「ほぼ日」中年陸上部 マイナスからのランニング。
マイコース選び、 そしてはじめての皇居に臨むの巻。

トレーニング用のシューズも揃い、
結び方もちゃんとしたところで、
いよいよ走り始めるときがやってきました。
まずは自宅の近辺で走れる場所を探します。

シェフ
「ぼくは千駄ヶ谷だから、
 週末は外苑に行って走ってみようかな?」

べっかむ3
「ぼくは隅田川沿いを走ってみようと思いまーす」

おお、ふたりとも、
いいランニングコースがあるところに住んでますね!
まず外苑といえば、あの村上春樹さん(!)や
瀬古利彦さん(!!)も走っていた名コースで
通称「瀬古ロード」があるところですよ。
そして隅田川沿いも走りやすいコースとして有名です。
それぞれ、そのコースを「マイコース」にするのは大賛成。
ただ、走り始める前に、やっぱり、
いちどどこかで一緒に走ってみませんか。

シェフ
「え‥‥。にしもっちゃん、すげえ速いんでしょ」

べっかむ3
「ついていけるわけ、ないよね‥‥」

いやいや、大丈夫です。
ふたりのペースにあわせて、
うんとゆっくり走りながら、
いろいろとお教えしたいことがあるんですよ。

シェフ
「それって会社の廊下とかじゃダメ?」

ダメですってば(笑)。
それより、最初のランは
日本一の有名なランニングコースに行きましょうよ。

べっかむ3
「え‥‥、まさか、それって」

そうです、皇居一周コースです。

ふたり:
「ひえーっ!」

 

マイコースは、いくつか持とう。

2人とも、自宅近所に走りやすいコースが
あるのはいいことなんですが、
毎日、同じコースを走っていると、
「必ず飽きる」んです。
絶対飽きる。こればっかりはどうしようもない。
で、飽きると、「やめちゃう」ことがある。
ぼくとしてはそれだけは避けたいのです。
飽きずに走ってもらいたい。
ふたりの「ホーム」としてのマイコースに加えて
いくつか、「あそこを走ってみようかな」と
知っているランニングコースを
もっておいたほうがいいと思うんです。
そこで、まずは皇居を走ることによって、
マイコースに皇居が加わるでしょ?

べっかむ3
「いや、まあ、そうだけど‥‥
 なんだかすごく敷居が高い感じがして」

シェフ
「すごく混んでるっていうし、
 速い人ばっかりで怖くない?」

大丈夫ですよ、ちゃんとサポートしますし
皇居ランのマナーもお伝えします。

べっかむ3
「ちなみににしもっちゃんの
 マイコースはどんな感じなの?」

ぼくは走る距離やスピード、
その日のトレーニングテーマ、
そしてもちろん気分転換も兼ねていくつか使い分けてます。
ぼくの家の近所には
砧公園という大きな公園があるのですが、
そこには1.7kmのサイクリングコースと
3kmの芝生や土のクロスカントリーコース。
その隣にある大蔵運動公園の1kmのコースと
大蔵運動公園の中にある陸上トラックがあります。
そして、ちょっと離れたところにある
馬事公苑の外周1.6kmのコースに、
駒澤公園の1周2.1kmのランニングコース、
そして、多摩川の河川敷。
ここは30kmをまとめて走るときに使います。

シェフ
「シェーッ!」

リアクションが古いですよ。

シェフ
「そ、そんなにコースがないとダメなの?」

ダメってことはないですけど、
そのほうが楽しいんです。
探せばいろいろあるんですよ。
武井さんの家からも外苑だけでなく
東宮御所あたりも有名なコースだし、
べっかむ3の隅田川沿いも
対岸を走るだけで別コースになりますから。

 

なぜ皇居って人気があるの?

