濱口秀司さんのアイデアのカケラたち。

糸井

濱口さんはなにをしたいのか、と聞かれたら、
目の前に襲いかかってくる
「問題解決」というモンスターを倒したいと
答えるんですかね？

濱口

そうですね。
よく若い学生さんに
将来のビジョンを聞かれますけど、
答えられないんです。

毎日たのしかったらいいし、
夜食べたラーメンがおいしかったら幸せ。
本音としては、そう思っています。

糸井

そうですか。

濱口

ビジョンはないですけど、
アドレナリンの出る瞬間は5段階あります。

糸井

はい（笑）。

濱口

まず1つ目は、答えをみつけた瞬間です。
失敗しない方法とかたいていの問題の答えは、
インターネットをみたら学べます。
なので、僕はインターネットにものっていない、
誰も解決していない難しい問題の案件ほど、
たのしいんです。
まだ存在しない解法を作っていくのが、
一番おもしろいと思っています。

2番目は、思いついた答えを説明して、
「そんなの絶対無理ですよ」と
反対派が出たときです。

糸井

え？

濱口

「バイアス」が壊されると、
自分たちの常識では考えていなかった答えなので、
全員が感動するわけではなく、
無理だと言う人も当然出てくるんです。
でもね、それはバイアスが壊されかけている、
いいサインです。
強く反対されればされるほど、
アドレナリンが出ます。

糸井

そうか、
反対されることはチャンスなんですね。

濱口

そう思います。
そして、3つ目が商品販売や発表の前夜です。
なにかを大きく変えるかもしれない商品やサービスを、
世の中に発表する。
そんな日の前夜はね、僕だけじゃなくて、
それまで一緒にがんばってきた企画者も
工場の人も経理の人もみーんな、
ワクワクしていると思います。

糸井

そうでしょうね。

濱口

「明日から世界観変わるで」って、
元々反対派だった人もワクワクしていて。
これが僕は大好きです。

4つ目は製品やサービスや解決策が、
うまく行き始めたときです。
たくさん考えて設計していますから、
それが世の中でも認められることは
すごくうれしいんですよ。

５つ目が、大成功して反対派だった人に、
「ね？　うまいこといったでしょ？」と
言いに行くときです（笑）。

糸井

それは気持ちいいですね（笑）。
5つ挙げてくださいましたけど、
どの瞬間が一番好きですか？

濱口

一番は、最初の答えを思いついた瞬間ですね。
とにかくたのしいです。

糸井

答えを思いつくのは、
どんなときなんですか？

濱口

そうですね‥‥。
力を抜いたときですかね。

糸井

寝る前とか？

濱口

シャワーを浴びているときとかですね。
あとは車を運転しているとき、
散歩をしているときなど。
僕、力を抜くときは思いつく時間にしようと、
意図的に設計しています。

糸井

力を抜く時間まで設計しているんですか！

濱口

やっぱり、いきなりシャワーを浴びても
答えは出ないです。

糸井

（笑）。

濱口

なので、死ぬほど考えて、
「このタイミングで一旦力を抜こう」と
時間を決めた上で、シャワーを浴びるんです。
そうすると、思いつきます。

糸井

一旦お休みして、
ふうーっと深呼吸をするんですね。

濱口

そうですね。
知らない間に自分にもバイアスがかかっていますから。

糸井

でも、いくつもプロジェクトを抱えていたら、
バイアスだらけになってしまいそうですよね。

濱口

同時並行できるプロジェクトの数も決めています。
限界は25プロジェクトです。

糸井

25‥‥。
すべてのプロジェクトを覚えているんですか？

濱口

自分の答えとロジック、
その2点セットで全部覚えていますね。
もっと言うと、
これまでやってきた700プロジェクトの
答えとロジック、すべて即答できます。

糸井

はーー。
僕には到底、難しいことです。

濱口

僕の場合24時間体制で働きますし、
本当にアホだから、
手触り感がないと理解できないんです。

概念論だけでなく、
実験結果が必要なんです。
身をもって体験しているから、
答えもロジックもわかるんですよ。

糸井

そこが濱口さんのおもしろいところですよね。

（この回までが、6時間の対談の前半となります。
後半は、また後日につづきます！）