HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

「すごいお母さん」の挑戦、第2弾。瀬戸内海を元気にしたい。「すごいお母さん」の挑戦、第2弾。瀬戸内海を元気にしたい。

【小手島編】
たったひとりの
運動会。

梶市長に勧められた、
小手島(おてしま)小学校の運動会について、
尾崎さんはとても興味を持ったそうです。
しかも、調べたところ、
近々開催されるということまでわかり、
一緒に見に行くことになりました。

運動会は朝8時からはじまるそうなので、
朝6時に丸亀港に再び集合しました。

▲朝焼けの瀬戸内海もきれいです。

▲相変わらず元気いっぱいの尾崎さん。
前夜は3時間しか寝ていないそう。

小手島は塩飽諸島のなかでも最小の島で、
昔ながらの「タコ漁」が有名です。
また、あちこちに住民の
オリジナルアートがあることでも知られています。

▲この島にも猫がたくさん。

▲おさかなをくわえた猫。

▲島のおじいちゃんが自作した
こういうオブジェがあちこちにあります。

さて、学校は小高い山の上にあるので、
そこに向かって山道を歩きます。

これから向かう小手島小学校は、
一時期廃校になっていたそうですが、
島で生まれ育ったひとりの女の子のために、
自治会が丸亀市に小学校再開を要望し、
その子の入学に合わせて再開させたのだそうです。

尾崎さんが言いました。

「フランス人にこの小学校のことを教えたら、
たったひとりの生徒のために
学校を復活させたなんて、
向こうじゃありえないと言ってました。
そういうことができるのが、素晴らしいし、
我々の誇りですよね。
運動会がどんな雰囲気で行われているのか、
この目で見ておきたいです」

▲学校に到着!

▲校庭には、立派な入退場門がありました。

「こんにちは~!」と元気よく挨拶してくれました。
この子が、この学校の生徒、
今中章乃(いまなか・あきの)ちゃん、8歳です。

「今日は来てくださって、ありがとうございます」
挨拶をしながら来場者にうちわを手渡していました。

この運動会、来場者全員に参加資格があります。
当日の飛び入り参加もOKで、
訪れた人はみんな、
配られたピンクのTシャツに着替えます。

入場行進がはじまりました。
校旗を手に、担任の先生と運動場を一周します。

▲広い運動場にたった一人。堂々たる行進ぶり!

▲そして、開会式がはじまります。

まずは全員参加によるラジオ体操から。
朝礼台に章乃ちゃんが立っていて、
みんなのお手本になっていました。

さて、ここからさまざまな競技がはじまります。
島の住民のみなさん、本土から来た先生たち、
交流している小学校の子どもたちが参加します。

「私も参加しなくっちゃ!」
尾崎さんの目がキラキラしてきました。

▲元陸上部。「全種目に出たい!」と尾崎さん。

▲まずは、玉入れ。

▲なにかの列に並んでいます。

▲大玉ころがしでした。

▲つなひきにも参加。

▲デカパン競争ではアンカーを務めました。

▲「疲れてないですか?」 と訊くと、このポーズ。

それにしても、
この、島をあげての大運動会、
ほんとうに見ていて気持ちがいいのです。
集まった全員が、まったく手を抜かず、
真剣に取り組んでいるのが
ビシビシと伝わってくるからです。
それも、いちばんに校長先生が、
がんばっていらっしゃいました。

▲玉入れのルール説明をする校長先生。

▲「綱引き、まだ人数足りません~!」
と、声をはりあげる校長先生。

▲サッカーの準備。
ボールを抱えて校庭をかけまわる先生、大忙しです。

プログラムの説明、人数集め、
ルールの説明、ひつような小道具の準備、
実況中継に、勝敗の判定。
なにもかもをする必要があります。
日本一忙しい校長先生と言っても良さそうです。

▲本土から来た助っ人の先生たちが何をすればいいか
ひと目でわかるように工夫されていました。

もちろん、章乃ちゃんが
ひとりでがんばるシーンも多いです。

▲堂々たる司会ぶり。
こんなにしっかりしている8歳の女の子、いるかなぁ。

▲先生チームの応援団。
校長先生が応援団長です。

▲章乃ちゃんも、負けじと声をはりあげます。

▲見守る島の人々。
「章乃ちゃんは島の宝やからなぁ」とおっしゃいます。

▲章乃ちゃんを先生方がしっかり支えて、ポーズ!

▲クライマックスの「組み体操」。
ほかに生徒がいなくても、組体操だってできます。

▲さぁ、はじまります。

一番下は4人、次に3人、さらに2人と、
大人たちだけで土台を作っていきます。
最後のひとり、いちばん上にくるのは、もちろん‥‥

章乃ちゃんです!
校長先生は、ここでも一番下でみんなを支えています。

島の方も拍手をおしみません。

最後は盆踊りで締めます。
やぐらにあがった章乃ちゃんが、
みんなをとりまとめる役をしていました。

▲来場者全員で「丸亀おどり」を踊りました。
小学3年生の章乃ちゃんが大人たちを仕切ります。

そうして、午前中で運動会が終わり、
閉会式をむかえました。
たくさんの人で賑わった運動会ですが、
はじまりと同じく、おわりもひとり。

校長先生が一日の健闘をたたえ、
章乃ちゃんに賞状を渡します。
みんなで参加しているので、
なんだか心からジーンとします。

▲「みんなが来てくれて、たのしかった!」

帰りは港まで降りて船に乗ります。
ほかの先生方も一斉に本土に戻るとのこと。
ふと、船の中から、窓の外を見ると‥‥。

▲あ、校長先生!

▲毎年こうして旗を振って、
みなさんを見送ってくださるそうです。

帰りの船の中で、尾崎さんが言いました。

「小手島小学校の運動会を見学して、
木場さんがなぜ男木島に
まず学校を再建しようとしたのか、
その理由がわかった気がしました。
学校の持つエネルギーって、
こういうことなんですね。
たった一人、子どもがいるだけで島のみんなが活気づく。
私、なぜ若い人に島に来てほしいのか、
それをこの運動会で実感できたと思います。
学校の再建や、若い人に島に来てもらうプランを、
これからもっと真剣に考えていきたいです」

最終的には壮大なものになりそうですか。

「ええ、めっちゃおもしろいものにしたいです。
廃屋になってる家も蘇らせ
広島の廃校になっている校舎を
アーティストに開放したいんです。
フランス大使館からも、
『僕たちは、お金は尾崎さんには何も出せないけど、
ネットワークだけはあるから、
尾崎さんが情報発信したいものは、
フランス大使館を通して、いくらでもします』
と言ってもらってます。
市長さんとも仲良くなれたし、
さぁ、ここから盛り上げていきますよ!」

そう言って、今度は、「香川本鷹」を
若い人たちに知っていただこうと
京都大学農学部のみなさんを
島に招く準備をはじめていました。

これで、尾崎さんの島プロジェクトリポートは、
いったんここでおしまいです。
尾崎さんの活動は
まだはじまったばかりですが、
尾崎さんが作ってきたネットワークが実を結んで、
新しい「何か」がおきたら、またこの場でお伝えしますね。

(終わります)

2017-01-27-FRI