べっかむ3
「でもさ、そのなかでも日本一の人気なのが
 皇居って言うじゃない?
 どうして、そんなに人気があるんだろ」

皇居は1周が5kmあります。
信号にもひっかからずに5km走れる
東京のコースって、なかなかないんですよ。

シェフ
「5km‥‥長い‥‥」

いや、その5kmという距離が絶妙なんです。
例えば、1周1.7kmの
周回コースで5km走ろうと思えば
3周でだいたい5kmですよね。
皇居は1周で5km。
一度にまとまった距離も走れるし、
ペースやタイムを管理をするにも
5、10、15、20km、
という区切りはとても便利なんです。
それに皇居の周りには
着替えスペースにロッカー、
シャワーといった設備がそなわった
ランニングステーションがたくさんあって、
仕事終わりで走るにもすごく便利なんです。

シェフ
「じゃ、にしもっちゃんも皇居はよく走るわけだ」

はい。2週間に1度くらい。
というのも、毎日、一人で走っていると
ついつい楽なペースでばかり走ってしまうんです。
たまに「ちょっと苦しいくらい」のペースで走ると、
心肺と筋肉にも刺激が入って
いいトレーニングにもなるんですよ。
皇居にはワイナイナ選手のような
オリンピックメダリストから
走り始めたばかりの市民ランナーまで
いろんなランナーが走っているので
自分にちょうどいいペースで走っている人を
見つけやすいんですよ。
「あのペースは自分にはちょっときついかも」
というくらいのスピードのランナーを見つけたら
ぴったり後ろにつく‥‥と迷惑ですから、
10mくらい離れてその人を目標にして走るんです。
「ちょっときついかな」というスピードで
2周(10km)走れたら自信にもなりますし、
すごくいいトレーニングにもなりますよ。

シェフ
「やだなあ‥‥苦しいの嫌いだ‥‥」

べっかむ3
「ぼくらはそこまでのトレーニングは必要ないけど」

そうですね、まだまだ必要じゃないですね。
だから、うーんとのんびり走りましょうよ。

シェフ
「うん‥‥で、その、皇居を走るマナーって?」

皇居外周はランニング専用コースではなく
あくまでも歩道です。
だから「ルール」と言うほどの
厳密な決まりはないんですが、それでもやっぱり
ランナー同士の暗黙の了解のようなものがあります。
まず皇居に限らず周回コースは
「反時計回り」で走ること。
皇居の場合、お堀を左に見て走ります。
そうじゃないと、ぶつかるし、
みんなが好き勝手に走ったら
歩行者も歩けなくなってしまう。
そして、追い抜く時は
「後ろ通ります」とか「右から抜きます」と
一声かけて右から抜く。
そして、「ありがとうございます」とお礼も忘れずに。

シェフ
「あのさ、にしもっちゃんは
 そんなことってどこで教わったの?
 本にはそんなこと書いてないでしょ」

これは箱根駅伝の強豪、駒澤大学の選手たちに
学んだんですよ。
彼ら、よく地元の同じコースを走ってるんですけど、
ぼくを抜いていくときにそうやっているんです。
そういうふうに声をかけてもらうと気分もいいし、
いいことはマネすればいいでしょ。
なので、「自分はゆっくり走ってるな」
と思ったら、なるべく道の左側を走るようにして、
後ろから抜きやすいようにしておくことが必要です。
そして、後ろから人が来ていることに
気付きやすくするために
ipodなどの音量も少し下げておいて
後ろの気配や声も聞こえるようにしておく。
これはレースでもそうなのですが、
ipodをつけたまま、道のど真ん中を
ゆっくり走る人がいるために、
後ろがつかえて渋滞になる、
というケースがよくあるんです。

そして、友達と一緒に走るときでも2列まで。
道幅いっぱいに走ることはランナーだけでなく、
歩行者にも迷惑ですからやめたほうがいいですね。
そういうことが、皇居を一度走るとわかるので、
とってもいいんですよ。
でも、ファーストランに皇居を選ぶのは
マナーを学ぶだけじゃないんです。
いいフォームで走りたければ皇居が最適なんです。

シェフ
「ふうむ‥‥わっかりました。走ってみようか」

べっかむ3
「ちょっと不安だけど、いっしょに走りましょう」

ということで、次回は実際に
皇居を走ってみたレポートです。
あのでっかいゲストが再登場しますよー!

