小林 糸井さんって、
日頃すごく気になってること、
たとえば冬場だったら部屋が冷めてて、
でも、こういうエアコンの風って
いやなんだよねって。
糸井 いやだよね。
小林 だからオイルヒーターがいいよって。
そういうものをさり気なく
紹介してるじゃないですか。
糸井 うん。
小林 で、そういえばそうだなと思って。
「カレー皿」といい、何かと、
あ、そういう人だったんだと思って。
糸井 近所のなんかこう、
風俗の案内所みたいだよね。
小林 うん。歌舞伎町の入り口に。
糸井 うん。それはそうだな。
「いい子いるはずですけどね。
 じゃあ、ちょっと探してみましょうか」
みたいな感じだよね。
それはやっぱりおもしろいからじゃない?
小林 うーん。
糸井 薫ちゃんは、俺にそう言うっていうことは、
自分ではその気配は全然ないってこと?
そのままにしちゃうっていうこと?
冷えるなぁと思っても。
小林 どうなんだろう?
もうちょっと聞いてくれたら、
そうでもないところも
あると思うんですけどね。
ただ、そんなふうに、
とりあえず試してみようとかっていうのは
あんまりないかもしれない。
もっと貧乏性だから、
ちょっとうさんくさいものには、
逆にこう、一応様子見ておこうとか。
糸井 うさんくさいものには(笑)。
小林 で、基本的にうさんくさいものに
溢れてると思うから、
そんなに効くわけねぇだろう、
みたいなのがあるんですよ。
薬でもなんでも。
糸井 うんうん。俺はうさんくさいものは、
失敗しても全然かまわないと思ってる(笑)。
うさんくさい、みたいなものを
作ってる人の心が好きなのよ。
小林 あぁー。
糸井 だから、「本当です!」って
みんなが言うようなものっていうのは、
それはだから、本物を愛でる人たちがさ、
愛してるじゃない、充分じゃない?
だけど、そこにたどり着かないところに
なんか人がいるじゃない、いっぱい?
ところで、あなた、
今までのゲストの中で
一番「おいしい」って言わないねぇ。
一同 (笑)。
小林 俺さ、まとめて言おうと思ったんですよ。
糸井 そう?
おいしいね。まずは。
小林 うん。僕ね、あれなんですよね、
「何が食べたいですか」
って言われたんで、
大人のカレーって答えたんです。
スパイシーというか、
お母さんのカレーっていう方向じゃなくて。
糸井 うん、うん。
小林 あと、ロールキャベツって浮かんだんですよ。
糸井 ほぉ、ほぉ、ほぉ、ほぉ。
小林 別に子ども時代に
ロールキャベツ食べたかったわけじゃないし、
ロールキャベツにまつわる
話があるわけでもないんですけど、
たまたまサンクトペテルブルクに
寒い時期に行って帰ってきて。
糸井 サンクトペテルブルク? うん。
小林 向こうはやっぱりスープ系の料理がすごく多くて。
もしかしたら、日本で
ロールキャベツっていわれてるものも、
本来はこの辺りの、
ロシアの料理だったんじゃないか、
っていう話がちょっと出たんですよ。
調べたら全然そうでもなかったんだけど、
それで、ロールキャベツが食べたいなと思って。
糸井 なるほど、なるほど。
おいしいよ、飯島さんのカレー。
あのぅ、料理人に対して失礼だと思いつつ、
僕が自分で作ってる
カレーのスパイスがあるんですよ。
小林 「ほぼ日」で売ってるの?
糸井 売ってないよ。
自分だけで使ってるスパイス。
それを、飯島さんにあげたんだ。
もしかしたらちょっと使ってくれるかも
しれないよ。
小林 それは自分で調合したの?
糸井 そう、自分で調合してるの。
小林 すごい話じゃないですか。自分で調合するなんて。
カレースパイスを調合するって、
普通、あのぅ、
どんなバツイチの男でもやらないですよ。
一同 (笑)。
糸井 すごくないんだってば。
ほら、匂いかいでみて。
たぶん好みだと思う。
小林 (嗅ぐ)ああ。はぁ、はぁ。
これ、自分で買ってきて混ぜて?
糸井 そう、葉っぱ状態で買ってきて。
悪くないでしょ?
小林 オリジナルを作ってるわけね?
糸井 うん。
小林 そういうことする人、そんな、いないよね。
糸井 いや、カレー好きはいる。
小林 いや、そんなことするバツイチの男。
カレーのスパイスは自分で持ち歩いてる、
とかっていう人なかなかいないですよ。
糸井 持ち歩いてはいないよ!
飯島さんにあげようと、
家から持ってきたんだよ!
一同 (爆笑)。
糸井 持ち歩いてはいないよー。
小林 そうか、そうか。
糸井 あのぅ、なんでさ、
カレーについてみんな、
ああだこうだ言ってるんだろうなって
興味あるじゃない。
小林 あぁー。
糸井 ラーメンもカレーも、
とにかくみんな語るじゃない?
小林 うん。
糸井 で、俺はその語る中には
案外入ってないんだよ。
小林 うーん。
糸井 その輪にはいないんだよ。
だけど、どういうのがうまいっていうのかな?
とか考えると、この方向かこの方向かって、
なんかやってみたくなる、
実験したくなるんだよ。
で、一時はすべてスパイスからつくるっていう
ところに行ったんだけど、
今はグルーッと回って、
市販のカレールーに、
自作のスパイスを足すだけっていう
人になったの、今。
小林 はぁー。それは。
糸井 根本的にインドのようにやるのは
俺にとっては、おいしくないな、
って思って。
そう。だから、お母さんが作ってる
カレーでもいいから、
自分で調合したスパイスを
最後に放り込むんだよ。
必ずしも日本人って、
インドの人が作ったカレーが
おいしいとは限らないんだよね。
小林 そうですよね。
日本に入ってきたものは全部そうでしょう?
糸井 インド人も日本でカレー食べて
「これはうまい」って言うらしいからね。
そういうものらしいんだよ(笑)。
小林 カツレツとかコロッケとかも、
なんかそんな気がするよね。
本場よりもなんか日本のほうが。
糸井 僕は、カレーについては、
東京カリー番長っていうやつらがいて、
僕の誕生日の日に会社に来てくれて、
市販のルーを使っての
カレー食べ比べパーティーをやってくれたんだ。
小林 食べ比べ?
糸井 「これは『こくまろ』です」とか。
小林 はぁ、はぁ。
糸井 A、B、C、D、Eみたいに。
すごい種類あったよね?
── 6種類ぐらいありましたっけね。
糸井 うん。で、「全部ご家庭で再現できる
市販のカレールーを使ったカレーです」
って言うんだけど、なんとうまくて。
で、俺はこれが一番好きだっていうのが
ハウスバーモントカレーだった(笑)。
小林 え? それは工夫でスパイスを入れてる?
糸井 工夫ある。ちょっとだけ入れてたの。
インドアメリカン貿易商会っていうところの
ガラムマサラを入れたの、最後に。
で、重要なのは何かっていったら、
箱に書いてある通りにやることだった。
小林 ああ、じゃあ、我々はちょっとずつ、
ちゃんとやってないわけですね?
糸井 そう、でたらめをしてる。
小林 ああー。
糸井 で、一番重要なのはなんだったかっていうと、
それは『ためしてガッテン』の
要素を足すんだけど、
鍋から下ろして、
温度をちょっと下げたところへ
カレールーを入れるっていうこと。
これが一番重要だった。
小林 あっ、グツグツはだめ?
糸井 うん。だめ。
小林 ああー。
糸井 そこで溶かしてから。
グツグツ煮るの、もう一回。
小林 へぇー。
糸井 飯島さんの料理って全部そうなんだけど、
ここ普通やらないんでしょうね、
っていうところを結構真面目にやると、
ものすごくおいしくなって。
『ためしてガッテン』のカレー特集では、
料理に腕に覚えのあるおばさんたちと、
初心者のお姉さんたちとが一緒にやったら、
初心者のカレーが一番おいしかったの。
それは何かっていったら、
箱に書いてある通りにやったやつだったんだ。
小林 ふぅーーん。
糸井 俺はそれを見て、
今までインド風に近づこうとしたのは、
全部俺、馬鹿だったなと思って。
小林 ああ、ああ。
糸井 これ、こんなに
おいしいじゃないか! と思って。
小林 飯島さんの料理って
基本的にそういう感じがしません?
糸井 あるねぇ。
あの、なんだったんだろう、コツは?
みたいなところを、この人は科学者のように。
小林 意外と「隠し味」はないんですよね?
実はこれを入れたからおいしいんですよ、
的なものがまったくないんですよ。
糸井 そうそう。特別なことじゃないんですよね。
小林 きちんと書かれてる通りやるみたいな。
飯島 (料理を運んでくる)
ロールキャベツです。
小林 おぉ!
糸井 わぁ!

(つづく)


2010-06-28-MON


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN