ヒット一本が、
どれだけうれしいか。

イチロー選手が、言葉で、人の心を打ち抜いた!

第10回 一本のヒットが、どんなにうれしいか。

イチロー ぼくはこういう細い体だから、
割に「疲れているかも」と
思ってくれる人が多いかもしれませんが、
野球のプレーなんかでは、
簡単にやっているように
見られがちなんですよね。

でも、実はそんなことは、ぜんぜんない。
あのヒットを一本打つのに、
どれだけの時間を費やしているか。

あのヒットの一本が、
どれだけうれしいか……。

もちろん、そのそぶりは、見せないですよ。

でも、ヒット一本って、
飛びあがるぐらいにうれしいんですよ、
実は。
二〇〇三年の二〇〇本安打の
ときなんて、涙が出ましたから。
糸井 あぁ……
打てるときもある、
打てないときもある、
という程度の感情ではないんだ。
イチロー とんでもないです。
その一本を打つために、
いろんな投資をするわけですから。
自分の中で。

ヒットを打つことは、
打てば打つほど、むずかしくなるんです。


アメリカに行って、
最初の年に二四二本のヒットを打った。
MVPも取ってしまった。
そしたら、次にマークされる厳しさ
というのは、尋常じゃないんですよね。

これがたとえば、
二割八分で、ヒット一〇六本だったら、
マークもされないですよ。
そのままにしておけばいい、
って話ですから。

だけど、二四二本もヒット打ったときには、
みんな、やっぱりムキになってくる。
糸井 ナメられてたまるか、
って気持ちは、当然あるでしょうね。
イチロー 最初の年には、こんなちっちゃな、
日本から来たヤツに、打たれてたまるか、
というのはあったんですよ。

実際、彼らに最初会ったときは、
ちょっと小馬鹿にされているような感じがあった。

日米野球なんかでは、
やたらと褒めるじゃないですか。
でも、褒めた内容の通りのこと、
アイツら、ぜんぜん、
思ってないですからね……。

「アイツをオレのチームの一番でほしい」

ぜんっぜん、思ってなかった(笑)。
とんでもないヤツらですからね。

あれはそういう教育を受けているんですよ。
人はとりあえず褒めておけ、みたいな。
メディアへのマニュアルを
持っているんです。
だから、あんなのは、信用しちゃダメで。

だけど、
聞いている側にとって、ちょっと
聞き苦しいことをヤツらが言い出したら、
それは本音ですよ。
糸井 (笑)なるほど。
イチロー そしてさらにそれを超えれば、
ほんとの評価になる。
そこで称賛されれば、ホンモノですよ。
  (イチローさんへのインタビューは、
 いったん、今日で終了です。
 つづきを読みたい方は、ぴあから3月30日に発売の
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2004-04-02-FRI


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