を見るでしょう?
台詞でいえば、別にこの仕事が
別の他の仕事と特段変わった
台詞の言い回ししてるとか。
糸井 それはないよね(笑)。
小林 高級だよねとか、そんなのないんですよ。
普通なんですよ。
糸井 うんうん(笑)。
小林 だけど、なんらかの緊張があって、
なんかいいものに囲まれてるっていう感じで、
たぶん、みんなが、
仕事だけはきちんとするっていう場所なの。
糸井 ああ、なんか、
本当の話でいい話が出ちゃったね。
小林 そうなんですよ。
だから、「奇跡だ」って
松重くんも言ったんです。
糸井 「ないよ」ということなんだ。
小林 ないです。これはね、
恵まれたからといってもないんですよ。
糸井 はぁ〜。
小林 でも用意して、
「これでこれだったら、こうなるよね」って言って、
なるものでもないと思いますよ。
なんか本当にころころっと転がったような
感じはしますよね。
しかも深夜枠で、
予算はもともとないところですよ。
僕は同じ時間帯で
CS放送のドラマっていうのをやったことがあるんです。
いわゆる配信をしていって、
月々1,000円貰って
ドラマを見せていくっていうような。
糸井 ああ、ああー。
小林 それにたまたま出てたんです。
それで言われたのは、
「地上波と違って予算がございません」。
で、「およそ、ギャラもすべて
半額という感じでやるんですけども」って、
まず説得されたんですよ。
糸井 まずね。うん。
小林 そのスタッフが、
『深夜食堂』の予算を聞いて
絶句したって言ってました。
糸井 はぁー(笑)!
小林 ええっ? できるの? って。
糸井 「月9(げっく)」じゃなくて、「絶句」ね。
小林 (笑)。
一同 (笑)。
糸井 はぁ〜。
小林 別の現場で話題にしてましたもん。
糸井 ウケるでしょう、やっぱり?
小林 「それは、びっくりするよね」って。
僕も具体的な数字までは知らないんだけど、
とりあえずもう極端に少ないっていうのは、
まぁ、承知してたし。
糸井 ふぅ〜ん。ふうーん。
小林 でも、みんな、やって終わったときに、
なんでしょうね? 絶対もう1回やりたいと。
糸井 やるんだ、また?
小林 やりたいって言うんです、役者は。
で、「やるんですよね、これ?
こういうのも、1回で終わらないですよね?」って。
だけど、予算がないからね。
一同 (笑)。
糸井 誰が予算持ってるんですか?
(同席したプロデューサー氏が挙手)
あなたですか? あ、そう。
いや、でも、やる方法は
考えようと思ってます。
糸井 やるんだ?
なんらかの方法で。
糸井 よく考えるとさ、
『深夜食堂』っていうタイトルだけど、
放映は深夜じゃなくたっていいんだよね?
深夜じゃないやり方だってあるんだよね、
本当はね。
それこそどこの時間でやったって
本当はいいんだよね?
小林 まぁ、それはゴールデンに
降りてくるやり方もあるんだろうけど、
そうなってくると、また──。
糸井 また違うんだ?
小林 制約が出てくるから。
糸井 そんなにあるんですか、制約って?
テレビは。
いや、僕は普段映画ばっかしなので、
初めての連ドラだったんですよ(笑)。
糸井 あ、そうなんですか(笑)!
そのおもしろさもあるんじゃない?
ルールがあるとしたら、
知ってると守りたくなっちゃうものを、
「そうだったの?」って言って
できちゃうみたいなことあるんじゃない?
小林 ゴールデンとか持ってくると、
要するに、視聴率取れるやつを
やっぱりメインに置いて、みたいな。
やりくり考えるじゃないですか。
糸井 なるほどね。ああー。
小林 深夜枠であまり見られないからといって、
ある程度自由度があったわけだから。
糸井 似たような話で、うちで
『BRUTUS』と一緒に、
「吉本隆明特集」ってやったんだ。
小林 ありましたね。
糸井 で、あれは、「やれないかな?」って
言ったのがきっかけなんだけど。
俺が言ったんだけど。
小林 ああ、はい。
糸井 で、「やりましょう」って言ってくれて。
で、「え? 本当かよ?」って、
まず俺は思ったんだけど、
「そんな心配しなくて大丈夫です。
 2月ですから」って。
「2月は、どうせ広告も
 あんまり入る時期じゃないし、
 そこにちょっとこう、
 売れない時期があるから、
 そこでやれますから、
 心配しないでください」って言われたのよ。
だけど、そうは言うものの、心配はしますよ。
小林 うん。
糸井 ね。売れないとかいうのは、
やっぱりいやじゃないですか。
小林 うん。
糸井 で、蓋開けてみたら、ものすごく売れたのよ。
小林 へぇー。
糸井 だから、深夜枠みたいな話でさぁ。
小林 うんうん。
糸井 「心配しないでください」って言って、
一所懸命やったら、
「他の号より売れました」みたいになるんだよ。
小林 そうですよね。
結果だけは、わからないですよね。
糸井 そのときにさ、なんだろうなぁ?
緊張感もあるし、伸び伸びもあるし、
晴れ舞台に光が当たってないって思ってるときの
遊び方ってあるよね?
小林 うん、うん、うん。
糸井 それはもうなんでもそうだろうなぁ。
(スタッフに)
なんでうちは『深夜食堂』の宣伝を
あんなにあの当時からしてたの?
── 飯島さんが料理を担当するっていうのは
やっぱりおもしろい話なので、
「遊びに行かせてください」なんて言って、
撮影現場に行かせていただいたんですよ。
小林 ああ、はいはいはい。そうでしたね。
糸井 そうか、そうか。
だったらよくわかるね。
飯島さんがもうメディアなんだ、うちにとっては。
── そうですね。飯島さんがやること、
なんだろう? と思って。
糸井 あぁ〜、そうか、そうか。

(つづきます)


2010-07-07-WED


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN