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ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.7 母の血筋をたどって
 Dudoit(デュドワ)part1

私が家族の歴史について
興味を持つようになったのは、
先祖の話をたくさんしてくれた父のお陰です。
母の血筋はDudoit(デュドワ)という苗字の
フランス系の移民から来ていることは聞いていましたが
母はあまり先祖について語る人ではなかったので、
私は母方については
ほとんど知る機会がありませんでした。

しかし、中学生の頃のちょっと奇妙な二つの出来事を機に
私は母方の先祖についても、
知りたいという気持ちになってきたのです。

私が12歳の頃、
両親は私をオアフ島にある
カメハメハ・スクールに入学させることにしました。
カメハメハ・スクールは、カメハメハ1世の孫娘
Bernice Pauahi Paki Bishop
(バーニース・パウアヒ・パキ・ビショップ)
によってつくられた私立校で、ハワイ人の子供たちに
質の高い教育を提供する目的で開校されました。
毎年多くの子供たちが入学を希望しますが、
人気のある学校のため狭き門といわれています。
私は幸運にも入学の許可をもらったのですが
それは同時に、1年に最低でも9か月間は
両親に会えないことを意味していました。

当時はまだ12歳ですから、
両親から遠く離れて暮らすことは私にとって
とてもつらいものでした。
とくに最初、友達もまだできない頃は
よくホームシックにもなったものです。
生徒は純粋なハワイ人、そして
私のように混血のハワイ人の子供ばかり。
私がハワイ人としての誇りを抱くようになったのは
この学校の教育の影響も深く関わっていると思います。

広大な敷地を持つカメハメハ・スクール

学校生活にも慣れた2年生の頃。
私は合唱クラブに参加していて、
そのクラブでは、いろいろな場所を訪問し、
皆さんにハワイアン・ソングを
聴いてもらうという活動をしていました。
二つの奇妙な出来事というのは
両方ともそのクラブの行事の際に起こったのです。

最初の出来事は、オアフのイースト・サイドにある
ルナリロ・ホームという、由緒ある
高齢者施設に出かけたときに起こりました。

私たちが歌を歌い終わったとき、
係員のひとりが私を呼びに来ました。
誰かが私に会いたいと言っているというのです。
そして私は、部屋の後ろのほうで車椅子に座っている、
とても歳をとったおばあさんのところに
連れていかれました。
私はそのおばあさんには
一度も会ったことがありませんでした。
彼女はとても年老いて弱々しく、
髪は雪のように白く、
褐色の肌には生きてきた歳月を思わせる
いくつもの皺が刻まれていました。
それでも、彼女の瞳は若々しい光を放ち、
その柔らかい笑顔は
私の緊張を解きほぐしてくれました。

彼女は私を近くに呼び、私の手を取りました。
「可愛い子。私を訪ねてきてくれてほんとにありがとう」
「どういたしまして」
すると彼女は次にこう言ったのです。
「私はあなたが誰か、ちゃんとわかっていますよ」

どうして?
私はびっくりしました。
だって私はそのおばあさんには
その時初めて会ったのですから。
そして彼女は続けました。
「あなたはデュドワでしょう?」

そのときの私の驚きといったらありません。
私は親戚の中でもとくに肌が白いし、
当時はたった13歳の小さな女の子。
外見だけで私がどこの誰かわかるほど、
一族の特徴を備えているとは思えません。
オアフ島にも私の親戚は大勢いましたが、
でもそのほとんどは父のほうの親戚です。

「はい、そうですけど・・・」
戸惑いながら私は答えました。
「私はね、あなたがここに、
 私に会いに来てくれることを知ってました。
 私はクレメンタイン・デュドワ。
 あなたのお祖母さん、ウィノナに
 私がよろしく言っていたと伝えてくださいね」

どうしていいかわからなかった私は
ただ小さく頷き、彼女にお別れのキスをして
その場を離れました。
“どうしてあのおばあさんは、
 私のことを知っていたんだろう?”
私の心は不思議な思いでいっぱいになりましたが、
同時になんだか温かいものが
胸に満たされるような感覚をおぼえました。
私を見る彼女の眼差しからは、
確かに家族に対する愛情が感じられたし、
私のほうも、彼女に初めて会ったはずなのに、
なぜかとても安心できるような、
懐かしい気持ちになったのです。

その数日後、
私は祖母(ウィノナ)に電話をかけ
この出来事を報告しました。
すると祖母は、クレメンタインというそのおばあさんは
祖母の従姉なのだと教えてくれました。
「確かにタマラは彼女に会ったことはないはずよ」と、
祖母もこの話にすっかり驚いた様子でした。

それから数ヶ月後のこと。
祖母から、クレメンタインお祖母さんが
亡くなったとの電話がありました。
一度しか会わなかったけれど
その知らせを聞いて涙があふれてきました。
死期が近づいた彼女に
なにか不思議な力が働いて、
私と彼女を引き合わせてくれた……。
私は、そんな思いに駆られたのでした。

2000-06-14-WED
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