ガンジーさん。
いつ途切れるかわかりませんが
今後ともよろしく。

3.ほんとうだった、あまりにも。

「ほんとうですか」という、かなり失礼な
ぼくからのメールに、さらに返信があった。

どうしたら、ほんとうであることを証明できるのか、
思えば、けっこう困難な問題だったと思う。

年齢から感じさせる旧式のギャグから
書き出すところが、ますますリアルだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆RE“癌爺”と申します。ハイ。

”ぎょっ” 昔のギャグですねぇ お許しを.。 
ほんとうなんですか?ほんとうの
ほんとなんですか?
貴方は間違いなくほんとの あの有名な 
糸井さんですか? 
I can.t believe it.
 
わたくし奴の方は 真実です。
担当医はF病院.外科医.R氏。
(※原文は実名でしたが、仮名にさせていただきました)
すこし ひねくれた くら〜い感じの人。 
告知の問題何処吹く風 と 
あっけらかんに わたし と家族に 「死刑宣告」 
しかも 「あと2ヶ月」 
そんなのないですよねぇ。 
いくらなんでも 。うちのカミさん 
かなりのselfish woman そして強気の人 
それでも涙が みえました。
その時 感じました あぁやっぱり
いくらかは まだ好きなんなんだなぁ と 
医師の告知はまるで ひとごと。 
シヨックは翌日でした.。 

ま それはともかく お尋ねの件ですが 
「受けるだけではない 発信できる!」 これが一番です
しかもリアルタイムで。
 
次がホームページですね。 
物書きのプロ達が 
大きな机の無数の引出しからネタを摘みだし 
めし のタネにする。 
そのイージーな文を金を払って読む 
それが馬鹿馬鹿しくなっていたのです。 
くたびれましたので またあとで。御免。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

顔の見えないことだから、疑う人なら、
まだ疑うかもしれない。
でも、ぼくは正確な事実を求めているのではなく、
あいまいに見えるような真実のほうをほしい。
「うちのカミさん」という方とのいい感じの関係が、
また文面に薫っている。
悲劇として描き出せば、
どんなふうにでも悲しく色をつけられる絵を、
ぽんっぽんっと、ハードボイルドに投げつけるように語る。

どんな職業の人だったんだろう。
「死刑宣告」の猶予期間を過ぎて、
こういう文章を書けるって、
強いことなのか、
軽いことなのか、
根っから脳天気な人だということなのか、
いくら考えてみてもわからない。

自分だったら、どうなんだろう。
なんだか、ちょっと似たものを感じてしまった。
メディアを通じてしか知らないぼくという人間から、
返事が届いたということは、ある年代以上の人には、
かなりびっくりするようなことなのかもしれない。
たしかに、電子メールでなかったら、
やっぱり、こんな往復はありえなかったろう。

ぼくの質問に答えてくれた文は、
短いけれど、まったくインターネット的な感想だと感じた。
誰もが、発信すること自体を欲し楽しむために
文章を書いたり絵を描いたりすることは、
たしかにいままでのメディアでは考えにくい。
職業としてものを書く人たちが、
「ありもの」の加工で職業を成り立たせているだけとは、
いちがいに言えないとは思うが、
「おおぜいの見ず知らずのために表現された熱情」は、
インターネットの世界には無数に埋め込まれている。

メールの最後の、
「くたびれましたので またあとで。御免。」
という部分が、なんだか気にはなったけれど、
ぼくは、“癌爺”こと「ガンジーさん」が
実在することに、驚きながらも、ややほっとしていた。

(つづく)

2000-08-24-THU

BACK
戻る