原丈人さんと初対面。 考古学から『21世紀の国富論』へ。ベンチャーキャピタリストの原丈人さんと 糸井重里が会いました。 最初、コンテンツにしようなんて 考えてなかったのですが そのときの話が、とにかくおもしろかったのでした。 考古学者のたまごから 世界が舞台のベンチャーキャピタリストへ。 一歩一歩、「現場」をたしかめながら歩んできた 原さんの「これまで」と「これから」。 そこにつらぬかれている「怒り」と「希望」。  ぜひどうぞ、というおすすめの気持ちで おとどけしたいと思います。 ぜんぶで10回、まるごと吸いこんでください。 あなたなら、どんな感想を持つでしょう。


第9回 日本人にはモチベーションが欠けている?
バングラデシュの話にちょっと戻りますけれど。

糸井 ええ。
国連に、途上国に人材を送り込んでいる
WAFUNIF(ワフニフ)って機関があるんです。

ニューヨークに本部があるだけなんですけど、
これの海外本部を日本につくろうと
はたらきかけているんですよね、いま。
糸井 じゃ、そこから人材をバングラデシュに?
それも、なるべく日本人を送りたい。
騙してでも、といったらヘンですけど。

そうしたら、自分たちの知らない世界で
どんなことが起こっているのか、
知ることができるわけじゃないですか。

糸井 やっぱり、見せてやりたいんですね。
わたしは、日本人って、
根本的に素直な人たちだと思うんです。

ただ「なにかをやりたい!」っていう
強いモチベーションが、あんまりないんですよ。
糸井 うん、そうだ。
だから、バングラデシュに送り込まれて
目のまえで
子どもたちが死ぬなんていう場面に遭遇したら‥‥
考え込んでるヒマなんて、ないでしょう?
糸井 まずは、助けないと。
そういう場をつくりたいんです。

だから、ワフニフの海外本部を
日本につくることが、ぜひとも必要なんですよ。

で、そんな話をもちかけていたら、
代表大使になれというんで‥‥それもやってます。
糸井 そういうところって、
アメリカのおもしろさというか、すごさですよね。

国籍があろうがなかろうが、
原さん個人にたいして、
きちんとドアが開かれてますよね。
アメリカのいいところですね、そのへんは。
糸井 それにしてもまぁ、
いろんなこと、やってるなぁ。

でも、やみくもに
引き受けてるわけじゃないですよね(笑)。

わたしが改革しようとしている事柄に関係していて、
そのポジションにいたほうが
自分の思うことをはやく実現できそうなものについてだけ、
引き受けることにしています。
糸井 でも、みんなは、どう思ってるんですか?
原さんの会社の仲間たちは。
デフタパートナーズは、
日本のほかに
アメリカ、イギリス、イスラエル、韓国にあるんです。

で、その各国の最高責任者に
たとえば、ワフニフの本部を
日本につくりたいんだっていうと‥‥。
糸井 なんだかよくわからない話ですよね、たぶん。
とつぜん、そんなこと言われても(笑)。
うん、なんでそのワフニフだかが
わが社の事業に関係あるのかわからない、はじめは。
糸井 うん、うん。
たとえば、バングラデシュの事業でも、
アメリカ的な考えかたからしたら、
わたしの「1時間」、わが社の「1億円」を
どの国にどうやって投資したら
もっともリターンが高いか、で判断するんです。
糸井 貧しいバングラデシュで、やろうなんて言ったら‥‥。
なんで、そんなところを、わざわざ選ぶんだと。

わたしは「バングラデシュだ!」って
言い張ってるんだけれど、
その時点では、みんなはまだ「わからない」。
糸井 つまり、全員反対。
ええ、考古学のときといっしょです(笑)。
糸井 で、どうするんですか、そういう場合?
頼むからやらせてくれ、と。
失敗したら、わたしが責任を取るから、と。
糸井 ああ‥‥その環境が、
原さんを強くしたんでしょうね。
ひとり、ユダヤ人の幹部がいるんですが、
この人なんかはね、最後の最後まで「反対」。

理由はひとつで、「儲からないから」だって(笑)。
糸井 おもしろいなぁ(笑)。
でも、そのユダヤ人の幹部も
今年になったら、
「ジョージ、
 これほど儲かるプロジェクトはないよ!」と(笑)。
糸井 「これ、来るぞー!」って、わかったんですね。
ええ、そうなんでしょう、きっと。

だからいつも、はじめは
なんだかよくわからないけれども‥‥。

しばらくしたら、
なにか事業に関係してくるんだろうなって、
過去の経験から
知ってるんですよね、みんな。

2007-11-30-FRI

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN