ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2010-03-02-TUE

贈収賄疑惑、ふたたび?

イタリア首相でありACミランのオーナーである
シルヴィオ・ベルルスコーニが
審判たちに対して
カルチョーポリを行なっているのではないか、と、
いまイタリアサッカー界で話題になっています。
カルチョーポリ、それはサッカーにおける
贈収賄疑惑のことです。
2006年以来となるこの疑惑をめぐり、
ことは、かなり大きくなりつつあります。
先週の記事の続きともいえるこの騒ぎ、
いったいなにが起きているというのでしょう?

コルドバとモウリーニョの「ショー」。

その疑問を最初に呈したのは、
インテルのモウリーニョ監督とモラッティ会長でした。

対ACミランのミラノ・ダービーの直後、
圧倒的勝利を収めた議論好きのモウリーニョ監督は、
こんな発言をしました。
多くの人々がインテルの優勝を予想している
カンピオナートを、
やりなおそうとしている審判たちがいる。
それも、ACミランへの好意のためにである、と。
カンピオナートの順位でも群を抜いて1位の
インテルの監督が言うのですから、
この発言はたいへん驚きをもって迎えられました。

インテルのモラッティ会長も、
「隠れた操作がなされている」と話し、
モウリーニョの発言を煽りました。
そして、問題となる、2月21日土曜日の、
インテル対サンプドリア戦を迎えます。

前半戦で、タリアヴェント審判は
サミュエルにレッドカードを示しました。
それを見たコルドバとモウリーニョが、
イタリアではどの監督も見せたことがないような
「ショー」を展開します。
そのショーは、まるで手錠をかけられたように
腕を交差する動作から始まりました。
このジェスチャーはテレビカメラの前で何回も行われ、
まるで「監獄に行く人間が、ここにいる」と
言っているかのようでした。

franco

そして後半戦、
9人で応戦したインテルは
同点に追いついたのですが、
試合後もモウリーニョは、彼にしてみれば
イタリアサッカーは不誠実だと発言し、
ショーを繰り広げつづけました。
イタリアのサッカーは不誠実だ、
でも彼がイタリアでの監督を辞める時にのみ、
彼自身の誠実さは変わりなく残るだろうと
発言しつつ‥‥。
(ちなみに、モウリーニョ監督はポルトガル人です。)

その結果、
イタリアサッカー連盟のアベーテ会長は、
彼の発言はイタリアサッカーを誹謗中傷し、
暴力を先導するものであるとして、
モウリーニョに3試合の出場停止と
4万ユーロの罰金を命じました。

franco

こうしてインテルが悪戦苦闘している間に、
ACミランは対バーリ戦で、
バーリにペナルティーキックを
与えなかった監督のお陰で勝利し、
先の水曜日にも同じことが、
フィレンツェでの対フィオレンティーナ戦で
繰り返されました。

ACミランの好調の理由がまさか‥‥。

インテルがUEFAチャンピオンズ・リーグで
チェルシーに2対1の勝利をおさめた一方で、
ACミランはフィレンツェで、
雪のために中止された試合のやり直しを
フィオレンティーナと戦い、
ペナルティーキックのおかげで勝利したのでした。
しかしこれがフィオレンティーナに好意的な
ペナルティーキックでなかったのは、明らかです。
カンピオナートにおけるこの2勝で、
ACミランは4点差でインテルに近づき、
再びスクデット争いに加わりました。

この2つの勝利は、サン・シーロ競技場での
対マンチェスター・ユナイテッド戦の負けを、
ACミランのティフォーゾたちには
さぞやショックだったはずの、あの敗戦を、
いくらか忘れさせてくれました。
この待ちに待たれたルーニーとベッカムの対戦は、
ルーニーの素晴らしい2本のゴールで
マンチェスターが勝利しています。

franco

franco

そんなわけで、いまイタリアで
ベルルスコーニの審判たちに対する
贈収賄疑惑が話題になっているのです。
振り返ればイタリアでは2006年に、
カルチョーポリが発覚し、
ユヴェントスがセリエBに降格、
ACミランとフィオレンティーナ、
そしてラツィオにも、
ペナルティーが課せられたことがありました。
でも今回の主役は、
前回フィオレンティーナを操って
主役をはったルチアーノ・モッジではなく、
なんということか
首相のベルルスコーニその人なのです。


訳者のひとこと

文中にカルチョーポリcalciopoliという
単語を残しました。
これはもともとある
タンジェントーポリtangentopoli
贈収賄疑獄、贈収賄のはびこる都市
という単語から、
カルチョに絞り込んで作られた単語と
思われます。
こういう柔軟さも、
イタリア語の面白さだと思います。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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