第11回 もう照れはなくなりました。

細川 この間、小学校のときに描いた絵が
出てきたんですよ。
父が本当に成績表まで全部取ってるぐらい
几帳面な人ですから、それが出てきまして。
その小学校のときの絵を見たら
なかなか上手なんですよね。
自分で言うのもどうかと思うけど。
やっぱり子供の頃はみんな誰でも
素直に「絵を描いてみろ」と言われたら
描いてたわけだから、
私は絵を始めるときにそう思いました。
糸井 大人になったら、そのときとは違いますか。
細川 ええ、違いますね。
やっぱり照れがあって、なかなかね。
糸井 細川さんでも、それは?
細川 ええ、ありました。
ありましたけども、
今はもうなくなりました。
糸井 絵のときに一番あったんですか。
何のときに一番ありましたか?
細川 そうですね。
絵も書も同じ程度だったでしょうかね。
糸井 それはやるしかないんだよと思ったわけですね。
細川 ええ、そうです。
糸井 その意味では、
知事をおやりになってるときでも、
何々について知ってるという前提で
罠のように質問とかされてきたときに、
知らないっていうことも
駆け引きとして必要ですよね。
知ってたり、知らなかったり。
そのときには大丈夫だったんですか。
細川 ええ、わりとそれは。
それは国会のほうでもわりに
そういう質問って多いんですけど、
それはなんとかごまかして答弁してましたけども。
糸井 そうですか。なんとか。
それは恬(てん)として
恥ずかしくないんですよね。
細川 そうですね。私はわりにあっさり、
「いや、ちょっと不勉強で
 よくわかりません」と、
よく言ってました。
糸井 それが言えるだけで
ものすごく楽になりますよね。
細川 そうですね。
なんでもかんでも知ってるわけが
ありませんものでね。
でも、やっぱり一番困るのは、
糸井さんなんかもしょっちゅう
おありでしょうけど、電車の中とか駅とかで
いろんな人に捕まって、
あちらはよく知っておられるから
前から知ってるように
いろいろ言われることがありますでしょう。
それで、全然名前が思い浮かばない
ということがしょっちゅうあって。
糸井 はい、私もです。
細川 「どうも、どうも」って言うわけですけど、
「どうも、どうも」って
外国語にはない言葉ですからね、
これは便利な言葉ですよね。
そう言いながら誰だったかなというのを
それとなく、ある程度の年配以上の人だったら、
「お子さんはどうしておられますか」とか、
探りを入れる。
糸井 ヒントを探して。
細川 いい加減なことを言いながらね。
糸井 とうとうわからないというのもありますしね。
そうか。細川さんの立場だったら、
こちらからさんざん選挙のときに
お世話になった的な人も
まじることがあるわけですよね。きっと。
細川 そうですね。
「初めまして」とは、絶対言えないですものね。
糸井 言えないですね。
細川 初めてじゃないことはわかってるので。
糸井 それは僕はなくてすんでますね。
知らないって、ぎりぎり言えますね、まだ。
知らないとか、
「申し訳ないですけど、
 いつ頃にお会いしましたっけ」
というのでごまかしてますね。
細川 だけど一遍、
「いや、どうもどうも」と言ったら、
その人は熊本の人だったんですけど、
「あなた、ほんなこて、
 わしの名前ば知っとるな」
って、こう来たんですよね。
これにはまいりましたね。
「名前ば、言うてみなさい」
とこう言われたから。
これはまいりましたね(笑)。
糸井 どのシチュエーションで会ったかだけでも
わかれば楽なんですけどね。
でもだんだんと畑仕事やなんだって
言ってるときにはなくてすんだんですね。

「上の人」という言葉をよく使うけれども、
上の人というものに対して知らなすぎるゆえに、
なんかちょっとなめる傾向が、
下の人はあるんですよ(笑)。
あの展覧会からずっと思ってたことですけど、
だいぶ自分も損してきたなということを、
今日もお会いできて、
改めていろんな役割の人が
いるんだなっていうふうに思いました。
とても良かったです。
ありがとうございます。
細川 こちらこそありがとうございます。
糸井 (南)伸坊とかが付き合える人なんだから、
きっと楽なんだろうなとは思ってたんですけど。
細川 南さんと赤瀬川さんと、藤森さんで
ろくろを回しに湯河原へ来られたんですよ。
皆さん、楽しんでなんか面白いものを
いろいろつくられましてね。
今度そのうち機会がありましたら、是非
南さんや赤瀬川さんとご一緒に
お出かけくださいませ。
一昨日の夜だったかな、
ご一緒に食事をしたんですよ。
お三方とご一緒にね。
とても楽しい会でした。
糸井 いや、僕も友達のことですからあれですけど、
なんだろう、いいんですよね‥‥。
細川 いつでも本当になんの気兼ねもなく。
糸井 ある意味向上心のない人々っていう(笑)。
こんな人ばっかりになったら楽なんですけどね。
展覧会に人が行きますようにと祈っております。
細川 ありがとうございます。本当に。
糸井 僕らが200人でも300人でも
増やすお手伝いができればと思います。
たいへん楽しかったです。
ありがとうございました。
細川 本当にありがとうございました。
熊本にいらっしゃるときは、
また護光に是非ご連絡をいただいたら
喜ぶと思いますので。
(対談はここで終わりますが、
 もう1回、公園を散策しながらの
 お話を、おとどけします。
 どうぞお楽しみに!)


2010-05-28-FRI