ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。
2008-06-03-TUE
インテルの監督交代劇。

カンピオナート3連覇を決めたばかりのインテルですが、
監督の交代騒ぎに揺れています。
しかも、インテルのやり方が、
嘘や秘密にあふれた、まるで茶番劇なのです。

そもそも、インテルのカンピオナート3連覇を導いた
マンチーニ監督を替えるというのですから、
議論を呼ばないわけはありません。
たとえ、以前から次期監督候補かとささやかれ、
この人以上に条件を満たす監督は他にいないと目される
ジョゼ・モリーニョ、その人に交代するのだとしても。



17年間取れずにいたスクデットを
インテルにもたらしたマンチーニ監督なのに、
なぜ富豪の石油業者であるモラッティ会長は
交代させようというのでしょうか‥‥
これではモラッティの気まぐれだと思われても
しかたありません。

モラッティは、たとえば新聞紙上に踊る
「これはマンチーニのインテルだ」
というようなフレーズは、
もう見たくないと思っているのでしょう。
彼が雇っている監督の方が
彼より人気者なのは嫌なのです。

彼は監督交代の手はずを密かに整えていました。
すでに3ヶ月以上も前にモリーニョと
秘密裏に合意していたといいます。
3個めのスクデット獲得のお祭りのあとになってから
マンチーニにどう伝えるか、それに困ったのも
モラッティ自身なのですけどね。



マンチーニ、モラッティに怒る。

モラッティとマンチーニの話し合いは
5月27日の火曜日に、
ミラノ中心街のセルベッローニ通りにある
モラッティの豪華な家で行われました。

この会談は荒れ模様だったそうです。
マンチーニは、モラッティがこの半年間ずっと
彼に嘘をつき続けたことを非難しました。
つまり、マンチーニは2012年まで
インテルに残るとモラッティが公言した時には、
監督交代はすでに決めていたのに、
あれは嘘をついたということではないか、と



マンチーニの契約の中には、
むこう5年間の全契約金支払い、
要するに総額にして手取り約3千万ユーロを
マンチーニに支払うという条項が、
盛り込まれています。
もちろんこれは、
モラッティほどの富豪の実力者にとっても
莫大な金額です。

この件についても、
モラッティは茶番めいた言動を見せます。
UEFAチャンピオンズ・リーグで
リバプールに敗退した後の、
マンチーニのいくつかの発言が
チームを不安定にさせたとして、
モラッティはマンチーニを解雇したのです。

これは明らかに、3千万ユーロを
マンチーニに支払わないための言い訳です。
実際のところ、カンピオナート最終段階でのインテルは、
監督の発言にダメージを受けているようには
見えませんでしたし、
結果としてスクデットを勝ち取っているのですから、
マンチーニのせいでチームが
不安定な状態に陥ったという言い分は、
あまり説得力がありません。

マンチーニ監督のことに加えて、
ティフォーゾたちがモリーニョを
あまり歓迎していないらしいことも、
モラッティに影を落としています。
インテルのティフォーゾたちは、
モリーニョがデコとエトー獲得のために
イブラヒモヴィッチをバルセロナに渡すのではないかと、
心配しているのです。
彼らはイブラヒモヴィッチをとても愛していますから。



さて、モリーニョのインテル行きのニュースは、
メルカートに爆弾を仕掛けることになりました。
このポルトガル人監督は、
4年前にチェルシーを改革したように
インテルを国際的に偉大なレベルのチームにしたいと、
当たり前に思っていることでしょう。
チェルシーのオーナーである富豪のロシア人
ロマン・アブラモヴィッチは、
当時モリーニョの言うことにちゃんと耳を傾け、
すぐに数千万ユーロを費やして監督の希望を叶えました。
その結果、チェルシーはカンピオナートに2度優勝し、
世界でも最強のチームのひとつになったのです。

モリーニョは、アブラモヴィッチに使わせたと
同じくらいの金額を、
モラッティに使わせることが出来るのでしょうか?
今後のインテルに、数百万、
いや億単位の闘いが潜んでいるとなれば、
メルカートが騒がしくなるのも当然です。


訳者のひとこと

モリーニョはチェルシーにもどるという説も
あったようですが、こっちに来ましたか。

嘘も方便という言い方が日本語にはありますが、
イタリア人の知人が言った
「賢い人は、ずるい人でもある」
という言葉を思い出しました。

翻訳/イラスト=酒井うらら



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