ヒット一本が、
どれだけうれしいか。

イチロー選手が、言葉で、人の心を打ち抜いた!

第6回 どんなに頑張っても、先はないんです。

糸井 自分のことを
つきつめて見つめている
イチローさんに対しての質問として、
これはいかがなものか
という気もするんですが、
次のような質問も、来ているんです。

「イチロー選手にとって、
 野球はビジネスですか?
 正直、
 『今日はだるいな、野球行きたくねえな』
 みたいな日も、あるのですか?
 (二六歳女性)」
と……。
イチロー 行きたくない日、いっぱいありますね。

ただ、あの、
おそらく野球選手の中においては、
まだ、野球が趣味であるというような
感覚を持っているというか、
趣味という感覚のほうが強い人が、
パーセンテージでいうと多いんですよね。

もちろん、同時に
「これは仕事だ」という感覚も
持っています。
プロ選手ですし、
それで給料をもらうわけですから、
当然持っている意識です。

でも、ほとんどの選手は、やっぱり
「野球をうまくなりたい」
という気持ちが残っているんですよね。
ただ、それが何割かは
わからないんですけど。

少なくとも、
「百パーセント仕事」
の感覚になってしまったら、もう、
自分の技術を磨こうというふうには、
なっていかないですよ。


その人は、
ある程度の給料をもらうようになったら、
それで満足してしまいます。
「これでいいや」ってならない最大の理由は、
ぼくの場合は、野球が好きだから、なんです。

野球は失敗のスポーツです。
特に、打つことに関しては。

もう、いくら、どれだけ頑張っても、
実は、先は、ないんですよ。
守ること、走ること、状況判断……
それに関しても、やっぱり
打撃と同じように、先はないんですよね。
糸井 そう思うのは、イチローさんが、
まぐれ当たりを期待するようなプレーを
していないからでしょうね。
あらゆる場面で、自分が何をすることが
最善の方法なのかを知っていて、
それをものすごい速度で
実行しているから
言えることなんだと思います。
「当たった!」なんてことは、
ないわけですよね?
イチロー それは、ゼロではないですよね。
もちろん、たまにはありますよ。
打ちたくない球を、
勝手に打っちゃうときは、あります。

アタマでは止めたいと思っているのに、
体が打てると反応しちゃって、
ヒットになるんですね。
それは、しようと思って
やっていることではないんです。
糸井 そういう「体の判断」って、
やっちゃいけないことなんですか?
イチロー それがむずかしいんですよ。
  (明日に、つづきます!)

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2004-03-29-MON


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