フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

リッピ前監督は、どこへ行くのか?


久しぶりに見たイタリア代表アズーリの前監督である
マルチェッロ・リッピの、
雪のように白い髪と海のように青い瞳は、
9ヵ月前と同じでした。
そして、勝利への意欲も、
まったく変わっていないように思えました。
止まることを知らない時の神も、
マルチェッロ・リッピのために
特別なはからいをしたのかもしれません。
彼がイタリアをW杯で優勝させてから9ヵ月後の今、
彼はまた新たにサッカーの世界で
大きな決戦をくり広げる準備を、
──特に不可能とも思える決戦の、準備を整えました。

昨年のちょうど今ごろ、
リッピ監督は‥‥


昨年のちょうど今ごろのイタリアは、
W杯での勝利など不可能に思える状態でした。
難攻不落のチャンピオンたちを擁する国々──
ロナウジーニョ、ロナウド、カカを擁するブラジル、
バラックのいるドイツ、
テヴェスとメッシのアルゼンチン、
そしてアンリとジダンのフランスらは、
快調なスタートを切っていました。
しかしW杯の試合が進んでいる中で、イタリアでは、
審判買収という前例の無い大スキャンダル論争が
勃発していました。

イタリア代表アズーリには、
審判買収で訴えられていた
ユヴェントスとACミランの選手たちが、
たくさん出ていました。
ユヴェントスのブッフォン、カンナヴァーロ、
ザンブロッタ、カモラネージ、デル・ピエロ、
そしてACミランのガットゥーゾ、ジラルディーノらは、
テレビや新聞による批判に連日のようにさらされて、
神経のバランスをくずす恐れすらありました。

しかしマルチェッロ・リッピ監督は
アズーリたちを世間から隔離し、
彼らを裕福で甘やかされたサッカー選手としてではなく、
まるで戦士たちのようにひとつの軍団として
まとめあげてしまったのでした。

この上なく優秀だったのは、
選手たちよりむしろマルチェッロ・リッピ監督でした。
イタリアの勝利は彼の名前に
強くつながれて残ることでしょう。

そのマルチェッロ・リッピが代表監督を退き、
しばしのブランクを経た今、
再びメルカートに登場しました。
彼はやはり世界チャンピオンの監督として、
国内外の多くのチームから望まれているのです。

ACミランか、
はたまたチェルシーか?


イタリア国内では、
ACミランが監督交代の可能性をもっています。
シルヴィオ・ベルルスコーニ会長が、
ヨーロッパ内でも世界でも短期間で
上位に戻ることのできる、
「別格のACミラン」というものを望んでいるのです。

現監督のアンチェロッティのACミランとの契約は
2008年までですが、
UEFAチャンピオンズ・リーグで優勝すれば、
今シーズンの終わりでの解雇は無いだろうと
確信しています。
アンチェロッティは、
ぼくらが一緒に出演したテレビ番組で、
「私は、まるで家族のように、
 ACミランの一部分なんです」
と、語りました。

ところが、ベルルスコーニ会長は、
マルチェッロ・リッピを手に入れるという考えを
ずいぶん意欲的に持っているようです。
アズーリ監督としての将来が準備されつつある
アンチェロッティ代わって、
この6月末にリッピがACミラン監督になる可能性が、
まったくないとは言い切れません。

ただし、チェルシーもまた、
マルチェッロ・リッピを望んでいるようです。
チェルシー会長であるロシア人の富豪アブラモヴィッチは、
モウリーニョ現監督にあまり満足していませんから、
もしUEFAチャンピオンズ・リーグに勝てなかった場合は、
ベルルスコーニ相手に
マルチェッロ・リッピ獲得合戦を
することになるかもしれません。

いずれにせよ「世界チャンピオンの監督」
マルチェッロ・リッピが、
どのクラブチームの監督もしないまま
もう1年過ごすことは無いでしょう。


訳者のひとこと
ドイツW杯さなかのスキャンダル騒動中、
スキャンダルの大親分とも言うべきモッジ氏と
マルチェッロ・リッピ監督の
つながりが明らかになった場合には、
アンチェロッティがアズーリ監督を
任されるのか? という予想もありました。
ずいぶん昔の話のような気もしますが、
まだ1年も経っていないのですね。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-03-27-TUE

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