ほぼ日刊イトイ新聞
富士丸のとこに行きました。

第4回 犬と飼い主は、ふたごである。


糸井 犬の様子の見方というか
空気の読み方は、
人間の何十倍ですよね。
穴澤 そうですね。下手な人間より
全然空気読みますよね。
糸井 それはよくってそれはいけないんだ、
みたいな、その微妙な違い(笑)。
穴澤 例えばだれかが‥‥僕が女の子とかと
ちょっと軽い言い争いをするとします。
そうするともう空気を読んで、
見えるとこにいないんです。
僕がちょっと怒ってる、
空気とかっていうのをすごく察して。
八つ当たりはしたことないんですけど、
いやなんでしょうね、
僕が怒ってることが。
糸井 いやなんですね。
自分の生命の危機に
つながるんでしょうね。

穴澤 公園とかでも、
何かをするときに見てると、
明らかに自分が死ぬことを
回避するじゃないですか。
人間の子どもに比べたら、
その点は見てて
けっこう安心するんですよね。
糸井 何ていうんだろう、
いい意味で信用してないですよね、
幸せを(笑)。
穴澤 そうです。もちろん見てて
ハラハラするんですけど、
すごく危なそうなとことか、
絶対近寄らないですよね、
基本的に犬って。
糸井 犬の側からすると、
ご主人と自分のあいだっていうのは
もう双生児なんでしょうね。
離れて生きてるけども、
この人がいないと大変なことになると
思ってるんでしょうね、きっと。
穴澤 そうでしょうね。もうだって実際に、
ぼくが、こいつの、
「世界」なんでしょうね。たぶん。

糸井 ときどき、変なスイッチが入ると、
この人はその世界が
見えなくなるときがあるんです。
穴澤 でも、3歳ぐらいとかだったら、
そんなもんですよ。
糸井 そうなんですか。
穴澤 富士丸が落ち着いたのは‥‥
やっともう大丈夫だと思ったのは
3歳半ぐらいかな。
それぐらいまではやっぱり‥‥
人をかんだりとか
そういうことはしないですけども、
やっぱバカだなあっていうことを
けっこうしてましたね。
トイレシートを
ぐじゃぐじゃにしたりとか。
糸井 ブイヨンはね、そういうことはほとんど
苦労しないで済んじゃったんです。
来たときから、スリッパかむだとか
椅子をかむとかってことが
まったくなくて。
穴澤 へぇー、それはいいですね。
糸井 おしっこの失敗もなくて。
だから、しつけ、ほとんど
した覚えがないんです。
多分、子犬と長いこと一緒に
きょうだいでいたんで、
そこでかみ合ったり
いろんなことしてたんだと
思うんですけど。
穴澤 そうでしょうね。
2、3ヶ月まではやっぱり
一緒に置いといたほうがいいって
言いますよね。
糸井 みたいですね。だからそれは
感謝してますね、
その前の暮らしにね。

穴澤 「Say Hello!」ですね。
糸井 そうです、そうです。
あれはもうね、あの写真の枚数を
見ればわかるとおり、
イワサキユキオさんは、
もう付きっ切りでいたんでしょうね。
穴澤 すごいですよね。
糸井 あんな人はいない。
穴澤 だって、こんなに動く犬種なのに、
あんなにバッチリ撮ってて。
糸井 普通ありえないです(笑)。
穴澤 ねえ。また上手ですし、写真も。
糸井 明るいところで撮ってますよね。
ストロボ使わずにね。
穴澤 あ、そうなんですか!
糸井 ほとんど使ってないんじゃないですか。
穴澤 いやー、うまいですよ。
糸井 イワサキさんのおかげで、
ペットショップから来た犬と違う
苦労のなさはすごくありましたね。
穴澤 多分そうでしょうね。
ペットショップの犬とかって、
きょうだいから
すぐ引き離されることもあるって
聞きますし。

