花のこと。 ── 石田ゆり子

みなさん、こんにちは。
ご無沙汰しております。いかがお過ごしでしょうか。

今年も、桜の季節がやってきました。
春です。
私は、ふうっと空を見上げることが多くなりました。

お伝えるするのがこんなに遅くなってしまったこと、
ごめんなさい。
書かなきゃ、書かなきゃと、いつも思っていました。

だけど、どうしても書けませんでした。
でも、やはりきちんとお伝えしなければなりません。

昨年の4月1日、花は、天国に旅立ちました。
桜が満開の、美しい夕方でした。

病名は胃癌でした。

12歳と10カ月。
花は沢山のみなさんに愛情を沢山頂き、そして、
愛情をたくさん振りまいて、
まるで桜のように、潔く逝ってしまいました。

駒沢公園、いこうか?
ボール投げしよう?

花は最期まで、この言葉に反応してくれました。
どんなに辛くても、行く行くと、
尻尾を振ってくれました。

犬は、愛。
愛されるために、愛するために。
本当にそうです。

仕事柄、留守ばかりする私の生活に寄り添ってくれた
チョコレート色の大きな塊。
いつも足もとに寝そべっていたのでわたしは、
花につまずいてよく転びました。
そのたびに、花は、えへへ、と言う顔をして、
遊ぼう? と笑っていました。

毎日のように通った駒沢公園。
大好きな桜の木。
いつも、匂いを嗅ぐ、あの曲がり角。
終わりのないボール投げ。
車の後部席の窓から顔をだして、
耳をパタパタなびかせていた。

動かなくなった花をみても、
どうしても眠っているようにしか思えない。
肉球、耳の後ろ、口のあたり、
背中、しっぽ。おでこ。あたま。

エイプリルフールだったので、悪い冗談やめてよ、
と泣きながら思いました。

だけど、

上手く言えないけれど、
私はなぜか、前より花を近くに感じます。
私の中に、花がいるのを、確信します。
不思議な感覚なのです。
寂しいけど、悲しいけど、でも、さみしくない。
嘘じゃありません、本当にそうなんです。

皆さん、本当に、
花のことを可愛がってくださりありがとうございました。
本当に本当にありがとうございました。

花の連載を持たせていただいたことで、
山のように写真を撮りました。
それを一冊の本にして頂けたこと
花のことを記録に残せたこと。
本当によかったと思っています。
糸井さん、ほぼ日のみなさん、
本当にありがとうございました。
心から感謝致します。

花はきっと天国で、
大笑いしながら走っていると思います。
チョコレート色の犬を、どこかでみかけたら、
ちょっとだけ花のことを思い出してあげて下さい。
きっと喜びます。

皆様の日々が、笑顔でありますように。
平和な日々でありますように。

今日もいい日でありますように。

ばあやこと 石田ゆり子より。感謝をこめて。

2012年秋 多摩川の河原にて。

2015-04-01