飯島食堂へようこそ。天海祐希さんと、
副菜ごはん。

写真:小川拓洋

その8宝塚時代の自分に会えたら。

天海
剣幸(つるぎ・みゆき)さんが、
私が下級生で入った時の月組のトップさんだったんです。
その方に、私が大抜擢をされた時に、
「ゆりは、やってもやらなくても言われる。
だったら、あとの人のためになるほうをやったほうがいい」

っておっしゃられたんです。
ああ、私はやってもやらなくても言われるんだ‥‥。
「どうせあんたは、やってもやらんでも言われんねんから、
あとの人のためになるほうがいいよ」って。

私はほんとにそういうふうに、
とてもいい先輩に恵まれて、
いまだに仲良くしていただいてるんです。
それから──衣裳の話ですけれど、
すごくグワーって飾りの付いた衣装が、
すごく恥ずかしかったんですよ、私。
糸井
(役柄としてじゃなく)実際に心が恥ずかしかったの?
天海
「こんなにしてくれなくて大丈夫、
もう十分、真ん中にいさせてもらって目立ってるから、
ここまでは、私はいらない、
どうか、周りの方にしてください」

っていうことですね。
私、自分の個人的な要望はあんまり言わなかったです。
言えない人たちのためにいろいろ言って、
掛け合ったりとか、
もっと組をこういうふうにしてほしい、
こういう場所をこういうふうにしてほしいって言って。
だから、けっこう、歌劇団側には
「生意気だ」って思われていたみたいですけど(笑)、
周りのみんなには感謝されて。
糸井
それ、何歳ぐらいの時?
天海
トップの時だから、26、7です。
剣さんに最初に言われたのは20歳ですね。
糸井
そこの何年間かっていうのは、
いいと言われようが悪いと言われようが。
ずっと自分でやることを自分で決めていたんだね?
天海
そうです。
「歌劇団にそういうのはしきたりにない」って言われても、
「いやいやいや、私はこれでいいです」って言って。
糸井
ほんとにいいこと考えた時っていうのは、
「どうですか?」なんて言ってるようじゃダメで、
「決まってるじゃないですか」
っていうのがあるじゃない?
料理だってそうだよね。
天海
やっぱり、力強い確信は伝染すると。
「もう絶対こうだ」っていう人の周りにいる人には、
それが伝染していくんですよね。
いま糸井さんのお話を聞いて、
やっぱりそうだなと思いました。
糸井
ああ、その時のその子に会いたい。
天海
えぇっ(笑)!
糸井
自分でもちょっと会いたいでしょ?
天海
うわ、でも、私‥‥会えたら、すごく感謝します。
「あなたが頑張ってくれたから、
私、今こんなにラッキーを、もらえてるんだよ」って。
あとは、幼稚園の時の自分にも。
糸井
そうなの?
天海
「ゆりちゃん、お芝居する人になる」
って思った自分がいるから。
糸井
ああ、そうか!
天海
幼稚園のお遊戯で、先生が
「ゆりちゃんは、声が大きくてお芝居上手ね」
って言ってくれた。
たったそれだけですよ。
たったそれだけで、
「ゆりちゃんは、お芝居する人になる」って決めた。
そこからブレなかったんですね。
糸井
「声が大きくて」もいいねぇ。
天海
声が大きいだけ!
それを何を勘違いしたか
「お芝居上手なんだ」って思っちゃった。
糸井
あとは、お父さんも、
きっと影響してますよね。
天海
そうですね。父親が尺八をやってたから
私も兄と2人で、ちっちゃい時に
舞台で民謡を歌わされていました。
それに、父はとても話が上手だったので、
お友達がたくさん集まる家だったんですね、
親戚も何もかも。
飯島
いいですね。
糸井
でしょう? ここんち、理想の家なんだよ。
‥‥よくそんな楽しい家を飛び出せましたよね。
愛されてるっていうことに、
もう自信があったんでしょうね。
天海
うん‥‥、そう、いい家族だったんですけど、
私は反抗期がすごかったんです。
いまだに母親に言われます、
「あんたが一番キツかった」って。
「お父さんなんか、あんたにどう接していいか
分からないって言ってたわよ」って。
中学2、3年から、宝塚に行くまで反抗期でした。
糸井
だって、反抗するったって、することないじゃん!
天海
することないんですけど、
口をきかなかったりとかしたんですよ。
女の子1人だから、父親はどうしていいか
分からなかったんでしょうね。
糸井
反抗期があった「から」宝塚に行ったんだ。
天海
そう、家にいたくないと思って。
糸井
それは運命だね。
天海
運命ですかね。
糸井
運命だよ。
そういう、努力じゃできないようなことが
いっぱい関わるんです。
天海
奈美さんは?
飯島
料理ですか?
天海
うん。
飯島
母が調理師で、保育園で給食を作っていたので、
子どもの頃から料理を習っていました。
それに子どもの頃、
「料理を手伝うか」「掃除を手伝うか」で、
料理を手伝うと褒められたんですよ。
「おいしい」とか「うまくできた」とか。
掃除は、そんなふうに褒められませんよね。
だから、料理を手伝うようになりました。
小学生の時からです。
天海
すごい!

▲フードスタイリストとして、CM、映画、テレビドラマ、
「ほぼ日」のようなインターネットや雑誌・書籍で活躍する飯島さん。
引っ越したばかりのあたらしいアトリエで。(写真:ほぼ日)

飯島
そして高校の時のボーイフレンドが、
調理師とか、そういう資格をとって
働くのがいいんじゃないかって言ったんです。
「あ、じゃあ、そうかな?」と、栄養士になって。
‥‥私も思うんです、料理しかできないのに、
料理で仕事が成り立って良かったなって。
糸井
そういう意味じゃさ、今、
お母さんと一緒に料理のことできてるって──。
天海
ほんとだ、ほんとだ。
ステキですよ。
飯島
ありがとうございます。
でも、実家に帰った時、
たまにはお母さんの料理を食べたいなと思っても、
「奈美のほうが上手なんだから、味付けして」
「いやだよ、お母さんの料理食べさせてよ」
みたいになるんですよ。
おかあさん
奈美がちょっと新しいもの、
私にはできないようなものを
つくってくれますからね。
糸井
おかあさんは、こういう子に育てたかった?
おかあさん
そんなことないんですよ。
そもそも、引っ込み思案だったんですよ、すごく。
保育園の時、泣いてばっかりで。
飯島
私、からだが大きいじゃないですか。
子どもの頃から大きかったので、
目立たないように生きてきたんですよ。
道を歩いてるだけで「ウドの大木」とか、
知らない人に言われたりしたんです。
天海
ありますよ。わかります。
糸井
女の子が大きいって、やっぱり大変なことなの?
飯島
大変ですよ!
天海
すごいですよ、生きにくいよ!
今でこそ、結構みんな大きいから
大丈夫なんでしょうけれど。
糸井
ヒールとか履かないんですか? ふだん。
天海
履かないですね。
飯島
履きませんよ。
天海
歩きにくいもんね。疲れちゃう。
糸井
そんなこと言わないで!
天海
アハハ。疲れちゃう!
糸井
でも、仕事の時は履きますよね。
天海
もちろん履きます。
レコード大賞の司会の時にヒールを履いたんですよ。
ドレスだったから。
そうしたらいっしょに司会をした安住紳一郎さんより、
私のほうが大きくなっちゃったんです。
安住さん、隠さずにおっしゃるんですけれど、
バランスをとるために、インソールを入れたりして、
9センチだったかな、高くしてくださって。
糸井
司会とかって、分かりやすいもんね、並ぶからね。
大きいだけでそういう仕事は少なくなるかもね。
天海
そうなんですよ。
子どもの時から大きいので、
整列も席もずっと一番後ろだし、
男の子よりも大きいから
「デカ女、デカ女」とか言われたりして‥‥。
飯島
わたしもそうです!
天海
そんなふうに過ごしてきたから、
宝塚に入ってビックリしたのが、
「身長が高いって、武器になるんだ」ってことでした。
私、男役でも女役でも良かったんですね。
そう言ったら、同期から
「なに言ってんの。あんたみたいに
背の大きい女役おれへんで!
男役しかできへんよ」って言われて、
その時に「そうか!」と思って。
「いいやん。宝塚はどうあっても男役がメインやから、
男役やったほうがええんちゃう」。
確かにそうだなと思って。その時に
「あ、身長が大きくて良かったな」って思ったんです。
初めてこの身長に感謝をしました。
そして宝塚を辞めて外に出てみると、
大きい方ばっかりじゃなかったから、
ちょっとこれはまたマズい事態が?! って、
最初の何年間かは、やっぱり気にしました。
糸井
いちから出発だ。
でも、宝塚が間にはさまったおかげで、
ものすごくいろんな「いいこと」があったんだね。
天海
ありましたね。
とても、しんどい思いもしたんですけれど、
思えば、今、それが全部活きてるなと思います。
ほんとに、ありがたかったなと思いますよ、
たいへんな思いをしたのも、
「させてもらったんだな」と思っています。
でも、今思えば、
そういうのもけっこう面白かったし、
なかなか経験できないことです。
社会に出て、精神的にキツいこととか、
体力的にキツいこととか、いろいろあるにしても、
「ま、あれよりは大丈夫でしょう」って思います。
糸井
たいへんなところにいたんだね。
さて──ずいぶん長く話したね。
きょうはたくさん食べた!
天海
ほんとう。ありがとうございました。
‥‥ああ、おいしかった!
なんてステキなお仕事だったんでしょう。
ふらっと遊びに来てもいいって
糸井さん、おっしゃるから、
またおやつ持って遊びに伺いますね。
糸井
ぜひ! ありがとうございました。
飯島
ありがとうございました、ほんとに。
天海
ごちそうさまでした。

(おわります。ご愛読ありがとうございました!)

2017-05-23-TUE

メニュー

  • ねぎぬた
  • じゃこと油揚げの炊き込みごはん(おにぎりにして)
  • おからサラダ
  • 鮭の焼き漬け
  • グラタンコロッケ

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木曜ドラマ『緊急取調室』

4/20にはじまったテレビドラマ
『緊急取調室』セカンドシーズン。
天海祐希さんは主役である
警視庁捜査一課・緊急事案対策取調室の刑事
「真壁有希子」を演じています。
ちょうどこのコンテンツの収録時、
撮影の真っ最中だった天海さん、
楽屋ばなしもたくさん聞かせてくださいました。

木曜ドラマ『緊急取調室』番組サイト

『LIFE 副菜2 もうひと皿!』

飯島奈美さんの最新刊は、
食卓にうれしい副菜を56品あつめた
かんたんなレシピ本。
副菜、と言ってますけれど、
ちゃんと「ごちそう」なのです──その意味は、
今回、天海さんと糸井重里が食べた料理を
ごらんいただければ、わかるはず!

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