とんでもない、原丈人さん。 次の時代のヒントは、この人のなかに?  第3部 「XVD」と「吉本隆明」を組み合わせ、 「スピルリナ計画」の難題を解決し、 「世界一の鉄道博物館」を建てるという話

第3回 解けない問題なんてない
これまで、途上国に対する食糧援助スキームでは、
空腹感は和らげるけれど、
栄養価の高くない小麦や米を提供してきたんです。
つまり、炭水化物ばっかり。
そう、お腹はふくれるんだけれど‥‥。
栄養が足りてない、という問題は
解決できてこなかったわけだ。

そう。

つまり、小麦や米やとうもろこしだけでは
「タンパク質」が摂れない。

そこで、スピルリナの出番なんです。

はい。

スピルリナというのは藻の一種ですが、
タンパク質がとても豊富。

100グラム中、65〜75グラムくらい
含まれているから、
効率よく栄養状態を改善できるんです。

牛肉なんかよりも、
含有量が、ぜんぜん高いわけですね。
しかも、同じ量のタンパク質を得るのに、
牛肉の場合とくらべると、
「50分の1の水」
「200分の1の土地」があればいい。
生産性も高いんだ。
でも、そのスピルリナをうまく利用すれば、
飢餓の問題を
改善できるってことはわかってるんですが、
どういう事業モデルで
このプロジェクトを進めたらいいのか‥‥
まだ、正解が見えてないんです。
原さんでも、ですか。

わたしは、国連の経済社会理事会から
このスピルリナ計画の
特命全権大使に任命されているので、
「国連旗のもとでの活動」ではあるんだけど‥‥、
あくまで税金を使わず、
民間でやれるような枠組みをつくりたい。

そのしくみが‥‥ね、
まだ、わたしには、思い浮かばないんですよ。

‥‥吉本隆明さんって、ご存知でしょう?
ええ、もちろん。
戦後思想界の巨人と呼ばれている人ですけど、
その吉本さんの講演集をデジタル化し、
販売するプロジェクトをやってるんです、今。
ほう。
で、一定の利益を確保できたら、
その後は‥‥タダで配ろうと思っていて。
タダで? 講演の音源を?
うん、いつになるかわからないけど、
かならずやろうと思ってる。
それは、おもしろいな。

何年かかるかわからないけれど‥‥。

この計画を実現することができたら、
誰でもがみんな、
吉本さんの講演を聞くことができるでしょう?

お金を持っていない若い学生でも。
そう。で、このアイディアを思いついたのも、
原さんとのお話のなかから
ヒントをもらってるんですよね、思えば。
そうでしたか。
つまり、利益なんか出さなくてもいいやって
決めちゃったら、
逆に「やれることが少なくなる」でしょう?
ええ、そのとおりですね。
きっちり利益を出す、ということを
軸にして考えると、
原価に対する考えもおざなりにならないし、
なにより、商品の質に責任感を持てる。
お金をとってるわけだからね。
そういう努力をすべて注いだうえで、
「オレたち、これで、ちゃんと儲けます」と。
儲けが出たら、もっといいサービスができる。
そう、そのことを
きっちり言うことの責任感‥‥というか。
うん。

吉本さんのプロジェクトについて言えば、
今、お金を出して買ってくれた人のおかげで、
今は買えない人も、
いつか、聞くことができるようになる。

つまり、利益をあげることを通じて、
ぼくらのやれることが広がり、開いていく。

そういう事業モデルでやれるんじゃないかって
考えついたのも、
原さんとお会いしてからのことなんですよ。

ああ、なるほど‥‥そうですか。

スピルリナのプロジェクトも、
政府の補助金や寄付に頼ってしまったり、
民間の「余力」でやってしまうと、
継続性に問題が出てくると思っています。

つまり、糸井さんのいう「広がり」が、ない。

なにより原さんらしくないですしね、それ。

はじめは、スピルリナを
ユニセフに買ってもらおうかなんてことも
検討していたんです。

でも、ユニセフをはじめ、国連の機関って
たいがい税金を原資とした
各国からの分担金で成り立ってるでしょう?

わたしが当初、思い描いていたかたちは
国の税金をいっさい使わずに、
民間の枠組みでやるということだったから。

原さんらしいのは、そっちですよね。

スピルリナを栽培し、
飢餓に直面している人々に手渡し、
彼らの口に入るまでの過程を事業化して、
きちんと利益を出せる構造。

それを‥‥その事業モデルを、考え出さなければ。

うん。
そうやって、民間でやれる方法が見つかったら、
税金を使う枠組みよりも
もっともっと大きな効果をあげられるはず。
ええ。
ブラック・ネットの教育・医療事業だって
はじめはみんなに
不可能だって言われ続けてきたわけだから。
考え出したんですもんね、原さんが。
いまはまだ、解決策が見えてないけど。
解決するんでしょう、いつか。

解けない問題はないと信じてますから。

かならず、事業計画を完成させます。

<続きます!>
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2008-10-22-WED