BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回 今日も朝から20種類!?

第2回 サンマの煮干しに導かれて

第3回 ウニラーメンと音の出る焼きそば

明けても暮れてもラーメン
第4回
1分でも早く食べたい!
糸井 「武蔵」さんの「ら〜麺」は
1杯700円ですが、初期の頃、
原価率の高さで有名でしたよね?
山田 最初の頃は食品コストだけで、
60パーセントくらい。
今は40パーセントほどになりましたが。
糸井 60パーセント?!
山田 バカですよねぇ(笑)。
初めの頃は、僕もまだ素人でしたね。
とにかく納得するものを、と追求していて。
でも流行るようになってキャパが増えると、
食材も安く仕入れられたりして、
コストが低くなってくる。
今はその分は余禄のお金と考えています。
店長クラスのスタッフによく言うんですが、
売上げのうち最低6割あれば、
俺らはめしを食える。
残りはお客さまに還元しようと。
儲けたい気持ちはあるけど、
お客さまは飽きやすいですからね。
売上げが上がった分を、商品でも内装でも、
お客さまへの答えとして
前面に出していかないと、
店の3年先はないと思っています。
糸井 小山さんのところのように、
大量に商品を作っているメーカーだと、
コストとの闘いはさらにシビアですね。
小山 ラーメンは、ほかの食品メーカーと比べると、
原価率はめちゃくちゃ高いと思いますよ。
糸井 あ、メーカーもそうですか。
ちなみに、昔からある
チキンラーメンの値段の変化って、
どうなってます?
小山 チキンラーメンは44年前には
35円だったんですよ。
当時、お店の中華そばが35円で、
それと同じです。
糸井 子どもの頃、『イガグリくん』という
テレビ番組で、
チキンラーメンのコマーシャルを
やってたんですよ。
「あれ、食いてえ」と思ったな。
でも、高くて。
小山 で、今は90円です。
カップヌードルは30年前に100円だったのが
今は155円で、
実際には100〜140円のところで
売られていますから、
ほとんど値が上がってないです。
物価の優等生と言われる所以です。
そこには開発から始まって、
コストダウンのための努力があったし、
一方で品質は上げていますから、
3分でもどる商品だけど、
1個に費やされている時間は無限大です。
糸井 待ってる3分間は、人が使った時間を
解凍してるんだ!
小山 基本的には企業ですから利益目標を
設定しながらやっていますけど、
商品単品では、必ずしも儲かるものだけを
世に出しているわけではないんですよ。
山田 利益のないものでも市場に出す?
小山 たとえば新製品をブランドとして
定着させるためだとか、
いろいろな戦略のもと、
経費を考えれば何億円とマイナスになるもの
もあります。
山田 カップヌードルは、
年間セールスはどのくらいですか。
小山 うちではカップ麺を
年間15、16億食くらい売っていますが、
それの3割から4割はカップヌードルです。
山田 すごい! それこそ国民食ですね。
小山 ちなみにカップ、袋を合わせた
即席麺全体では、年間53億食ですね。
糸井 即席麺と言うと……。
小山 私たちは、うどんもそばもラーメンも、
全部「即席麺」という言い方をしています。
麺とスープ、
それがあれば即席麺と言いますね。
法律上の定義としては、
農林水産省が定めるJAS規格
(日本農林規格)では、
「かんすい」が入っている麺が
即席中華麺になりますが。
山田 そうなんですね。
僕はかんすいを入れないで麺を作りました。
そしたらラーメンフリークの子から、
「これ、うどんスよね」と言われて。
でも、粉の配合を
まったくうどんじゃない方向から考えて
麺を作ったんですよ。
それで「俺が作ったんだから、ラーメンだろ」と。
小山 私はそれでいいと思います。
たとえば、麺にかんすいを入れなくても、
大量に卵黄や卵白を入れて
コシをつけることもできますしね。
糸井 即席麺の「即席」は
何分までを言うんでしょうねぇ。
小山 厳密に何分という定義はありませんが、
今、長いので5分くらいです。
山田 いちばん早いのは?
小山 「日清ラ王」のジェット湯切りで10秒です。
糸井 ジェット湯切り。(笑)
小山 お湯を入れたあと、かきまぜて
ジャッと湯を捨てるだけの行為です。
糸井 山田さんのお店では、注文を受けてから
出すまでの目標時間はありますか。
山田 うちは、お客さまに並んで
待っていただいてますので、
みなさん、座ったら1秒でも早く出てこい
と待ってらっしゃる。
ですから座って3秒から5秒。
「さあ食うぞ」と厨房を見たら、
「はい、お待ちどおさま」と出せるように
心がけています。
それも、おいしく食べていただくため、です。
糸井 即席麺を、よりおいしく食べるコツ
ってありますか。
小山 基本は、
「グラングランに沸かした熱湯を入れる」
―これにつきますね。
  (おしまい)

2004-02-18-WED

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