ほめ道を往く。
「ほめられて伸びる派」のためのページ。

唐突ですが、みなさん視力はいくつですか?
え? あんまりよくない?
そういう人は、今回の「ほめ道」に
かなり励まされるかもしれません。
ずばり、テーマは「近眼」
ちなみに冒頭で明かされているとおり、
フランソワーズさんも目が悪いそうです。



第三十三回
近眼をほめる。
〜「近眼」さんという価値を語る〜

実はわたし、すっごく「目」が悪いの。
「左0.02」「右0.1」
左右の差が驚異的!!

ここまで左右の視力に差があると
めがねを作る時、レンズの厚みに
大きく違いが出てしまうので
「見た目に許せる範囲」で度数を抑えて
わたしのめがねは作ってもらっています。

だから、正直「見え方」はいまひとつ。

めがねのフレームもなるべくオシャレなものに
してるんだけど、分厚いレンズだとどうしても
目がちっちゃくなって、かわいくないのよね。
デザイン以前の問題よ。

ひみつのアッコちゃんの「チカちゃん」
みたいになるでしょ?
わかる?

で、コンタクトレンズも作っているわけ。
こっちだと、「分厚さ」を気にせず
かなり「度」を上げることが出来ます。
だから、コンタクトのときはよ〜〜く見えるの!!

コンタクトを初めて使ったのは高校生の時。
その時の衝撃は今でもよーく憶えています!

「こんなに、モノってはっきりした形と色だったんだ!!」
って、びっくりしたんだから!!

横断歩道の向う側で待ってる人の表情まで
はっきり見えるし
会話してる人の肌の毛穴まで見える!!

で、わたしはちょっと外に出るのが辛くなったの〜。
だって、「見え過ぎ」よ〜〜!!
「見え過ぎちゃって困るの」。

もちろん、すぐに慣れましたけど。

でね、最近は家にいる時はずっと「めがね」なの。
でも、「お出かけ」のときは「コンタクト」。

やっぱ、よく見えるんだーー、これが!

で、いつもショックなことがあります。

それは家の中の「汚れ」!!

毎日、ちゃんとお掃除してるつもりなのに
コンタクトにした途端、あちこちの汚れが
すごくよく見えちゃって‥‥。
「うわ〜〜、ここすごい汚れてる!!」と
思うんだけど、なにせ「お出かけ」前なわけだから
すぐに掃除に取り掛かれないのよねー。
だから、毎度毎度、この繰り返し。

で、家族を見ると、子どもが思っていたより
大きいのよーー。
「うわー、あんた、こんなに太ってたの?」
みたいな感じ。
2匹の犬もひとまわり大きく見えるから
「こりゃあ、えさ、やりすぎだよ!」
とか。
わたしが思ってたことと「真実」の間に
信じられないような「ギャップ」があるの!!

もちろん、「いつまでもステキなダーリン♪」って
思ってた旦那も「うわー、おじさんじゃん!」
だし、
「いつまでもかわいい、あたし♪」
だって
「げー、おばちゃんじゃん!」
なわけよ。

ようするに「霧が晴れた」ってやつ。

で、またしても世紀の大発見。

これさー、わたしの視力があと0.1良ければ
今のわたしはいなかったね。
「感じ方」とか「生き方」として。
ようするに「クレオパトラ」の気持ちがわかったわけよ。

「私の鼻があと1センチ低かったら世界は変わっていた」
とかなんとか、言ったでしょ? あの人。

それで
「あと10センチ背が高ければ人生は変わってた」って
よく言うけど、でも「視力」が一番言えてます、絶対。

世の中、みんな同じものが見えてるわけじゃないね。
もちろん「心」で見るものはひとりひとり当然違うけど
そうじゃなくて固体。
例えば、同じ「イカ」を見ても
ひとりひとり「イカ」の色も形も
微妙に違って見えてるってこと。

だから、世の中はうまくいってるのよ!!

そりゃ、「見たい」時期もあった。確かに。
でも、今のわたしは「近眼っていいじゃん」って
思うようになったの。
「見えればいいってもんじゃないのよ!!」

「リアルに生きる」だけが人生じゃない!!
大江千里さんの言ってることも
もちろん正しいけど
どこか「リアルに生きれない」宿命の
「近眼」さんがいてこそ、世の中に
「不思議ゾーン」というのが生まれるのです!!
まさに「トワイライトゾーン」!!

これって、けっこう重要でしょ?
世界に「深み」が増すでしょ?

さあ、「近眼」さん!
もっと自分に自信を持ちましょう!!

ちょっと見間違えてるくらいがちょうどいいのよ!
自分に都合よく生きていきましょう!!

「本当は違うのかしら?」なんてビクビクする必要は
もう、ないのよ!!
大きな顔で「人違い」や「読み間違い」をして
生きて行こうではありませんか!!

「近眼」さんというのは
「そこにないものを見る」という特殊な能力が
備わってるということなのですから!!

その上、「近眼」さんは
「よくわからない」ことに慣れてるから
「まあ、いいや」の精神が育まれています。
筋金入りの「楽天家」なのよ!
悪口だって聞こえなかったらいいじゃない?
それと同じで
見えてなかったら気にならないの!
見えてる人には信じられないだろうけど
見えないわたしには関係ないのさ!
これって、実は「能力」よ!

こりゃあ、「プリンプリン物語」の
「火星人」くらいすごいですよ!
「ルルルルル! 予感がします」って耳を回すのと
同じレベルだって、言ってるのよ!!
嬉しいでしょ!

「近眼」さんは「目が澄んでる」ともいいますし
めがねで「チカちゃん」になってたって
外せば、「アッコちゃん」なんだからさ!
このギャップが素晴らしいのよ!!
これを「テクマクマヤコン」と言います!

うちは夫婦そろって「近眼」なので
家庭の中は「テクマクマヤコン」的な
要素で溢れています。

もう、正直、何が「真実」なのか
わかりませんが、そんな人生もいいさ!
お互いに間違えだらけでも、全然気にならないもん!
こういう結婚を「テクマクマヤ婚」と言います!
これが今、世界のはじっこのほうで小さなムーブメントに
なりつつあります!! たぶん!!

さあ、「近眼」さん! 自信を持ちましょう!
「テクマクマヤコン」パワーを発揮してください!!

君たちの世界征服の日は近い!!





なるほどなるほどと目からウロコが落ちました。
たしかに突然見えすぎると、
よくないものも見えてしまいますよね。

ちなみに、darlingこと糸井重里は、
去年禁煙したとき、まわりの人から、
「食べ物が美味しくなったでしょう?」
とさんざん言われ、
「たしかに美味いものは美味くなったが、
 まずいものはよりまずくなった!」と
じつにまっとうな返事をしていました。
そのときも、なるほどなあ、と思いましたっけ。

さりげなく「イカ」がほめられているのも、
「イカ」ファンとしてはうれしいところ。
それでは、また来週。

イラスト:さとうみどり

2004-05-25-TUE


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