ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-07-08-WED

フランコさんのバカンス通信 その1
モンテプルチアーノの吸血鬼。


franco

イタリアでは、夏のバカンスシーズンが始まり、
ぼくも、別荘のある
トスカーナ州のモンテプルチアーノを訪れています。
花とワインの街で知られているこの街なのですが、
“ヴァンパイアと狼人間の地”に選ばれて、
全世界の映画館に登場することとなりました。

映画の舞台になったモンテプルチアーノ。

世界遺産の街でもあるモンテプルチアーノには、
まさに宝といえる建物が連なり、
なにやら暗示的な細く薄暗い路地もふくめた街全体が、
中世からルネサンスにかけての
古いたたずまいを残しています。

franco

そうであるからこそ、
映画「トワイライト〜初恋〜」の続編となる
「トワイライト・サーガ『ニュー・ムーン』」
最後の場面に、このモンテプルチアーノが
ロケ地として選ばれたのでした。

原作本にイタリアの街として登場するのは、
同じトスカーナ州のヴォルテッラですが、
この映画の監督はモンテプルチアーノを選びました。
「悪」に立ち向かう「善」という永遠の構図の中で
ヴァンパイアが狼人間同盟と戦うには、
イタリア中で最も適した街だ、というわけで。

モンテプルチアーノの家々、
特に、かつては敵から街を守っていた
中世の壁の内側にある古い家々は、
まるで空と大地の間に吊り下げられているようです。
そして、家ごとに窓辺には
たくさんの植木や花の鉢が置かれています。

franco

穏やかな日には太陽の光を集め、
ぼくは本当に素晴らしいと思うのですが、
雨の日にはその雫を受けながら
その家々をさらに優しく美しいものに
しているのです。

franco

そしてさらに、その優しさと色彩が、
良質の葡萄の木の育つ丘に囲まれているこの街を、
いっそう美しく彩っています。
このあたりの葡萄からは、
2000年前の古代ローマから知られ、
今も世界的に高品質を誇る
気高く素晴らしいワインが作られます。
ここから20kmほどのところにあるモンタルチーノは、
世界でもトップクラスに数えられる赤ワイン、
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの産地です。

そして、花々と葡萄畑の中の小径や中世の墓地で
ヴァンパイアと狼男たちが戦いをくり広げれば、
世界中の観客たちを身震いさせられると
「トワイライト・サーガ『ニュー・ムーン』」の
制作者たちは判断したのでしょう。

これは、「ニュームーン(新月)」の時に
狼に変身する人たちの家族を中心に、
子どもから年寄りまでだれもを襲い打ちのめす
悪の勢力と、「偉大な愛」の物語です。
世界中で記録的な興行収入を出したヒット作
『トワイライト〜初恋〜』に続けとばかり、
続編「トワイライト・サーガ『ニュー・ムーン』」も、
公開に向けて着々と準備を整えています。

花の街が、吸血鬼の街に?!

それにしても、モンテプルチアーノが
ヴァンパイア伝説の中心地だなんて、
かつて例を見たことがありません。
映画の撮影はすでに終了していて、
夏の観光客用の宣伝にもそのシーンが
使われています。
中世という過去の面影を強く残す広場や道、
墓地の神秘的な雰囲気が、
この手の物語の背景にピッタリなのです。
撮影中は、大人よりも
子どもたちが大騒ぎだったようです。
怖がるどころか、むしろ興味津々なまなざしで。

franco

それにしても善と悪の交差する
神秘的でミステリーな映画が流行っていますね。
「ダ・ヴィンチ コード」「天使と悪魔」など、
これらは根底でカトリック教会のミステリーを
あつかっているように思えます。

franco

「トワイライト・サーガ『ニュー・ムーン』」
への期待は、伝染するかのように広まっています。
「ハリー・ポッター」や「指輪物語」なども
そうですが、ファンタジー物が大人気ですね。
たぶん、現実にうんざりして、
重く考えたくない人々が、たくさん、
いや、たくさんすぎるほどいるからでしょう。


訳者のひとこと

ふつう狼男というのは
「満月」に変身するのですが、
「ニュームーン(新月)」では
新月に変身するのですね。

狼男といえば、1984年の映画
「カオス・シチリア物語」を思い出します。
原作はノーベル賞作家ルイジ・ピランデッロで、
タビアーニ兄弟監督が映画化しました。
オムニバス形式の中に「狼男」の話もあります。
こちらの舞台はシチリアですが、
全編を通して映像の美しさに圧倒されます。

「トワイライト・サーガ『ニュー・ムーン』」は
日本では、11月に公開予定とのことです。

 

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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