2018年1月、
「シェイクスピア講座」で
「ほぼ日の学校」は始動します。

そこに向けて、
いままさに「制作中」の様子や
学校にこめた思いなどを、
学校長・河野通和が
綴っていきます。

ほぼ日の学校長

河野通和(こうの・みちかず)

1953年、岡山市生まれ。編集者。

東京大学文学部ロシア語ロシア文学科卒業。

1978年〜2008年、中央公論社および中央公論新社にて
雑誌『婦人公論』『中央公論』編集長など歴任。

2009年、日本ビジネスプレス特別編集顧問に就任。

2010年〜2017年、新潮社にて『考える人』編集長を務める。

2017年4月に株式会社ほぼ日入社。

ほぼ日の学校長だよりNo.5

「派手な棚卸し」

楽しそうな会社ですね、とこれまでのメールマガジンを読んで下さった方々から言われます。ありがたい話です。

もっとも、いまのほぼ日の「楽しそうな」姿は、まるっきり天然というわけではありません。徐々に進化(?)を遂げてきた、それなりの歴史があるのです。

一例を挙げますと、「楽しさ」の極みをいくイベントが6月末にありました。由来を尋ねると、もともとはごく普通の管理業務でした。それが次第にほぼ日流に染まっていき、ある時ホップ、ステップ、ジャンプしたのです。そのジャンプした今年にいきなり遭遇して、「なんだ、これは!」と私は驚嘆したのです。

6月30日。決算を控えた棚卸しの日です。ほぼ日では担当部署だけでなく、乗組員が総出で行います。この習わし自体がユニークな上に、今回は直前に、こんな一斉メールが送られてきました。

<今年の棚卸しはゲストにレ・ロマネスクさんをお迎えし、
「派手な棚卸し」という企画になりました!

6月30日は、なるべく派手な服装でお越しいただけると
たいへんにありがたいです>

続いて、「派手」の語意が、わざわざ辞書から引かれていました。

【派手】よそおい・行動・態度が、はなやかで、人目をひくこと。

ドレス・コードも提示されます。

<カツラや衣装などの仮装品はみなさまに1点ずつご用意いたします。

それ以外の、なにか、自前で派手なものがあればぜひ当日ご用意いただき、
「行きは普通の格好、途中でどんどん派手になる」にご協力お願いできましたら幸いです>

社員一同バスに乗り込み、会社から商品倉庫まで移動します。車中で、あるいはバスを降りたあたりから、徐々に派手めになってほしいというガイダンスです。

前日にくじ引きで、仮装グッズが支給されました。私は銀色のマントが当たりました。昔懐かしい少年漫画のヒーローみたいな雰囲気ですが、ちょっとペラペラで、手に銀色の粉がくっつきました(ここで「危険」を察知すべきでした)。

今回参加してくれたレ・ロマネスクのTOBI(トビー)さんからもメッセージが届きました。

「下半期を強く生きるために、別の人間に生まれ変わる意気込みで棚卸しをしようではありませんか。カツラひとつつけるだけで、そうとう飛べると思います」

「おうちに眠っている服、酔ったときに買ったもの、お母さんに譲ってもらった意味不明の服、着るいい機会です。捨てる前に自分の棚卸しと思ってください」

「気合いを入れていただいて大丈夫です。そばにMAX=最大限(ぼくたち)がいますからね」

本来なら、倉庫で黙々と自社の在庫商品を数えるという地味な仕事が、まるでピクニック気分になったのです。この日の一部始終はテキスト中継(写真と文章で現場の様子をリアルタイムで伝える)されましたので、そちらをご覧いただければと思います。

中継を見ていた読者からは、熱いメッセージが寄せられました。

<癒されました。最高です。

棚卸しって間違ってはならない作業だから
ピリピリしがちだけど、
派手に仮装すればよかったのね>

<年々、ほぼ日の棚卸しがだんだんと
ただの棚卸しでは終わらなくなっているのが
楽しいです。

そして今年はモチベーションアップの
王様のような
TOBIさんたちがいらっしゃるので、
ますますおかしな方向へ向かっていて、
もはや棚卸しであって棚卸しではないのか!

いや、棚卸しですね>

<なんでひとんちの棚卸しが、
こんなにワクワクするんやろ>

多くの読者にとって、棚卸しは意外に身近で、メジャーなテーマだったのです。さらにおもしろかったのは、受け入れ側の倉庫会社の方々が、派手さに拍車をかけてくれたこと。荷を積み下ろしする大型エレベーターの中に熱烈歓迎の飾り付けがされていて、出迎えに現れた方はホンモノ以上のピコ太郎……。レ・ロマネスクさんらのフィナーレのライブがことのほか盛り上がったのは言うまでもありません。

いったいいつからこんなことになったの? と、ほぼ日の古参乗組員に尋ねると、2年前にオリジナル・ラブの田島貴男さんがスペシャル参加して、「歌う棚卸し」というテキスト中継をやったあたりでギアがトップに入ったとか。

ミュージシャンがよその会社の棚卸しに参加して、倉庫の商品をひたすら数えながら、一緒に歌をくちずさむという空前絶後のコンテンツ。チョー地味な仕事が「お祭り」化して楽しくなっただけでなく、作業が午前中で終わるという、チョー効率化を同時に達成したのです。

今回も、作業は猛スピードで完了し、昼のお弁当をみんなで食べて、午後には会社に戻りました。棚卸しに参加しなかった留守番組は、フタを開けると、むしろ気合が入っていました。意味不明のアラブ人、カッパ、アフロ、スケ番、サリー姿の麗人……思い思いのコスチュームで「派手な通常業務」にいそしんでいました。

「楽しい」は一日にしてならず。「同じやるなら、よりおもしろく」を追い求めた結果が、現在です。この意思がほぼ日をどこへ連れて行くのかはわかりません。ただ、同じところにとどまらないで、いかにワクワク感を高めていくか、という願いは「ほぼ日の学校」も同じです。学びは遊び、遊びは学び。

ところで、銀色のマントを羽織った私の顛末。細かい銀粉が首筋、耳裏、腕などにこびりついて、洗っても洗っても落ちません。まるで夏のなごりの日焼けのように、「派手な棚卸し」の勲章でした。

2017年10月18日

ほぼ日の学校長

「ほぼ日の学校長だより」は、
ほぼ日の学校長・河野通和がお届けするメールマガジンです。

「ほぼ日の学校」のはじまりや、これからの話、夢や想いを
週に1回、お伝えしていきます。
読みつづけていただくと、
耳寄りな情報が入ってくることも。
どうぞ、お楽しみに。

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