SAITO
もってけドロボー!
斉藤由多加の「頭のなか」。

スイッチ (とプレゼント・ステッカーのこと)




ステッカーの募集が無事終わりました。
たくさんのご応募ありがとうございました。
皆さんに書いていただいたコメントは
とても参考になりました。
上のようなステッカーができあがってきましたので、
抽選の上、お送りさせていただきます。
バレンタインあたりの発送になります。
発送をもって発表とさせていただきますので
あしからずご了承の上、お楽しみに。

それから、以前にここでお話ししました
『林檎の樹の下で』と『マック誕生の真実』の二冊の
サイトでの公開ですが、
会社のホームページ上で開始しました。
どうぞ こちら(www.openbook.tv)
ご覧になってください。



「トグル(toggle)」、という言葉。
ばね式スイッチという意味ですが、
私のいる業界では、
on/off切り替えスイッチの意味で使います。
一度押すとオン、もう一度押すとオフ。
表裏一体となった操作を
ひとつのスイッチでおこなうものです。
今回は、このトグルスイッチをめぐっての話です。

シーマイクコントローラーのボタンに
マックのマウス操作を割り当てようと
あれこれ考えていた時期のことです。
操作を直感的にする案として
こんなのが出ました。

マックのウインドウをカラーボタンに割り当てて
赤ボタンで「ウィンドウを閉じる」
黄色で「ウィンドウを最小化する」
緑で「ウィンドウを最大化する」
としてはどうか、と。


「これはいいかも」ということで、
さっそく三色のボタンのサンプルをつくり、
ドライバーソフトもそう作ってみたわけです。


実験は大失敗!


しかし、机上の会議では
ウケのよかったこのアイデアも
いざ実験してみると、大失敗でした。
ひどく違和感がある。
この違和感がどこから来るものなのかを
突き詰めると、
以下のような結論に行き着いたのであります。

──スイッチを押し間違えたとき、
  人はそれをもう一度押したい──

たとえば、誤操作でAボタンを押したら
フォルダーから下のようなサブメニューが
表示されたとしましょう。
おそらくあなたがこのメニューを閉じるために
とっさにもう一度このAボタンを
押すのではないでしょうか?



これが「トグル・スイッチ」というやつです。
この反射的な行動は、長年親しんできた
「電灯のスイッチ」によるものかもしれません。


表裏一体であること


「ファイルを開く」と「ファイルを閉じる」。
一見ペアに見える機能ですが、
前者はOSの仕事、
後者は起動しているアプリの仕事。
つまりコンピューター側から見ると
全く異なる指令なのです。
これらをペア、つまりトグルスイッチとして
割り振ることが直感的ということになってきます。
振り返って考えると、
当初の案は状況を元に戻すのに
別のボタンを探させるものでした。
これでは違和感があって当然です。
結局私たちは、「開く」←→「閉じる」、
「見せる」←→「隠す」などのように、
機能としてはバラバラに
キー配置されているものを分類して、
ひとつのボタンに
割り振ることにしました。
「●と▲は表裏一体なんだよ」
となかば強引に規定してしまう訳です。
キーボード特有の多彩な自由さを
失わせることになりますが、
代わりにボタンの目的を強く示すことができます。
使い勝手はかなり快適です。
わかりやすくすることと
自由度を制約することは
どうやら同義語のようです。


対照的な両横綱


キーボードとコントローラー。
コンピューターではどちらもが
横綱級の入力機器として普及していますが、
実はこの二つのハードに人が寄せる感覚は
まったく違うもののようです。

以前にこちらの連載にて
パソコンゲームと家庭用ゲームの違いについて
述べたことがあります。
ゲームを考える上で、
この違いを自覚することはとても大切です。
ゲーム感覚の操作性をパソコンに持ち込む、
という今回の仕事では、両者のちがいを
さらに深く実感した次第でありました。


実験はつづく


パソコン操作をゲーム感覚にしよう、
というスローガンのもと、そんな実験を重ねている
「シーマイク・コントローラー」は、
まだまだ途上ではありますが、
好評につきWindows版も出そうという気配が
早くも社内では盛り上がりつつあります。
ま、これは確定ではありませんが、
その節は皆さんのご意見をうかがわせてください。

斉藤由多加さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「齋藤由多加さんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ろう。

2004-02-11-WED

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