フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2006イタリア総選挙、
ベルルスコーニの最終戦略。


前から何回か、ぼくが話題にしてきた
イタリア「総選挙」の日が近付いてきました。
各陣営とも「勝利」へむけて最後の追い込み中です。

サッカーの世界なら、
イタリアリーグ優勝のスクデットなり、
UEFAチャンピオンズ・リーグや
トヨタ・カップでの優勝が、
果たしてどれほどの値うちがあるものか、
それを知るのは難しくありません。
毎シーズン開幕ごとに、
テレビとの契約がありますからね。
チームの知名度を決定付ける「勝利」の状況によって、
それぞれ相応の数字が支払われるのですから、
おおよその値うちはこれでわかります。

でも、政治的な勝利となると、
いったいどれほどの価値なのかを
数字で表すのは難しいでしょう。

今週末、9日(日)と10日(月)、イタリアでは、
政府の新しい頭を決める選挙が行われます。
現首相シルヴィオ・ベルルスコーニが再選されるのか?
それとも、破れるのか?
イタリア国民が彼の5年間の政治をどう評価するかが、
この結果でわかります。

ベルルスコーニ首相の露出作戦は?


どの国でもそうでしょうが、
国民が政治に満足していれば
現首相の続投を望むでしょうし、
そうでなければ再選をはたすことはないでしょう。

どの国でも、とは言っても、ここはイタリアです。
ここは何が起こるか誰にも判らない
「不思議な国」なのです。
とにかく何でも起こり得ます。
予想通りもあり得れば、
予想外のことも、思いもかけないことも。

イタリアには“par condicio”と呼ばれる法律があります。
ラテン語で「すべての人を平等な立場に置く」
という意味で、
ひとりの政治的立候補者が
他の候補者より新聞やテレビで
大きく露出することを禁じています。
それは貧しい層よりも富裕な層の候補者が
選挙活動で有利にならないためです。
“par condicio”法によれば、
もし、あるテレビ放送がベルルスコーニや
同盟の人物に1時間を提供するなら、
同じだけの時間を対立候補側にも
提供しなければならないということになっています。

さて、次期5年間のイタリア政府首相の候補者はふたり、
ベルルスコーニとロマーノ・プローディです。
メディア王でもあるベルルスコーニが、
新聞やテレビでの選挙活動で有利なのは
言うまでもありませんが、
この "par condicio"法の壁を、
彼はどうくぐりぬけるのでしょうか?

ここに「サッカー」という要素が、登場してきます。

選挙の事前調査では、
プローディが僅差で勝つだろうということですが、
ベルルスコーニはACミランのティフォーゾたちの愛情に、
票の的をしぼっています。
そのために彼はACミランの試合を観に行き、
政治家としてではなく
「ACミランのオーナー」としてインタビューさせ、
最も売れているガッゼッタ・デッロ・スポルト紙の紙面も、
「スポーツ人」として扱っています。

イタリアで、ヨーロッパで、世界で、
ACミランの勝利を導いたベルルスコーニです。
ともに20年を歩んだACミランの、
そのオーナー会長であることは何票の値うちがあるのか、
それは良くわかりませんが、しかし、
サッカーとは縁もゆかりもない「政治家プローディ」より、
ベルルスコーニになんらかの利点をもたらすのは確実です。

ACミランはまさに20年前の1986年に
ベルルスコーニに買われました。
その時期にACミランは世界で最も価値ある結果を保ち、
その知名度と評判が
彼の政治的なキャリアに栄養をあたえました。

ベルルスコーニがテレビで好んで発する言葉のひとつは、
こうでしたね。
「私はイタリアを、
 私のACミランのように勝ち組にする」

何人のイタリア人たちが彼を信じたかが判るのは、
4月9、10日の総選挙の後です。

訳者のひとこと
ベルルスコーニの対立候補者である
ロマーノ・プローディは、
1996年〜1998年まで
イタリアの首相でした。
1999年〜2004年までは
欧州委員会の委員長をつとめており、
彼の国内政治への復帰を待っていた
イタリア人も多くいたようです。

新聞の大見出しは
「20、見た、勝った」。
ジュリアス・シザーが言ったという
ラテン語の有名なフレーズ
Veni, Vidi, Vici (来た、見た、勝った)の
最初のVeniをイタリア語のventi(20)に
引っかけています。
小見出しは、
「ACミランとベルルスコーニ、
 ある成功物語の20年」です。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-04-04-TUE

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