へなちょこ雑貨店。
一寸の虫の五分のたましい物語。

第7回 若い女性だけで店を借りるのは難しい

毎度ご来店ありがとうございます。

この連載のプロローグで、
「店舗経営を目指すアナタに送る
 コンテンツではありません」、と
大いばりで明言させていただきました。
オオタケとオガワは、こう見えて
けっこう約束は守るタチなので、
実際その通りのへなちょこ連載となっておりますのは、
ご承知の通りでございます。
んが、今日はひょっとしたら、
ためになってしまうかも、しれません。

オオタケとオガワ、約束は守るが、ウソもつく。

よそ様のお店の閉店後に、店舗前のスペースを借りて、
とりあえずの営業を始めようか、と思いついたわたしたち。
そうは言っても、将来的には店を持ちたい、
いくら資金があれば可能なのかを知るために、
不動産屋さんを訪ねました。

お肌の曲り角は過ぎていても、
25才じゃ「社会的小娘」として
門前払いを食うかもしれない、という不安が9割と、
あわよくば「お客さん、運がいい!
今いい物件出てるんだよー!」という声が聞けるかも、
なんてのんきな気持ちが1割。
訪ねた先はわたしが自分の部屋を借りた時にお世話になった
西新宿の不動産屋さん。
担当の女性は、1年半ぶりの再会にもかかわらず、
わたしを覚えていてくれて、これぞ、プロ!とまず感激。
そこで緊張しつつも切り出しました。

「2人で店を開きたいんですけど、どんなもんでしょう?」

その女性の「まさか、本気?」という気持ちは、
一瞬の「間」に表れていましたが、
すぐに膨大な店舗物件の資料を持ってきてくれました。
なんていうか、その時の空気が忘れられません。
きっとその時、不動産屋さんにとっては
「客」にはなりそうもない、という
判断をされたと思うんです。
でも、資料を見せてくださった、
その気持ちが嬉しかったです。

店舗物件の量はほんとうにたくさんありました。
厚さ8センチほどのバインダー3冊分。
その中で「居抜き」という聞き慣れないことばが
目につきます。
居抜きというのは、もとは美容院や飲食店だった店舗で、
イスやテーブルなどの備品や什器などが
そのままになっている状態をいいます。
つまり、美容院や飲食店を
「スグ始めたい」という人向きの物件。
でもこれらの備品や什器は
ローンを組んでの買い取りになることが多いそうです。
不要な場合でも「いらない」では済まず、
廃棄費用を負担することになるでしょう。
言うまでもなく、わたしたたちにとっては、
これらの物件は不向きです。
やはり、不況のせいで
このようなかたちの物件が多かったのだと思います。
とにかく出てっちゃった、って感じなんでしょうか。
膨大な資料の中、この「居抜き」物件を除いてしまうと、
わたしたちの見るべき物件は急激に減ってしまいました。

そしてやはりなんと言っても愕然としたのが
「保証金」の額でした。
ある程度の覚悟はしていたものの、高い。
「保証金」という性格上、当然のことながら
一括で支払わなければならないわけで、
その金額は少ない方で800万円くらいです。
これで、居抜きだったり、
地階ないし、2階より上階だったりします。
集客力を考えたら、人気店の2号店でもない限り、
やはり1階を目指すべきでしょう。
ちょっと条件がいいと、保証金の額は
軽く1,000万を超えてしまいます。

いわゆる「店舗経営者を目指すあなたに」的な本には、
『賃貸費用として、保証金、前家賃、礼金(各1ヶ月)、
 不動産手数料(半月分)で、
 1坪(3.3平方メートル)当たり1万円として、
 1万円×(1+1+1+0.5)ヶ月×借用坪数』
なんつう夢のような概算が載っていますが、とんでもない!
これ、だってたとえば、今のわたしたちの店が
およそ2坪として計算すると、初期費用が7万円ですよ。
しかも毎月の家賃にいたっては、2万円の計算。
あほかっちゅうねん。
なにを根拠にこんなことを書いているのか、
さっぱり分かりません。
いや、まあ、プロがお書きになっているので、
ちゃんと根拠はあるのでしょうが、
現実的ではないことは申し上げておきたい。
仮に、賃貸費用をこれだけで押さえたとしたら、
大家さんと賃借人との間で「売上げのうちの何パーセントを
大家さんに支払う」という
契約を交わす場合が多いと思います。

さて、不動産屋さんの中で、
金額のでかさに石と化したわたしたち。
そこへ、思いがけず現れたのが、
その不動産屋の社長さんでした。
「このままここにいては、
 ジャマになるだけだから帰らなければ」と、
思い始めていたわたしたちに対し、

「君たちは店をやりたいの?」のひとこと。
声をかけていただいたことに驚きつつ、うなずくと、
なんとその社長さんは不動産屋としてのかけ引き抜きで
相談にのってくださったのです。



まず、保証金(敷金という場合もあります)の問題は
難しいだろうが、借金するなどして、
なんとかクリアしたとしても、
次は「保証人」の問題があるとのこと。
わたしたちのように商売人としての実績がなく、
しかも賃借を希望しているのが
若い女性のみ、という場合は、
「それなりの男性」に保証人になってもらわないと
賃貸契約の審査に通るのは難しいだろうとのお話でした。

その手段として社長さんが提示してくださった方法は、
1.君たち2人が「賃借人」になるのなら、
  それぞれ2人ずつの保証人を立てる
  (例えば、親と親戚など)
2.「賃借人」そのものを男性の名にする
  (この場合ももちろん、保証人は必要です)
というものでした。
なるほどなあ、と思いましたよ。
そういうもんなんだろうなあ、現実は。

では、渋谷のはずれの「元・アパート群」も
保証金の額と、保証人の厳しさは同じですか?と
質問すると、
「ああいうタイプは、人づてで貸していることが多いから、
 不動産屋の物件として上がってこない。
 借りる場合は、大家さんとの直接契約になるだろう」
とのこと。
つまり、資金やセンスのほかに
「プレゼン能力」も問われるということか。
なるほど。
難しいじゃないか。

この社長さんも自ら店舗経営をされたことがあり、
そのご経験から、
わたしたちにレクチャーをしてくださったようです。
だから、ことばに重みと現実味がありました。
最後にその社長さんは、
以前わたしの担当だった女性とともに
「やるなら、本気で応援するから」と、
激励までしてくださいました。
おそらく1時間以上をかけてお話しいただいたと思います。
本当にありがとうございました。

結局のところ、今すぐ店を借りるのは難しい、
店舗経営のお先は真っ暗ということが
分かってしまったわけですが、
まったくの第三者に思いがけず励ましていただいて、
わたしたちはつい、うっかり
諦めるのを忘れてしまったのでした。


やはり、閉店後の店舗前スペースでいくか、
それとも渋谷の「元・アパート群」に交渉するか?
そして、ほんとうに他に手立てはないのか?
わたしたちは、それぞれバイトをしながら
模索するのでありました。

あれ、今日はこれで終わりなんですけど、
ために、なりました?

(つづく)

※文中、太字部分は、編集部へなちょこ番によって、
 施されたものです。



「Sexy Guys」
何故かお肌露出気味の
セクシーガイが
あなたの爪を
キレイにします。
当店イチバン人気の
爪やすり。
みんな、好きねえ。

2000-06-26-MON

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