フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ACミランとインテルの奇妙にねじれた運命。


スポーツの秋が始まりましたが、
イタリア3大サッカーチームのひとつであるインテルは、
チャンピオンズ・リーグで、
ジーコ率いるフェネルバフチェに
苦すぎる負けをこうむりました。
ACミランはカンピオナートで、
がっかりするようなスタートを切りました。
シーズンが開幕したばかりというのに、
すでにこの2チームはメルカートの事を考えています。
3番目の大チームであるユヴェントスは、
セリエBで1年を過ごした後に
セリエAに戻ったばかりで、
当面はまだ再構築の段階にあります。

ACミランとインテルは
同じミラノをホームとするチームですが、
双方の運命といいますか、
たどる道のりは少々風変わりです。
みなさんもご存知のように
ACミランの会長はベルルスコーニ、
インテル会長はとモラッティです。
ベルルスコーニは、
ACミランを可能な限り勝たせたいのですが、
どうも目標を「国際的レベル」に定めているようで、
国内リーグのカンピオナートには
あまり身を入れていないような印象があります。
インテルも勝ちたいのはやまやまですが、
国際的なレベルにはまだ距離があることを
認めざるを得ません。
それでいてカンピオナートでは、
今年もスクデットを勝ち取りそうです。

このねじれ現象が、
今期はどう展開するのでしょうか。

ACミランのさしあたっての目標は。


まずベルルスコーニのACミランの
さしあたっての目標は、
来る12月に日本で行われる世界選手権に勝利することです。
ベルルスコーニは、経験の豊かなエマーソンと、
将来有望な18歳のパトを、すでに入手しています。

ただベルルスコーニは“全てに”勝利したいわけですから、
来期のカンピオナートまでを見越して、
バルセロナとますます論争中のロナウジーニョに、
新たにコンタクトをとりました。

1億ユーロを提示すると噂されていますが、
レアル・マドリードが
現在ACミランでプレイしているカカ獲得のために、
まさに同じ額を提示するだろうとも言われています。

ベルルスコーニがカカを手放すことは
あり得えないことでしょうけれど、
その一方で、バルセロナがロナウジーニョを売ることは、
もしかしたら、あるかもしれません。

カカ、パト、ロナウジーニョのトリオを夢見つつ、
ACミランはバラックを補強のために入れようとしています。
これは来年1月になるでしょう。
バラックはドイツ人チャンピオンで、
現在はチェルシーに在籍しているものの、上手く行かず、
モウリーニョ監督は敵だと公言するほどでした。
その監督は去りましたが、
バラックは今もチームを変えたがっていますので、
ACミランに来る可能性は考えられます。

世界新記録の精算額!


ここでまたACミランとインテルの
奇妙にねじれた運命が顔をのぞかせるのですが、
そのモウリーニョ監督こそ、
かねてからモラッティが望んでいる人材なのです。

インテル会長のモラッティは、いまや、
マンチーニ監督とフィーリングが合いません。
もしもインテルがカンピオナートに優勝できず、
チャンピオンズ・リーグで
最悪でも準決勝線に残らなかった場合、
彼を解雇するかもしれません。
マンチーニは2012年までの契約を持っていますので、
その分の支払いをしてまでも、という意味です。
その際の支払額は約2400万ユーロになるはずで、
これは世界新記録の精算額ということになります。

このように金に糸目をつけずに
自身のサッカーチームの強化を計れる会長は、
イタリアではベルルスコーニとモラッティの2人だけです。
この2人がチームのために、
ここ10年間でばらまいた金額は、
それぞれ5億ユーロを上回ります。
彼らはイタリア屈指の富豪オーナー会長なのです。

イタリアの他のチームたちは、
これをただ見つめています。

たとえばASローマですが、
技術面で大変にレベルが高く、
完璧に優れたサッカー的スペクタクルを
展開できるチームでありながら、
チームをより強化するための大金は使えません。
株式会社だからです。
大勢いる株主たちの手前、
世界新記録の額をはたくなど、もってのほかです。
これはユヴェントスも同じで、
ティフォーゾの数は最多とはいえ、
こんなふうに大金は使えないでしょう。

そういうわけで、
ベルルスコーニとモラッティは、
それぞれACミランとインテルの強化のために
自分の一存でいくらでも出費できますが、
他のチームの会長たちは、
それを傍観するしかありません。

サッカーにおいて金銭は全てではないと
よく言われますが、
だれがACミランとインテルに
それを納得させられましょうか‥‥?

訳者のひとこと
『マンチーニ監督とはフィーリングが合わない』の
フィーリングは、フランコさんの原文でも
英語でfeelingと、イタリア語に混じって書いてありました。

ヨーロッパでは、以前は公用語といえば
フランス語でした。
英語は「サービス業」などの人たちが、
必要にせまられて学ぶもの、
ハイソサイエティーたちはフランス語必修、
そんな感じだったのです。

イタリアとフランス、
たぶんヨーロッパの中では
英語の普及率が遅い国なのですが、
そうも言っていられない時代のようです。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-09-25-TUE

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