SAITO
もってけドロボー!
斉藤由多加の「頭のなか」。

第1回
「コカコーラの話」

●果たして中国天安門広場で飲んだコカコーラは中国製か?
昨年、中国を初めて訪れた時のことである。
天安門広場で、初めてみる中国に胸おどらせていた俺は、
広場で飲み物を売る屋台に気付いた。
「あそこの屋台で売っているのは
本場4000年のウーロン茶か?
いや、もっと珍しい飲み物かもしれない・・・」
中国4000年のドリンクへの期待に胸を膨らませながら、
俺は興味津々でその屋台に歩み寄ったのだった。
が、そこにあったのはなんと
中国語の缶にはいったコカコーラだったのである。
毛沢東の見下ろす天安門広場で、
俺はいつも飲んでいるのと変わらないコカコーラを
飲みながらボーと考えていた。
それは
「これは中国製のコカコーラか、
それともアメリカ製のものか?」
ということだった。


●コカコーラという不可解な飲み物
けっきょく衛生面でちょっとばかり問題がある中国では、
コカコーラばかり飲む事となった。
そこにあったのは、文明人としてコカコーラという
ブランドによせる曖昧模糊とした安心感だった。
異国の地でも、外国人に愛される、
それがコカコーラの強みだ。
余談だが、
自分の会社にも缶ジュースの自動販売機が置いてある。
ある日、海外の客が来て、弊社で会議をしていると、
ふとそのひとりが中座して、しっかりとコカコーラを
もって戻ってきたのだった。
テーブルの上には彼のために入れられた日本茶が
むなしく置かれたままであった。

しかし、そもそもコカコーラって何なんでしょうね?
オレンジジュースでもアップルジュースでも
コーヒーでもなく、まさしく人間が生み出した人工飲料水。
あの色といい味といい・・・、初めて口にした時は
「なんじゃこれは!?」と驚いたものである。
しかしそれが知らずしらずのうちに水のように、
いや、水よりも多く飲んでいる。
コカコーラを知らない人に、この色水を
どう説明しろというのだろう?
もし貴殿がコカコーラのアフリカサバンナ地区の
宣伝マンだったら、現地の人にどう説明しますか?
これほど説明のむずかしい飲み物はない。
それほどの飲み物を
私達に水以上に飲ませている威力って何なのだ?
どうしてここまでポピュラーになれたのだ?
俺にとってはそれが不思議でらないのである。


● バーガーキングがオリジナルコーラを作らない理由
「うちの店はコカコーラですよ」
と誇らしげに、店頭に看板を出している店を見かける。
喫茶店からお菓子屋、はてはスナックまでいろいろで、
その数は昭和42年の時点で水原弘や由美かおるを
はるかにしのいだ。(これはうそ)
どうせキックバックがあるんだろう、
そう考えていたのだが、しかし
全米の大手ハンバーガーチェーンともなると話は別である。
「バーガーキング」の紙袋には、ハンバーガーとともに
コカコーラのイラストが施されていたのである。
全米最大規模のチェーン店の社長が俺だったら
わざわざコカコーラなんか仕入れるより、
ダイエーコーラのように
オリジナルを作って売るにちがいない。
だがあえてそれをせずに
「うちはコカコーラですよ」とアピールさせるに足る力が、
もはやそこには働いているのである。
おそるべし、コカコーラ。

(つづく)

1998-11-19-THU

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