フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

金持ちたちも泣く。


イタリアでは大多数の人たちが、
UEFAチャンピオンズ・リーグ第3日の
試合結果を待っていました。
ほとんどの人が、まるで「戴冠式」のような
祝福された時が訪れるのを待っていたのです。
新聞はイタリアサッカーへの賛辞や喜びの賞賛の記事を、
テレビは凱旋報道などの準備を整えていました。

ところが、結果は惨澹たるものでした。

イタリア・カンピオナートの上位3チームにしても、
1位のユヴェントスはドイツで
バイエルン・ミュンヘンに酷い負け方をし、

バイエルン vs. ユヴェントス

2位のACミランはホームであるサン・シーロ競技場で
オランダのPSVと引き分け、

ACミラン vs. PSV

3位のインテルはポルトガルで
ポルトに負かされたのです。

ポルト vs. インテル

そしてイタリア国内でさえ
「戴冠式」を期待できるプリンスとも言い難い
ウディネーゼが唯一、自身の平均的なプレイをしました。
それでも、ブレーメン相手に、やっと「引き分け」です。

UEFAチャンピオンズ・リーグ予選の結果から
出されていた勝利への道の見通しは、
ユーヴェとインテルにとっては「容易」、
ACミランにとっては「少し複雑」、
ウディネーゼに至っては「厳しい」です。
にもかかわらず、今回の手厳しい打撃を生んだのは、
イタリアサッカー全体の「偉大さを誇る感覚」、
つまり「奢り」でしょう。

ユーヴェは、ここまで連続して9試合に勝利しています。
(カンピオナートで7回、
 UEFAチャンピオンズ・リーグで2回)
ユーヴェは敵無しで、ヨーロッパチャンピオンの
タイトル争奪戦でも強力な優勝候補であると、
断言した人さえいます。

あんなに大金を投じたのに。


これら「イタリア三大サッカーチーム」は、
他のヨーロッパチームと比べても、
先のメルカートで充実した買い物をしています。
それは、まさにヨーロッパ内での
自分達の立ち姿を整えるためでした。
ユーヴェは多額を支払って、
アーセナルからフランス人のヴィエイラを買い入れ、
ACミランはジラルディーノのために
約2800万ユーロ使い、
インテルも、サムエル、ピザッロ、ソラーリ、
フィーゴのために巨額を使いました。

準備は万端のはずでしたが、
なんとヴィエイラは、
pubalgiaプバルジーアという、
特にサッカーやホッケーなどの
スポーツ選手がかかりやすい
恥骨の故障のために欠場です。
しかも、この故障は長引く恐れがあります。
いっぽうのジラルディーノは観客席に直送された格好で、
彼のポストはヴィエリがプレイし、
シェフチェンコが負傷した時には、
しばらくぶりにインザーギの姿が見られました。

ユヴェントスでは
「デル・ピエロ論争」が。


そしてユヴェントスでは
「デル・ピエロ論争」がぼっ発しました。
彼はUEFAチャンピオンズ・リーグの、
この対バイエルン戦で、
試合の最後の時間帯まで出してもらえなかったのです。
この時には、すでに、試合は
ドイツ優位と決定していました。

アレッサンドロ・デル・ピエロは、
たぶんユヴェントスで最も体調の整ったアタッカーです。
先週土曜日のカンピオナートでは
大変に美しいゴールを決め、
それがメッシーナを負かす決定打となりました。

それでもカペッロ監督は対バイエルン戦で
彼をチームの外に置き、
キャプテンのデル・ピエロを欠いたユーヴェは、
海のまっただ中で方向を失った難破船さながらでした。

カペッロ監督

ACミランもインテルも問題が勃発!


論争はACミランでも起きました。
この「ホームでの引き分け」に激怒した
ベルルスコーニ会長が、
またもやアンチェロッティ監督をやり玉にあげたのです。
今回のベルルスコーニの言い方は
「アンチェロッティは最低の仕立て屋だ。
 せっかく最高の生地を持っているのに
 良い服を作れない」でした。
自分では、きっと、おしゃれな言い方ができたと
思っていることでしょう。

イタリア政府首相でもあるベルルスコーニは、
彼が監督すれば確実に勝利するはずの
偉大なチャンピオンたちに大金を使ったと、
いつも強調します。

大金をはたいて最高の生地を与えているのに
良い服を作れないアンチェロッティが、
このイタリア首相はお気に召しません。
ただ、春に大事な選挙があることから、
だれかを失職させるという
良くないイメージを作らないために、
アンチェロッティを首にするのは我慢しているのです。

インテルも問題を抱えている点では同じで、
混乱の原因はアドリアーノです。
彼は9月15日にブラジルからイタリアに
戻ってこなければいけなかったのですが、
2日間にわたって飛行機をのがし、
予定よりもずっと遅れて帰って来ました。

アドリアーノ不在でも、
カンピオナートの対リヴォルノ戦には、
インテルが5対0で勝ちました。
ところがポルトガルでは「アドリアーノ論争」が
再浮上し、こちらも難破です。
アドリアーノは後半戦で出場したのですが、
なんだか意欲に欠けるプレイでした。
もうインテルは彼にとって全然重要ではないと、
まるで彼がそう思っているように見えたのがいけません。

監督不行き届きであるマンチーニが悪いという
意見が多い中で、監督解雇にまで論争が及んでいます。
近いうちに、もしかすると次の試合で
監督が解雇される可能性も、全く無いとは言えません。

マンチーニ監督

ユーヴェ、ACミラン、そしてインテル、
イタリアのこの3大裕福チームが、
UEFAチャンピオンズ・リーグでは
危なっかしいスタートを切りました。
数年前の有名なテレビドラマのタイトル
「Anche i ricchi piangono(金持ちたちも泣く)」
のように‥‥

お金持ちでも泣きたくなるのであれば、
貧乏人は‥‥?

(文中のイタリア人名や固有名詞のカタカナ表記は、
 原語の発音に近いものを使用しています)

訳者のひとこと
貧乏人は逆に、笑うのですね〜、
これは私の個人的実感ですが。

「Anche i ricchi piangono」は、
私は知らなかったので調べてみましたが、
どうもテレビドラマだったらしく、
このタイトルにもなっている
「金持ちたちも泣く」というフレーズが
流行したようです。ネット検索でも、
このフレーズを引用した文章が
いっぱい出て来ました。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-10-25-TUE

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