SAITO
もってけドロボー!
斉藤由多加の「頭のなか」。

最近の夢


「最近の仕事で君の夢はなにか?」
と質問されたら、きっとこう答えるに違いない。

「べらべら喋るコンピューターをつくりたい」

と。
コンピューターというのは処理能力や容量も重要だが、
一番重要なのはインターフェイスだと思っている。
この20年、パソコンはマウスとキーボード、
ゲーム機は十字キー
(この言葉は某社の商標だそうですが)とABCボタン、
という環境から変化していない。
それがコンピューターの進化を偏らせてしまっている
原因ではないかと個人的には思っていて、
インターフェイスが変われば
コンピューターというのは格段におもしろくなると
私は信じて疑わない。
昨今のコンピューターは描画速度や
画像処理が進化している反面、
音に関してはてんで貧弱になる一方である。
その証拠に店頭に並ぶパソコンに、
もはやマイクはほとんどついていない。

89年くらいにアップルがルーカスフィルムと制作した
「ナレッジナビゲーター」という
コンピューターの未来像を描いたビデオがあるのだが、
ここに憎らしいほど
べらべら喋るコンピューターが登場する。
あまり流暢にしゃべるので
やがてユーザーは壊したくなるにちがいない。
シーマンはそういった影響もあって
制作にふみきった作品ですが、
シーマンForPS2に付属していた
「USBマイクコントローラー」を
そのままパソコンにつなげば
それが実現できるかもしれない‥‥
そう思い始めたたのは3年ほど前であろうか。
なにせ世の中に40万個以上出回っている
デジタル・マイク・コントローラーであるから、
もっている人がみなパソコンに接続して喋り始めたら
さぞやおもしろい現象がおきるにちがいない、
そう思うようになった。
それから紆余曲折を経て、
Windows用/Mac用のドライバーと、
チャットサーバーを作り始め、
今月初頭ようやく公開実験にまでこぎつけた。
そもそも、音楽や効果音ではなく、
人の肉声が大好きな私としては、
たとえば制作中の「大玉」というゲームは
「押せぇーっ」
「もどれぇー」
「出陣っ!!」
などというかけ声で兵が
「おおーっ!!」
「いきまぁーすっ!」
などと動く肉感的な音声ゲームに
仕上げようと思っている次第である。

(c)Nintendo 2004
(c)Vivarium 2004

零細企業というのはなにせ余力がない。
夢というのは他の仕事でお金をかせぎながら
まわしてゆくことになる。
それが悩みの種であるが、
この上ない楽しみでもある。
友の生声を聞きながら楽しむゲームは。
たとえそれがトランプやマージャンのように
シンプルなものであっても、格別にちがいない。

まだまだ夢の入り口であるが、私のいるビバリウム
「べらべらと喋るコンピューターソフト」
を目指して実験をつづけてゆく予定である。

斉藤由多加さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「齋藤由多加さんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ろう。

2005-01-21-FRI

BACK
戻る