フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

夏のメルカートに向けて。


2007年2月28日は、
イタリアサッカー史に残る日付けになるでしょう。
インテルが17連勝を記録した日、です。
これは100年以上も、
どのチームも達成したことのない記録です。

もはやセリエAの1位にいるインテルの、
2位であるASローマに対する優勢はゆるぎなく、
インテルはじつに18年ぶりに、
フィールド上でスクデットを勝ち取ろうとしています。
フィールド上で?
そう、インテルは昨年もスクデットを手にしていますが、
ぼくもくり返しここで書いているように、
それはスポーツ裁判によってもたらされたものです。
当時の1位と2位であったユヴェントスとACミランが
ペナルティーを受けるような不正をしたために、
3位にいたインテルにまわってきたスクデット、
そんな印象が、ぬぐいきれません。

しかし今回インテルが打ち立てた連勝新記録は、
ひとつの時代を作る出来事であり、
夏のカルチョ・メルカートに
反映されることになるでしょう。

モラッティは勝てる選手の獲得のためなら
「どんなことでもする」と。


3年来インテルの監督をつとめている
ロベルト・マンチーニは、
(マッシモ・モラッティ会長のもとで
 こんなに続いたというのも、
 かつて無かったことですが)
2011年6月30日までの、
年俸400万ユーロという豪華な契約にサインしました。
さらに会長から監督へのプレミアムとして、
世界的な別格選手を一人、
もしかすると二人くらい買ってもらえそうです。

というわけで、インテルはより強くなるために、
ペナルティーを受けて苦戦しているACミランは
偉大さをとりもどすために、
ミラノの街をホームとするこの2チームの決戦の炎が、
次のメルカートで燃え上がることになるでしょう。

ACミランのシルヴィオ・ベルルスコーニ会長は、
もはやイタリア首相ではないとはいえ、
成功者として、また人気者としての
名声は失っていません。
現政府の勢いが弱いことから、
ベルルスコーニは新たな選挙の時に向けて、
自らがかつてかかげていた「勝つ男」のイメージを、
ふたたびかかげようとしています。

彼は1月に、ACミランのイメージを建て直すべく、
ロナウドを購入しました。
そして期待のロナウドは、
ACミランのメンバーとしての最初の数ゲームで
ゴールの数々を放ち、
チームの勢いを高めることに貢献しました。
しかしこの夏のメルカートに向けて、
ベルルスコーニはさらに闘いの火花をちらす
準備を進めています。

まずはユヴェントスからの
ブッフォン獲得をねらっています。
ペナルティーで今期は
セリエBに落ちていたユヴェントスは、
来期はセリエAに復帰するでしょうが、
その野望も経済も「降格」という事態で
ぼろぼろでしょうから、
目玉の選手であるブッフォンであろうが
トレセゲであろうが、
メルカートにかけることもあり得ます。

ブッフォンという世界一のゴールキーパー獲得については、
ベルルスコーニはすでに列の先頭に立っています。
「もし彼がメルカートに出されるなら、
 彼をACミランに入れるために
 あらゆる犠牲をはらう」と公言してもいます。

ACミランは6月の終わりには、
契約の切れるネルソン・ディーダを失います。
これは、ベルルスコーニとも
すでに合意のことです。
そこでブッフォンを入れることができれば、
技術面でもイメージ面でも大きな一撃となるでしょう。

その一方で、ベルルスコーニは
ロナウジーニョのことも考えています。
しかしこちらについては、
闘う相手はひとりではありません。
まずバルセロナが、
この別格選手を手放したがらないでしょうし、
さらにインテルのライバル心も障害となり得ます。

インテルが同じくバルセロナのメッシに
目を付けていることから見れば、
インテルはロナウジーニョそのものが欲しいのではなく、
そうすんなりとACミランの思い通りにはさせない、
と考えている可能性があります。
スクデット獲得だけでなく、
創立100年の祝いも控えているインテルです。
マッシモ・モラッティがメッシ獲得について、
「どんなことでもする用意がある」
と語っているのも、うなずけますね。

いずれにせよ、バルセロナが
ロナウジーニョやメッシを売りに出すとは、
全く考えられないのですが、
もし仮にモラッティが、
このアルゼンチン人のメッシを売ってくれるように、
バルセロナのお偉いさんたちを
説き伏せることができたとして、
そうなればメッシ無きバルセロナが
ロナウジーニョをACミランに渡すなど、
もっとあり得ない事態になります。

モラッティは本当にどんな事でもするでしょう。
連続勝利の記録を打ち立てたのち、
サッカー選手獲得の費用の面でも、
インテルが新記録を出すことはあり得ます。
メッシのためには8000万ユーロまで
支払う用意があるというのですから。
これは世界中のどのチームも、
いまだかつで支払ったことのない額です。


訳者のひとこと
ベルルスコーニさんですが、
昨年の秋に演説中に倒れて
不整脈が発覚したものの、
12月にはアメリカに渡って
手術を受けました。
まだまだ、やる気まんまんなのですね。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-03-06-TUE

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