糸井 そうですね。富士丸のブログに
犬の引き取り手を探すバナーが、
あるじゃないですか。
穴澤 「いつでも里親募集中」ですね。はい。
ペットショップで20何万とか30万とかで
売られてる犬がいる一方で、
毎日普通に子犬とかが殺されたりしてる
現状をけっこうイビツだと
感じるんですよね。
僕としては単純に冷静に、
僕ができることをしたいというのと、
本当に知らない人が
けっこういると思うんです。
「犬を飼う」イコール
「ペットショップ」という
考え方がある。
でも里親募集では
普通に子犬がたくさん出てるので、
連絡して見に行ってあげると、
その20何万かは、かからないわけです。
20何万かけようと思ったら、
何年ぶんもの育てる費用に充てられる。
糸井 ああいう「お分けします」っていう
ところには、不純なものは
入っていないんですか。
穴澤 そんなに変なのはないですよ。
というか、あれで稼ごう、
というふうにはなっていないので。
普通に「もらってください」
というだけなんで。
ただ、あの中には、
家庭の事情で飼えなくなりました、
という人が募集をしたりするんです。
僕が「富士丸と暮らせなくなったので、
すごい大きい大人の犬ですけど、
だれかもらってください」
って書いているようなことなんです。
それはものすごく僕としては、
「違うんじゃないの?」
と思うところではありますけど。
糸井 そうかそうか。受け入れ先が
安定してくると、
そういう人が現れるわけだ。
でも、それは言ってられないですね。
引き取り手があるんで
安心して捨てる人が
増えるんじゃないか、
みたいなことまで考えたら、
キリがないですね。
穴澤 そうですね。
糸井 イギリスなんかは
犬屋がないんですって?
ヨーロッパっていうのは基本的に。
穴澤 いわゆるブリーダーから
直なんですよね。
糸井 そのほうが仕組みとしては
安心ですよね。
穴澤 そうですね。で、もう
お腹にいる時代から予約して、
みたいな制度もあるっていうので、
それはそれで全然
いいことだと思うんです。
例えば、僕は大きい犬が好きですが、
それは好き嫌いの問題ですよね。
ただ単に、それとは別に
「雑種はかわいいよー」
というのがけっこうあって。
もちろんこの犬種が好きだ、
という人を批判するつもりは
まったくないんですけど。

糸井 富士丸くんは、それの典型ですよね。
シベリアン・ハスキーと
コリーのミックスですもんね。
穴澤

そうなんです。
僕が一番、‥‥まあ、
ないと思うんですけど危惧してるのは、
富士丸がこうして
知られるようになって、
かわいいって思ってもらって、
「富士丸がほしい」っていう人がいる。
で、あるブリーダーが
ハスキーとコリーを‥‥っていうのが
僕が一番望まないことです。

糸井 可能性がゼロではないですからね。
穴澤 富士丸をかわいいっていうんだったら、
もし犬を飼ってるんだったら、
自分ちの犬かわいがって、と。
ブイヨン ウー、ウー‥‥(おもちゃを探す)
糸井 ブイヨン。富士丸くんはね、
あんまり嬉しくないと思う、その行為。
穴澤 いや、大丈夫ですよ。
富士丸、全然自分のおもちゃとか
人に取られても平気なんです。
糸井 いい子だね。
穴澤 おっ。新しいの探してきたね。
糸井 最初のを破壊しちゃって‥‥。
穴澤 全然いいですよ。
破壊するものなんですよ、それは。
糸井 破壊しちゃいけないものは
しないんですけど、
していいものはしますね。
穴澤 すごいいいことだと思います、全然。
どうぞどうぞ。
(おもちゃを渡す)
糸井 あ、それはね、壊れます、完全に。
穴澤 全然壊していいんですよ。
おもちゃは壊れるためにあるんです。
いいですよ、全然。

<続きます>
2007-02-13-TUE
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