 
西本のセンパイコラム

この週末には箱根駅伝の予選会も行われ、
千葉ではアクアマリンマラソンと、
本格的なロードレースのシーズンがはじまりました。
ぼくも今シーズン初レースは
昨日、荒川で行われたタートルマラソン。
気温があがった暑い中、
ハーフマラソンを走ってきました。

走り始めたばかりの方には
ハードルが高いかもしれないハーフマラソンですが、
フルマラソンのトレーニングの一環として走るには
もってこいなんですよ。
ぼくはこの冬にフルマラソンに出るつもりなので、
11月中旬にもう一本ハーフを走る予定です。
そして、これから気温が低くなっていくにつれ
タイムがどんどんのびてくる。
練習の成果が現れてくるのもこの時期。
さっき、武井さんに
「ハーフ走りましたー」とメールしたら
「ぼくも90分走ったよー」と返事がきました。
初レースとなる湘南国際マラソンに向けて
順調にトレーニングを積んでいるようです。
湘南国際マラソンは、
ぼくもフルマラソンを2回走ったことがありますが、
箱根駅伝の3区と同じ風光明媚なコースを走れるし、
東京からも行きやすいということもあって
大人気のマラソン大会。
あらためて武井さんとべっかむ3にも
教えておくつもりなんですが、
この湘南国際マラソンの攻略ポイントは
●後半まで脚をためておけ。
●潮風に注意。

の2つ。
フラットなコースと言われる湘南国際マラソンですが、
最後にとんでもない坂が3カ所あります。
ほとんどのランナーが坂で脚が動かなくなってしまい
心ならずも歩くことになっちゃうのです。
ぼくも最初のとき、猫ひろし選手に最後の坂で
「ニャー」と抜かれました。
そして、汗が出ているようにみえて
潮風で乾いているので思った以上に発汗している。
さらに、汗の塩を潮風の塩が重なって
顔やカラダが塩でカピカピに。
なので、給水の際は水を飲むだけでなく、
水で顔を洗うこともお忘れなく!
給水といえばね‥‥。
と、ここもお話したいことはたくさんあるので
また今度お伝えいたします。

 
シェフの初心者コラム

思えば、はじめて皇居を走ったのは、約半年前。
皇居を走ったのもはじめてでしたが、
人生ではじめて長距離を走ったのが、そのときでした。
中学のときの体力測定の「1500m持久走」以来、
こころの奥で、ずーっとトラウマになってる長距離。
1500どころでない、5000mの初皇居ランニングは、
みんなのハイペースな走りに、まったくついていけず、
1kmを軽く走っただけで、もう両足の裏が悲鳴を上げ、
1周の5kmが、どれだけ遠かったことか‥‥。

そんな、へなちょこランナーの自分が、なんと!
先日の『Number Do』との合同皇居練習会で、
皇居2周の約10km、無事、完走いたしました!
ま、練習なんですけど、これは、うれしかったなー。
この半年間、朝早く起き、自宅近くの川沿いの道を、
「1km7分のペースでずっと行けたら、走れますよ」、
という、西本センパイのことばを信じて続けてきた、
LSD(ロング・スロー・ディスタンス)のランニング。
この夏、「Nike+」のアプリを入れたiPhone片手に、
なんど、隅田川をのぼったりくだったりしたことか。

ある日は、子どもの幼稚園の先生に目撃されたり、
またある日は、PTAのママさんに、近所の公園で、
変な格好で準備運動してる姿を見られたりしながら、
ひとりでコツコツとランニングを続けているうちに、
いつしか、2km、3km、5kmと、休憩せずに、
最後まで走れるようになり、ついに、
こないだの、10km完走につながったのでした。

練習で走れただけで、こんなにうれしいんだったら、
いわんや、次の『湘南国際マラソン』をや、です。
10kmは、いつものペースだと、1時間10分の距離。
もしかしたら、Ust中継する、というウワサも
一部ながれていますが、シェフと一緒に、気にせず、
また最後まで走れるよう、なんとか、がむばります。

2012-10-22-MON
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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN