フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ダンテ通りの暴走自転車。

ミラノの中心街、ドゥオーモ(大聖堂)広場から
コルドゥーズィオ広場を通ってスフォルツェスコ城をむすぶ
まっすぐな道をダンテ通りといいます。
きょうはこの道のことをお話しします。


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なつかしい、安全な
ダンテ通りを取り戻そう!

ここにはヨーロッパでいちばん距離の長い
安全地帯があります。
本来は人々が安心して散策し集える
サロンのような場所でした。
その役割を果たさなくなってから、
ずいぶんと年月がたってしまい、ついに
寒々しいほど悲しい状態になってしまったダンテ通りを
あるべき姿にもどそうという動きが、
ミラネーゼたちのあいだで起っています。

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△ダンテ通り、向こうに見えるのがスフォルツァ城

魂のない電球を点したり消したりして
まるで生きているかのように切り替えるスイッチのような、
目にはみえない“on-off”スイッチが、
どうも時の流れの中にもあるようです。。
ミラノの心臓部の押しボタンであったはずのダンテ通りが、
まるでそのスイッチでoffにされたみたいですから。
散歩をしたり、友だちと待ち合わせたり、
ショーウィンドーをながめては「素敵だね」と喜んだり、
またはべつに何もしないで
のんびりとそこにいるのも良いでしょう、
そういう楽しい場所であったはずのダンテ通りは、
今や、早足な旅行者が駆け抜けていくだけです。

これは、もちろんミラノ市民の望む所ではありません。
彼らはレティツィア・モラッティ市長にあて
抗議の手紙やメールを送りました。
彼女はといえば、選挙キャンペーンの時に、
たぶん当選しても守れない事を知りながら、
多くの公約をしたのですが‥‥‥

さてダンテ通りは、
子どもたちを中心街に連れて来たいと思う
親たちのサロンでもあるはずでした。
子どもたちが目を見開いて
洋服やおもちゃのウインドゥを見られるダンテ通りは、
大人たちにとってのモンテナポレオーネ通りのような
魅惑的な通りだったはずなのです。

旅行者たちは到着するやいなや店を見渡し、
もっとシックなところがいいわと
モンテナポレオーネ通りやスピーガ通りへ
そそくさと逃げ去ります。
あちらにはアルマーニ、グッチ、プラダ、
ドルチェ&ガッバーナといった、
ミラノを世界のファッションの中心地のひとつにした
ファッションの神々のウィンドゥがありますからね。
でも、それはかまいません。
だって、ダンテ通りは、最先端の
粋なファッションが並ぶというよりは、
メルカート(露店)が立ったり、
伝統的なおもちゃ屋さんがあったり、
子どもたちが何の問題もなく
夢を見られる場所だったのですから。

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△ダンテ通り、冬の飾り付け

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△ダンテ通り、青空古本市

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△ダンテ通り、露店

ところが、混乱と危険に満ちているダンテ通りには、
子どもの手をひく母親の影すらないことが多くなっています。
いまやここは注意深く避けて通るか、
もし通るならば、親たちは、一瞬も子どもから
離れられない場所になってしまいました。
それほど子どもにとっての危険が現実にそこにあるのです。
この「てくてく歩き」が似合い、
猛スピードが似合わない通りが、
今は駆け抜ける自転車に占領されています。

モラッティ女史は
立ち上がってくれるだろうか。

昼のダンテ通りでは、
お金を上手に使うので歓迎されている
日本人旅行者たちが叫び声をあげています。
急いで通り抜ける自転車乗りたちのせいです。
ヨーロッパで一番長いこの「安全地帯」には、
自転車専用の走路は1メートルだってありません。
カイロリ広場からサン・バビラ広場までの地域も、
ころぶ人や大声で脅す人や
罵詈雑言を吐く人々があふれています。

だれもが走るように通り過ぎるミラノでは、
首がねじれてしまいそうです。
こんな混乱のなかでは、
見たい物をゆっくりと見ることなんて、
だれにもできません。

天国であるはずのダンテ通りは、
急いでいる人たちばかりでパンクしそうです‥‥。

ミラネーゼ、旅行者、学生、
攻撃的な金融業者(証券取引所が近くにあります)、
店員、バールの店主、ブローカー、
ダンテ通りにはあらゆる種類の人々がいますが、
みんな急いでいるばかりで、
一般市民がくつろいでいる姿は見受けられません。

そこで、市民たちは行動を起こしたわけです。
彼らはダンテ通りが本当に歩行者のための
「歩行者用安全地帯」になるようにと、
ミラノ市長にたいして現状の不満をもうしたて、
抗議しています。
今のところ民間レベルですけどね。

ミラノ市民たちはレティツィア・モラッティ市長に向かい、
「ダンテ通りは死んだ」とまで言いました。

そしてレティツィア・モラッティが、
ダンテ通りを再生してくれるのを待っています。

Letizia&ciclisti

 

訳者のひとこと

大都市の宿命でしょうか‥‥‥
暴走自転車は日本でも問題になっていますね。

渋谷なども久しぶりに行くと、
人が多すぎて、
私などは「首がねじれそう」になります。
それはそれで面白いですけどね。

以前に、ダンテ通りのお店で見た
「大理石製のチェス一式」を思い出しました。
素晴らしく美しかったのですが、
重いし、チェスはできないし‥‥‥で、
買うのはあきらめたのでした。

翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-10-23-TUE

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