フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ふたりのベテラン。


アズーリに新しいスターたちが台頭してきたことを、
少し前に報告しましたね。
ところがここへ来てベテラン選手ふたりが、
まるで時間を止めてしまうほどの
ふんばりを見せました。
なつかしい勇姿から沸き立つノスタルジーが、
監督たちの心にも沁みたようです。
アズーリの現監督マルチェッロ・リッピが、
ユベントスを監督していたころに大きな愛情を注いだ
アレッサンドロ・デル・ピエロと
クリスチャン・ヴィエリが、
それぞれにカンピオナートで健在をアピールしました。
アズーリの新しい力を絶賛していたリッピ監督だって、
彼らふたりの事を忘れていたのではなさそうです。

ふたりは1998年のフランスでのW杯や、
2002年の日韓共催の時も主役でした。
デル・ピエロはユベントスで一番有名な選手ですが、
カペッロ監督は彼を予備選手とみなしており、
カンピオナートの今期最初の2試合には
彼をプレイさせませんでした。
そしてやっと彼を出場させた時に、
デル・ピエロは好プレイを見せ、ゴールを決めました。
偉大な選手だけが知っている「出すべき答え」で、
カペッロ監督に答えたのです。

この答えは、デル・ピエロを長年にわたって監督した
マルチェッロ・リッピにも届いたようです。
現在アズーリの監督である彼は、
デル・ピエロを再び召集しようとしています。
「優秀さに年令はないから」だそうです。

いっぽうヴィエリは、
この夏にインテルからACミランに譲渡されました
そして彼がACミランの赤黒シャツを着て
初めてピッチに登場した時、
ACミランは勝利しました。
会場のサン・シーロ競技場には、
満足の雄叫びがごう音となって轟きわたりました。
すでにユベントスがカンピオナートの首位にいますが、
このACミランならどんな挽回も可能だろうとの
期待も爆発しました。


キャラクターの違うふたりだけれど‥‥


こうしてティフォーゾたちをわかせた
ふたりのチャンピオンですが、
ティフォーゾたちからの愛され方は
まったく異なります。

デル・ピエロは、イタリアのマンマたちのだれもが
「ああいう息子が欲しい」というタイプの代表です。
言い争いをしたことがなく、
スキャンダラスな週刊誌とは無縁の清潔な人柄で、
ユベントスのティフォーゾではなくても、
みんな彼に好感をもっています。
デル・ピエロはディスコに通ったことがありませんし、
テレビの女優やダンサーの恋人を持ったこともありません。

デル・ピエロが結婚した時には、
招待されたのは30人ほどで、
みんな親しい友人たちばかりでした。
パパラッチは影すらありません。
「シンプル」という看板をつけたくなるような
結婚式でした。
結婚の前にデル・ピエロのフィアンセが
週刊誌の表紙に登場したなんてこともなく、
彼の友人のサッカー選手たち以外は、
だれも彼女のことを知りませんでした。
そんなふうに彼は私生活を公表ません。
いつもサッカーのチャンピオンの顔を
人びとに見せているだけです。

クリスチャン・ヴィエリは、
これとは全く異なるキャラクターです。
写真に撮られることが好きで、
多くのラブ・ストーリーを経験し、
いろいろな美女たちと一緒に写真を撮られ、
そして何度も婚約しました。
優勝カップを獲得し、
プライベートにコレクションするかのように、
恋を成就させていく「禁じられた恋人」ヴィエリ。
彼にあこがれるのは、若い層です。
ディスコにも、モデルや女優のもとにも通う
ヴィエリのキャラクターは、
しばしばサッカー選手としての彼のイメージを
薄めてしまうほどです。

それはそれとして、
彼の活躍を目の当たりにしたACミランでは、
彼が1998年や2002年のW杯のころの彼に戻ると、
今や誰もが信じています。

アズーリのマルチェッロ・リッピ監督も、
そう信じ始めているようです。
「ヴィエリはイタリアサッカーの財産であり、
 デル・ピエロと一緒に2006年のW杯でも
 アズーリに栄光をもたらす可能性がある」と
言ってますから。

ドイツ大会まで、あと9ヵ月です。
望みをいだき、夢を見る9ヵ月‥‥

サッカーとは、
とりわけ夢と希望で作られているものだと、
ぼくは思っているのですが、
これはデル・ピエロやヴィエリほどの
チャンピオンたちにとっても同じでしょう。

訳者のひとこと
くどいようですが、
イタリア人たちは「正直」なのです。
状況が変われば気持ちも言う事も、
とうぜん変わります。
大切なのは、現状を踏まえて
実際にどう言動するか、なのです。
したがって、いちいち大騒ぎになります。
一緒に騒ぐと楽しいことは天下一品ですが、
けっこう疲れます、はい。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-09-27-TUE

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