『ヴェニスの商人』あらすじ

イタリアの都市ヴェニス(ヴェネチア)に住む
若者バサーニオは、ベルモントにいる富豪の娘ポーシャに
求愛しに行くための資金援助を
親友の商人アントーニオに求める。
あいにく全財産をあちこちの船に乗せて
投資中だったアントーニオは、
高利貸しシャイロックから借りることにする。
シャイロックは、ユダヤ人であるがゆえに
屈辱的な扱いを受けてきたにもかかわらず、
無利子で貸そうと言う。
ただし、期限までに返済できない場合は
アントーニオの肉1ポンドを切りとるという条件を出し、
アントーニオはその証文に署名する。

ベルモントでは、ポーシャは亡き父の遺言により、
金・銀・鉛の三つの箱から
正しい箱を選んだ男と結婚することになっていた。
「我を選ぶ者は、多くの者が望むものを得るべし」と
記された金の箱を選んだモロッコ大公と、
「我を選ぶ者は、己にふさわしいものを得るべし」と
記された銀の箱をあけたアラゴン大公は箱選びに失敗。
「我を選ぶ者は、持てるものすべてをなげうつべし」と
記された鉛の箱を選んだバサーニオが、
なかに美しいポーシャの肖像画を見つけて
ポーシャと結ばれる。

一方、ヴェニスではアントーニオの船が
一艘のこらず難破したとの噂が流れ、
金を回収できないと考えたシャイロックが
アントーニオの肉を求めて裁判を起こす。

ポーシャは男装し、
若き法学者に扮してヴェニスの法廷に現れ、
裁判を仕切る。裁判官としてポーシャは、
証文は有効だからアントーニオの肉一ポンドは
シャイロックのものであると宣言し、
シャイロックはナイフを振りかざす。
ところがポーシャは続けて、
血のことは証文に記されていないので、
血を1滴でも流せばシャイロックの命はないといい、
形勢は逆転。シャイロックは殺人未遂の罪に問われ、
財産半分を娘夫婦に譲ったうえ、
キリスト教に改宗するよう命じられる。
その後、アントーニオの船が無事港に戻ってくる。
(『あらすじで読むシェイクスピア全作品』河合祥一郎著より抜粋)