AERAとすすめてきた「40歳の特集」ですが
最後を締めくくるのは
ライフネット生命をつくった出口治明さんと
糸井重里との「同い年対談」です。
60代のふたりが語る
「いったん、ゼロになる40代」から
「何でもできる50歳」へのお話。
いま40代の人はもちろん
これから40代を迎える人たちにとっても
年を重ねるのが、
なんだか楽しみになる対話になりました。
どうぞ、おたのしみください。
読書家で知られる出口さんですけど
40代前半のときに、
「本をぜんぶ捨てちゃった」そうですよ!?

第1回 50歳は、何でもできる。

糸井
今日のお話は、「40歳特集」の締めくくり‥‥
ということのようなんですが
出口さんって
「50歳」についても書いてらっしゃいますよね。

「50歳は、何でもできる」と。
出口
ええ、ずっと保険業界でやってきましたから、
統計で単純化するんですよ。

まず「人生80年」として、そこから20を引く。
糸井
はい。
出口
なぜ、そうするかというと、
現在の日本の大学進学率が「5割強」なので
日本人全体が
社会に出る年齢を平均すると、20歳くらい。

つまり、現代の平均的な日本人って、
20歳になるまでは
「親に養ってもらっている」んです。
糸井
なるほど。
出口
自分の足で歩きはじめるのが「20歳」である、
そう考えると、
80歳までは60年あるので、半分は30年。

ようするに「20歳プラス30年」で、
「50歳が中間点」だと、考えているんです。
糸井
おもしろいですね。
出口
で、マラソンの折り返し地点のように考えると
来た道と同じ道を戻るわけだから
残りの30年は
だいたいどんな道か、わかってるわけです。
糸井
ええ、ええ。そうですね。
出口
他方で、
人間は「リスク」を恐れる動物ですけれど
50歳になると
「リスクはなくなる」と思うんです。
糸井
と言うと?
出口
つまり、リスクではなく「コスト」になる。

たとえば、50歳になって
まだ社長になるかどうかわからんという人、
あまり、いないですよね。
糸井
そこは、だいたいわかってますよね。
社長になる可能性があるかどうかについては。
出口
あるいは、自分の子どもについても、
生まれたときは
「よーし、すごいサッカー選手にして
 年俸50億の半分をもらおう」
と思っていても
その子が15歳になったときには
年俸50億の選手になれるかどうかは‥‥。
糸井
ま、だいたいわかります。
出口
だったら、やっぱり
大学に行かせてサラリーマンやな‥‥とか。

すると、将来的に必要な「費用」も読める。
「読める」ということは
「リスクがコストになる」ということです。
糸井
そうですね。
出口
すると、怖いものはなくなるじゃないですか。
糸井
帰り道のようすもだいたいわかっていて
コストも「読める」から。

で、そうなる年齢が「50歳」で
だからこそ「50歳は、何でもできる」と?
出口
そう思うんです。

起業とかっていうと「リスクを取れ」だとか、
「清水の舞台から飛び降りる気持ちで」
みたいに言われますけど、
50歳になって清水の舞台から下をのぞいたら
「なんや、
 1メートルしかないやないか」って。

そしたら、飛び降りることができますよね。
糸井
つまり、ものごとを「できること」に分解して
考えられるようになるってことですよね。

100メートルを飛び降りるのは無理だけど
1メートルだったら、たしかに。
出口
それくらいの高さだったら、
ずるずる降りてってもいいかな、とかね(笑)。
糸井
ああー‥‥、つまり「楽しくなる」のはそこだ。
うん、うん、そのとおりですね。
出口
自分の得手不得手は、ある程度わかってるから、
それを踏まえて
これくらいのゲームならやってみようかなとか、
選び取ることができるんです。
糸井
ぼくも、50手前で「ほぼ日」をはじめたので、
「すごいですね」って言われて、
「まあね?」ってニヤニヤしてたけど(笑)、
本当は、あまり怖くなかったんです。

その理由が、今の説明でスッキリわかりました。
出口
そうですか(笑)。
糸井
つまり、
「最悪、何が起こるか」ということについて
ジャッジできるんです、50歳になったら。

で、その「最悪」が「本当に最悪」だったら、
選び取らなければいいわけで。
出口
それに、30年ちかく仕事をやってきたら
仲間や友だちがいますからね。

いろんな人的ネットワークも使えますし。
糸井
誰かが味方になってくれますよね。
出口
そう思います。

糸井さんは
40代で「再チャレンジ」するつもりだったって
おっしゃってますが、
「50歳で、ちょうど真ん中」だって考えると、
さらに何でもできる気持ちになれると思うんです。
糸井
出口さんご自身は
ぼくと同い年で60代なかばですけど、
本当に、よくおはたらきになってますよね。
出口
ベンチャーだし、しょうがないです(笑)。
糸井
ベンチャーって、
「そういう遊び」なのかもしれないですね。

「身を粉にする遊び」‥‥というか(笑)。
出口
むかしむかしの悪友に
「66にもなって
 人生でいちばんはたらいてるんだよ」って
愚痴を言ったら
「一生分の仕事の量は、だいたい同じや。
 お前、若いときに遊んだツケや」
って。

まあ当たってるんで、しゃあないですけど。
<つづきます>
2015-02-23-MON

出口治明さんの新しい本
『「働き方」の教科書』、発売中です。

この連載のタイトルにも
「何でもできる50歳」とありますが、
本書の副題には
「『無敵の50代』になるための仕事と人生の基本」
とつけられています。
目次からいくつか拾ってみると
「50代ほど起業に向いた年齢はない」
「40代になったら得意分野を捨てる」
「仕事は楽しさで決まる」
‥‥などなど、
今回の対談で話されていることが
いっそう深く、詳しく語られています。
いま40代の人も、これから40代になる人も
「50歳は人生の真ん中」という
出口さんの言葉に希望を感じ、
同時に、やる気を掻き立てられるはず。
本連載を「副音声」のようにして読んだら
いっそう、おもしろいと思います。

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